【ショートショート】正しい祈りの捧げ方【祈願上手】
正しい祈りの捧げ方
隣の村の連中が農具を持ってこっちに攻めてきた。慌てた村の衆たちは、祈願上手の男のところに飛び込んでこう言った。
「いつものように祈ってくれ。我々の村が勝つように」
祈願上手の男はそれはできないと答えた。なぜなら彼にできるのは祈願だけ。願いを叶える力はない。
拒否されるとは思っていなかった村人たちは、祈願上手の男が「できます」と言うまで彼をぶった。顔を赤と紫に腫らした男を憐れに思った村娘が手当てを買って出るも、男たちがそれを許さなかった。
男は神社に向かった。ようやっとたどり着いて、境内に足を踏み入れると同時に倒れてしまった。
目が覚めると、もう争いは終わっていた。雨が降っていてよく見えないが、どちらの村も滅んだようだ。
「祈願上手でも叶わない願いはあるのか」
男がそういうと、社の方から声がした。
「いいや、叶えたぞ」
その声は愉快そうに笑っていた。
「ここに駆け込むなり、水がほしいと言ったのはお前じゃないか」
毎週ショートショートnote
お題「祈願上手」
文字数407字
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)