【ショートショート】はだかのへんたい【十年パンイチ】
はだかのへんたい
男には露出癖があった。
深夜、誰も居ない公園で自由(婉曲表現)な姿を晒すのが何よりの楽しみであった。しかし、男は同時にこの趣味をやめたいと思っていた。自分を慕ってくれる会社の後輩を裏切りたくないという思いが年々強まってきたのだ。しかし男はこの自由(婉曲表現)を手放したくなかった。
どうしたものかと考えていたそのとき、男はひらめいた。
「……それで、『はだかのおうさま』のように、自分以外の者には見えない服を着ていると思い込むようにしたんですか」
その問いに、男は頷いた。
「でも、二つ欠点があってね」
「欠点ですか。それはどんな?」
「ひとつは、この思い込みは下着には適用できないということだ。私はその思い込みで十年間過ごしてきたがパンツは穿いたままだった」
眉根を寄せた男が手元の紙にメモを取りながら、問いかけた。
「ふたつめは?」
「……思い込みには限界があった」
「でしょうね」
そして、彼は引き続き露出狂の調書を取るのであった。
毎週ショートショートnote
裏お題「十年パンイチ」
文字数407字
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)