【ショートショート】呪いの神サマは完璧主義【執念第一】
呪いの神サマは完璧主義
A子の一日は夜から始まる。
近くの神社へ出向き丑の刻参りをした後は、誰にもバレないよう家に戻る。新聞が来たら大好きな洋菓子のチラシを投げ捨てお悔やみ欄の確認。仮眠を取り、始業に間に合うよう準備をし家を出る。
仕事中もお局のコーヒーに雑巾の絞り汁を混ぜる。昼休みはセクハラ上司の靴の裏に画鋲を刺す。
夕方は残業せずに帰り、早めに晩飯を食べて夜の八時には寝る。そして再び深夜に目を覚まし、夜の神社へと向かうのだ。
己の幸せを犠牲にしてでも人の不幸を願いたい。呪いたいものが多すぎる。不健康なのは百も承知、しかし自分がこうなったのは他人のせいだ。
ふと、A子は床のチラシに目をやった。朝に投げ捨てた洋菓子のチラシだ。
――たまには、自分の幸せを考えてもよいのでは?
A子の心に、僅かなぬくもりが戻った瞬間であった。
数日後。
新聞の地方欄に、交通事故の記事が掲載された。
ケーキ屋の傍の交差点で、OLが撥ねられた死亡事故だった。
毎週ショートショートnote
お題「執念第一」
文字数401字
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)