大好きな40文を紹介します。
・福岡伸一さん『動的平衡』
「絶え間ない分解と再構成のダイナミズムの中にあり、(略)この分子は流れながらも全体として秩序を維持するため、相互に関係性を保っている。個体は、ミクロのレベルでは、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい『淀み』でしかない」
・岡倉天心(覚三)『茶の本』
「『道』は『径路』というよりもむしろ通路にある。宇宙変遷の精神、すなわち新しい形を生み出そうとして絶えずめぐり来る永遠の成長である。『道』は道教徒の愛する象徴竜のごとくにすでに反り、雲のごとく巻ききたっては解け去る。『道』は大推移とも言うことができよう。主観的に言えば宇宙の気であって、その絶対は相対的なものである。」
・チャールズ・ラム(『茶の本』より)
「ひそかに善を行なって偶然にこれが現われることが何よりの愉悦である。」
・出典不明
「変わらないふたりとか変わり続けるふたりとか.どっちかじゃなくて両方がよいの.」
・保坂和志さん(『猫なんて!』より)
「飼い主が楽しそうにしていたり、寛いだりしていれば、猫にも少しはそれが伝染する、というか、そういう気配を猫は呼吸している。」
・横尾忠則さん(『猫なんて!』より)
「この何の役にも立っていない猫が実は結構人間のためになってくれているところがある。というのはこんな猫でもいるのといないのとではえらい違う。」
・村上春樹さん『ノルウェイの森』
「永沢さんはいくつかの相反する特質をきわめて極端なかたちであわせ持った男だった。彼は時として僕でさえ感動してしまいそうなくらい優しく、それと同時におそろしく底意地がわるかった。びっくりするほど高貴な精神を持ちあわせていると同時に、どうしようもない俗物だった。」
・樹木希林さん
「全てが好きです
何もかもが好きです
生まれ変わったら出会わないようにしないと
出会ってしまったらまた好きになって大変な人生を送ることになると思うから」
・まど・みちおさん『言わずにおれない』
「この詩はこういうふうに読んでほしいっちゅうことは、それをつくった私にも言えないんですよ。ただ、その詩がどういうふうに読まれたがっているかということはあります。
たとえば、「ぞうさん」でしたら、〈ぞうさん/ぞうさん/おはなが ながいのね〉と言われた子ゾウは、からかいや悪口と受け取るのが当然ではないかと思うんです。この世の中にあんな鼻の長い生きものはほかにいませんから。
顔の四角い人ばかりの中に一人だけ顔の丸い人がおったら、本来はなんでもない「丸い」っちゅう言葉が違う意味をもってしまう。われわれ情けない人間だったら、きっと「おまえはヘンだ」と言われたように感じるでしょう。
ところが、子ゾウはほめられたつもりで、うれしくてたまらないというふうに〈そうよ/かあさんも ながいのよ〉と答える。それは、自分が長い鼻を持ったゾウであることを、かねがね誇りに思っていたからなんです。小さい子にとって、お母さんは世界じゅう、いや地球上で一番。大好きなお母さんに似ている自分も素晴らしいんだと、ごく自然に感じている。つまり、あの詩は、「ゾウに生まれてうれしいゾウの歌」と思われたがっとるんですよ。」
・高嶺格さん『在日の恋人』
「在日一世の持っている、具体的な「日本」への不信と嫌悪、祖国への強い想い、それはもはや、日本で生まれ育った在日二世がリアルに感じるものではありえず、むしろそれを、「情熱の欠如」というコンプレックスとして抱えている。「在日」として不完全である自分、純粋にアンチの存在ではありえない自分、そのコンプレックスを丸ごと抱えることこそが、二世であるKのリアリティであり出発点であることを、僕は知った。」
・長嶋祐成さん(「Twitter」より)
「人に本当に優しい人間が一番怖い。裏がありそう、とかいうのではなく、本当に優しいということはつまり相手の状況を的確に慮る洞察力と賢さがあり、その上で思いやりをもって振る舞える度量がある。そんな人と接するのは自分が試されるようで怖い。そしてその怖さが好きだ」
・島田潤一郎さん『本を贈る』
「正直に告白すると、編集作業の最後のほうは、こちらもなにがなんだか、わからなくなっている。校了日に向かって、作品といっしょに坂を転がり落ちていっている。」
・同『あしたから出版社』
「ぼくが声を発したら、歩いたら、お茶を飲んだら、小便をしたら、ケンが死んでしまう、そんな気持ちがした。」
「本をひらき、視線を落とし、ページを一枚、一枚、めくっていく。すると、なんというか、こころがゆっくりと暗くなっていく。」
・三島由紀夫『葉隠入門』
「わたしは、芸術というものは芸術だけの中にぬくぬくとしていては衰えて死んでしまう、と考えるものであり、この点でわたしは、世間のいうような芸術至上主義者ではない。芸術はつねに芸術外のものにおびやかされ鼓舞されていなければ、たちまち枯渇してしまうのだ。」
「わたしは、世間のいうような芸術至上主義者ではない。芸術はつねに芸術外のものにおびやかされ鼓舞されていなければ、たちまち枯渇してしまうのだ。」
・同『ラディゲの死』(「旅の墓碑銘」)
「僕の思念、僕の思想、そんなものはありえないんだ。言葉によって表現されたものは、もうすでに、厳密には僕のものじゃない。僕はその瞬間に、他人とその思想を共有しているんだからね」
「では、表現以前の君だけが君のものだというわけだね」
「それが堕落した世間で言う例の個性というやつだ。ここまで言えばわかるだろう。つまり個性というものは決して存在しないんだ」
・金城一紀さん『GO』
「俺が国籍を変えないのは、これ以上、国なんてものに新しく組み込まれたり、取り込まれたり、締めつけられたりされるのが嫌だからだ。もうこれ以上、大きなものに帰属してる、なんて感覚を抱えながら生きていくのは、まっぴらごめんなんだよ。たとえ、それが県人会みたいなもんでもな」
「でもな、もしキム・ベイシンガーが俺に向かって、ねえお願い、国籍を変えて、なんて頼んだら、俺はいますぐにでも変更の申請に行くよ。俺にとって、国籍なんてそんなもんなんだ。矛盾してると思うか?」
・山田詠美さん『ぼくは勉強ができない』
「鍛え抜かれた美しさというものを持ち合わせていなくてはならない。色々な人間関係に磨きをかけられた為に本当の良いものを学んでいったものの持つ美しさである。高価なハイヒールを履ける足を持ちながら、あえて裸足でいることの出来るそんな能力を持った女だけが男の親友になりえるのである」
・ジョン・カサヴェテス(映画監督)
「この国では人は21歳で死ぬ。21歳で感情が死んでしまうんだ。今はもっと若いかもしれない。幸いにも僕らは20歳で死なずにすんで、そのまま生き続けている。僕のアーティストとしての使命は、人々が21歳を乗り越えるのを手助けすることだよ」
「おかしなことに、僕は結婚の制度にはずっと反対だったんだ。ずいぶん長い間ジーナと結婚し続けてるけどね……。でも納得できない結婚も多い。偽りがあったり、精神や個人の尊重が欠けてるように思えるからね」
「 私は煙草を習慣で吸ってるんだ。習慣はその人の人生そのものだと思う。私にとっては命よりも大切なものだ。でも別に自己破壊衝動で吸ってるわけじゃない。煙草を吸って自殺しようとしてるわけじゃないんだ。口に煙草をくわえてた方が調子がいいんでね」
・椿枝里子(小説家)
「書くと言う手段に対する、『単に他の事より書くほうが得意だから』というシンプルな理由を超える、文章でなくては出来ないという必然性(あるいは言葉そのものへの必然性)と、書く内容に対する書き手の内的必然性が感じられないものは好きじゃない。映画も同じ。」
・稲垣足穂(『学生諸君!』より)
「芸術家は先ず普通人とことなっていなければならぬ、とトーマス・マンが云っている。そうして芸術とは何かと云えば、この何処か常人と異なっている者が、常人に成ろうとして絶えざる戦いを続ける所に生まれるものだと。」
・川端康成(『学生諸君!』より)
「文學志望者は文學者らしくなるよりも、先づ誠實に強烈に生活すべきである。」
・寺山修司(『学生諸君!』より)
「海岸で生まれ、海と共に育った私が、現実の海にはさほど興味を持たずに「海」という言葉、海を主題としたさまざまの観念、詩、音楽にのみ心を奪われたのは、世界には「もう一つの海」があることを予感していたからにほかならないだろう。」
・出典不明
「始めから「ただただ好き」なんて許さない。向かい合った机の上に、いくつもいくつも理由を並べ、うなずく私に何度も何度も説明し、同意を求め、だけど偶然、机の下で足が触れて、その瞬間、机の上のものを全てどけて手を伸ばし、同意も求めず「ただただ好き」と。そうでなければ許さない。」
「慰めたり、励ましたり、本当に苦手。背中を押すには覚悟がいる、押し出した瞬間に、手から離れた瞬間に、あなたがよろけたとしても、私は必ず、あなたの腕を掴む、という覚悟が。」
「「君のためなら死んでもいい」それは女の子を甘えさせてくれる言葉だ。だけどガール、そんな言葉は信じるな「貴女を残して絶対に死ねない」と言ってくれる男を、貴女を感じて生きてくれる男を、その言葉を信じて、その言葉に決して甘えず、彼が愛してくれる貴女を、しっかり生きなさい。」
「貴方という要素を多く含んだ自分自身を愛するなんて、とても不健康だわ。だけど、貴方もきっと同じ、私という要素を多く含んだ貴方自身を愛している、何も見えていない、自分以外は何も、そして同じであるという理由でまた愛していると思うのよ。」
「名前を呼ぶ以外の方法で、離れたところにいる私に気づかせて欲しい。」
「混乱の中で呼んだ名前だけを信じる。」
「基本的に恋愛は互いの精神を舞台に繰り広げられる陣取り合戦、戦争だと思っている。当然、油断しようものなら死ぬ。」
「好きだとあまり相手のことを知りたいと思わない。もちろん話してくれるならきちんと聞くけど。「貴方はここに存在している」という奇跡的な肯定を決めるので、知る必要すらなくなる。」
「一人でも立ち向かっていく、その強さに美は宿る、その強さだけが「美しい」という称賛に値する、真理だ。」
「私はね、付け焼刃だろうが、何だろうが、たとえ負けるとわかっていても、刀を抜いて向かっていく人間でありたいと思うんだよ。」
「常に選択を迫られているのである。このまま永遠に、脚を鎖に繋がれ、不自由を嘆き生きるのか、今ここで、脚を切り落とし、不自由を得て自由を生きるのか、私は信じている、脚を切り落としたその先で、大きな絶望の中で、背中を切り裂き、翼が生まれることを。」
「私の王子様は、私が「王子様を待っているの」と言ったら「じゃあ、王子様が迎えに来るまで、僕が貴女を守ります」と、そう言ってくれる人なの。」