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【ショートショート】過去の清算【蒸し返しダンサーに】


   過去の清算

 そのダンサーの踊りは人々をひきつけ、感情を高ぶらせる。だが行きつく先は思い出す必要のない事案。いつしか彼は「蒸し返しダンサー」と呼ばれるようになっていた。仲良く見に来たカップルも「そういえば先月の浮気……」なんて話題で喧嘩をするし、友達三人組も「お前のいたずらのせいで恥をかかされたときの……」などという。
 ダンサーは悲しかった。自分の踊りが人間関係をよくない方向に導いている。引退も視野に入れつつ会場のベンチで休んでいると、一人の女が小走りで近づいてきた。
「蒸し返しダンサーさんですよね」
「ええ。そうですが」
「今日の踊り見ました。とてもすごかったです」
「ありがとう」
「おかげで、友人に貸した三万円が戻ってきました」
 女は晴れ晴れとした顔でそう告げて、頭をぺこりと下げた。
「ありがとうございました」
 蒸し返しダンサーは唖然とした。その間に女は去っていった。彼女の姿が消えるまで、ダンサーはその背中を見つめていた。



 毎週ショートショートnote
 お題「蒸し返しダンサーに」
 文字数407字

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ぽんかん(仮)
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)