【ショートショート】欲望に正直【肝試し美人化】
欲望に正直
Nは友人のMとお化け屋敷にやってきた。内容はよくある「夜中の墓地を突っ切って寺へ向かい、幽霊から逃げる」というものである。NとMはぴったりくっついて、墓地の中を歩いていった。
しかし、何かがおかしい。一反木綿は妙な曲線――まるで女性の肉体を思わせるシルエットを描いている。女性の霊は胸元がはだけており、たわわに実った果実がうらめしやしそうな勢い。化粧もなまめかしく、安いコスプレのようであった。井戸の幽霊は皿ではなく下着を数えており、「一枚足りない」と言いながら着物の裾をたくし上げる始末。
「な、なんだこれは!」
出口から転がり出てきた二人は同時にスタッフに詰め寄った。スタッフは慣れた様子で二人をなだめると、
「最近、お化け屋敷に『怖い』というクレームが多すぎてこういった方針にしました」
という説明を投げた。
「だからといって……」
「でも、お二人ともドキドキしましたでしょう? その証拠に、ほら、立派な卒塔婆がそそり立って……」
毎週ショートショートnote
裏お題「肝試し美人化」
文字数410字
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気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)