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【ショートショート】だっておいしいんだもん【ほんの一部スイカ】

   だっておいしいんだもん

「スイカが食べたい」
 カブトムシのカブ太郎がわがままを言う。N男は彼に餌としてスイカを与えていたことがあるが、
「スイカは水分が多すぎるから、カブトムシにあげるのはよくないよ」
 と兄に言われ、N男はカブ太郎にスイカを与えなくなった。だが、カブ太郎は一度食べたスイカの味を忘れられないらしい。ことあるごとにスイカが食べたいとN男にねだる。
「昔の日本人は、毒に当たってもいいという覚悟のもとでフグを食べてたんだ。それと同じ。俺は例え下痢になってもスイカが食べたい」
 そんな屁理屈までこねくり回してくる。
「ああスイカが食べたい。ほんの一部スイカでもいい」
「スイカならなんでもいいんだね?」
 カブ太郎は飛び上がった。
「ああ、なんでもいい!」
 N男は早速、ママからスイカをもらった。ママは「本当にそれでいいの?」と言ってきたが、N男は「うん」と言った。
「ほら、ほんの一部スイカだぞ」
 N男はカブ太郎の前に、スイカの種を一粒置いた。

 毎週ショートショートnote
 お題「ほんの一部スイカ」
 文字数409字



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