No.3 Small Tips About Tipping【教えて!ゆずぽん】
Hello Japan from Australia!
夏季と雨季が3ヶ月重なるらしいケアンズからお送りしています。「おしえて!ゆずぽん」のコーナーです。
今日は、先日質問を受けた「ケアンズでのチップ事情」について、体験談を基にご紹介します。「オーストラリアで、韓国人のオーナーが経営する日本食レストランで店長代理をしている日本人」という国籍情報過多なバイトをしています笑。
日本では馴染みはありませんが、欧米諸国では当たり前なこのチップ文化。チップといえばアメリカのウェイトレス、というイメージですが、オーストラリアではどうなのかをお話しします。
オーストラリア全体に関しては、英語での記事を参考に解説してみます。英文記事も、いくつか引用したので、読解の練習にもどうぞ。
【The Meaning of "Tip":チップの意味】
チップ事情、と言いつつ、まずはこの単語自体をちょっぴりみてみましょう。
【tip(ティップ)】
欧米諸外国のチップ(心付け)文化
ヒント
先端
チップを渡す
傾ける
【chip(チップ)】
小片(ex:ICチップ)
チップとデールのチップ
ポテトチップ、フライドポテト
カジノで賭けるチップ
削る
うーん…なんとも似たイメージですね…強いてイメージを区別するなら、tipは、「人差し指の先端(全体を含んだ上での一部)」で、chipは「細かいカケラ本体(全体のイメージはない)」という感じでしょうか。
ただ、語源を遡るとこの2つは同根ではないようで、時代の流れの中で似ていったようです。
Tipの語源について、「迅速さをお約束するために To Insure Promptness」の略だったとする説もありますが、あくまでも俗説に過ぎないようです。
世間の意見と学者の意見が異なるのはよくあることですね。イチゴなんかが好例ではないでしょうか。日常の食生活の中ではフルーツとして食べられている、野菜に分類される植物ですから。
【Do Customers Tip?:チップって渡してる?】
さて、皆さんもチップを正しく発音できるようになったところで、私の体験談に移りましょう。私がウェイトレスときどき店長代理として雇ってもらっている、日本食レストランKushiでのチップ事情です。
このお店で、お客さんはチップを払うか。答えは……
It depends on people.
It didn't answer the question at all😫
質問の答えになってない!
というツッコミがあちこちから聞こえてきそうです…私の体感では、4割くらいのお客さんが何らかの形でチップを払ってくれます。私もずっとレジにいるわけではないのであくまでも感覚ですが、メルボルンやシドニーといった都市部からバカンスに来ている方や、団体の方々、特別なオーダーをした方が多少多く払ってくれているような気はします。
とはいえチップをくれる人の割合は、感覚的には半分には行かないくらいです。
「いただけたら嬉しいけど、チップなしだからといってケチとは全く思わない」
働いている側の気持ちとしては、このくらいの感覚でしょうか。本当にサービスがいいと思ったらつけたらいい、と、本来の「心付け」としての概念そのままです。
【How Do Customers Tip?:どうやってチップを渡すの?】
ここからは、お客さんたちがどんな風にチップをくれるのかをお話ししていきます。
case1 : Tip Into Tip Jar
まずは古典的な方法から。基本的にどんな飲食店に行っても、レジの横には画像のようなtip jarが置いてあります。そのため、お会計の時にこのtip jarにコインを入れてくれる方がちらほらいます。ときどき5ドル札や10ドル札を入れてくれるお客さんもいます。
(オーストラリアのコインは小さい順に10セント・20セント・50セント・1ドル・2ドルと5種類あって、セント硬貨はシルバー・ドル硬貨はゴールドです。)
現金で払った後に、受け取ったお釣りを入れてくれる方がほとんどですが、中にはカードで払った後に、コインケースの中身を全部あけてくれる人もいたりします。
ちょっと面白かったのは、「ごめんね〜今20ドル札しかないから10ドルここ(tip jar)からもらっていい!?」と、チップのお釣りが欲しいと言ったマダムでしょうか。
case2 : Round Off
お次はカードでよくあるパターン。個人的には簡単だし「適切なチップの金額」に頭を悩ませなくて済むので、おすすめです。
必殺 端数切り上げ:Round off
このフレーズ、本来は「四捨五入」なのですが、お会計では「四捨」するわけにはいきません。そこで、端数を切り上げてざっくりで足りる金額を出し、お釣りを受け取らないパターンです。
A:Your total is 77 dollars.
B:Can you round off 80?
A:Thank you so much.
カードでの支払いでは時折ある会話です。端数切り上げした金額に、さらに色をつけた額を言ってくれるお客さんもたまにいます。そう言われた場合は、言われた金額で請求額を打ち込みます。
決済端末には、チップ額を打ち込むところがあるのですが、このレストランでは従業員が金額を入力するので、使ったことはありません。私がお客さんだったら、自分でチップ額を入力する画面で端末を渡されたら、どのくらい入れればいいの!?と冷や汗をかいてしまいそうです。私のような小心者には良心的な会計方法ですね。
現金での場合は、round offされた後の金額を渡され、"Keep the change.:お釣りはいりません"と言われる場合が多いです。このフレーズに関しては近々学び直し英会話フレーズ100で解説予定なので、お楽しみに!
case3 : Tip the waitress directly
最後のケースは、正直滅多に起こりません。アメリカ式の、サービスを提供してくれたウェイトレスに直接現金を手渡すパターンです。こう書くと生々しいですね……。
私もこのレストランで働き始めて4ヶ月ほど経ちました。ほぼ毎日勤務していますが、手渡しで直接チップを頂いたのは2回です。なぜか同じ日でした。同僚と話しても直接チップをもらったことはほとんどないらしいので、やはりこのお店では珍しいことのようです。
家族で来ていたマダムが、「あなたのサービスがとても素晴らしかったのと、お話しが楽しかったから」と、帰りがけに私の手を取って20ドル札を握らせてくれました。また別の方は、エプロンのポケットに10ドル札を入れてくれました。どちらも、"Keep it secret to your manager😉"と言って。
当時はバイト始めたて、でもお店はスクールホリデー中で大繁盛と、緊張する間もないほど忙しい時期でした。まだ注文を取る端末にもお店のメニューにも慣れていなかったので、オーダーを取りに行ったら最初に"Sorry for your inconvenience as I'm a trainee."とか、そんな感じのことを言ってた時期の出来事です。今思えばビギナーズラックだと思います。
それでも、人生で初めて、自分のサービスでお客さんが喜んでくれて、料理の代金に含まれないお金を、私に払おうと思ってくれた。
金額も小さくはなかったので驚きましたが、何よりもそんな風に思ってもらえるサービスを提供できたことが嬉しかったし、「本当にあるんだ…!!」とチップ文化を初体験した出来事です。
これは余談ですが、「上司には内緒でとっときなさいね😉」と言われたにも関わらず、小心者の私はもらってすぐ店長に相談しました笑。tip jarに回収されちゃうのはちょっとヤだけど、黙ったままなのも良心が咎めたので…(そのくらい店長が良い人なのです)
原文ままではありませんが、店長はこんなようなことを言ってくれました。もはや模範解答のような返事に、またも感銘を受け、オーストラリアに来てよかった〜!と噛み締めた出来事です。
そんな素敵な店長のいるお店の場所は、ケアンズの中心地からさらに車で40分ほど北上したところにあるリゾート地。オーストラリア内外からの観光客に限らず、地元の常連さんもいるなかなかの人気店です。
https://www.instagram.com/kushicairns/
【Where Do Their Tips Go?】
さて、ご紹介したように、このお店でのチップは大半が個人に対してではなく、お店に対して支払われます。では、そのチップは、どうなるのか?この章では、チップの使い道をご紹介します。
このお店が得たチップの使い道は、大きく3つです。
備品の修理・新調
スタッフの懇親会費用
チップシェア
主には、グラスやダスターと言った消耗品の補充に使われます。
それから、長く勤めた従業員が離職する際の送別会や、キッチンスタッフ、フロアスタッフごとのパーティーなんかも、お店のお金から出るので、会費ゼロで美味しいご飯が食べられます笑!
チップシェアに関しては、売上によってあったりなかったりします。友人が勤めるレストランでは、お給料とは別に毎週100ドル程度のチップシェアがあるそうです。
そのままオーナーのポケットマネーになるなんてことはありません!
【How About Tipping in General?】
最後に、オーストラリア全体でのチップ事情も調べてみたので解説します。参考にしたのは、今年の10月に書かれた記事です。タイトルにあるDown Underとは、実はオーストラリアのことを指しています。ヨーロッパからオーストラリアには、「下」に向かうという世界地理での位置関係からの愛称だそうです。
自分で読んでみたい方は先にこちらの記事をどうぞ。
↓参照記事:チップを渡すべきか否か?オーストラリアでのチップ事情で失敗しないコツ
この記事の結論から言ってしまうと、オーストラリアでは、
It's up to you😉
君次第だよ。
とのことでした。
It didn't answer the question after all😫
結局答えになってない!
ツッコミ(再)というわけにもいかないので、記事を所々引用しつつ詳しく解説していきます。
導入からアメリカとの対比から始まっています。食事が終わった時に生まれる疑問。
アメリカ⇨チップを「いくら払うか」
オーストラリア⇨そもそもチップを「払ったほうがいいのか」
この時点で基盤の違いが浮き彫りになっていますね。
それでは、どうしてこの違いが生まれるのでしょうか。答えはシンプルです。
オーストラリアでチップが任意になっている理由として、国の定める最低賃金の違いをあげていますね。
最初の引用でも”hospitality staff are paid a decent wage in this country”と出てきたように、オーストラリアの最低時給は、世界でもトップクラス。聞いた話では、今後も生活費の高騰が予想されるので、オーストラリア政府は最低賃金を引き上げていく方針をとっているのだとか。
このおかげで、オーストラリアのウェイターたちはチップをあてにしなくても十分生活していけるだけの収入を得ることができるんですね。
それにしても、アメリカとオーストラリアの最低時給の差がえげつないですね…。
一旦の結論が出ています。私の体感と同じでホッとしました。
「チップは必要不可欠ではなく、確実に感謝されるもの」だそうです。予算が許すなら、料金の料金の10%を上限にチップをつけると良いとのこと。つけなくても恥ずかしいなんて思わなくていいので、
How much should I tip?
-Between 0-10% of the bill.
これが一般的な回答のようです。
この後、経済学的な視点からチップの必要性に関しても触れられていますが、驚くことに学問によるチップの最適解は出ていないんだとか。
記事冒頭で触れていた"tip discussion"に関しても、オーストラリアでのチップは個人の選択に任されているし、その額によって従業員が路頭に迷うようなことはないから好きにすればいいようです。
オーストラリアの労働組合にあたるUnited Workers Unionの常務取締役(Executive Director)による発言です。
ホスピタリティ業界の従業員がチップに頼る必要が増すほどに、彼らは顧客からのハラスメントや雇用主からの賃金搾取の対象になりやすくなってしまう。だから、チップによらない収入が補償されるべきだ。
こんなことが述べられていますね。以前フレーズ解説で取り上げたdeserveも使われています。
労働組合のトップとエチケットの専門家の意見。
Mujkic「給料がチップに置き換わるようなアメリカ式に向かうべきではない」
Musson「大切なのは、チップがもともと良いサービスに対して感謝の意を示すことに端を発していると忘れないこと。」
体験談を踏まえて、この記事を読んだ私の感想を一言で表すと、
It's easier said than done.
言うは易し行うは難し。
彼らの主張を、この国はきちんと体現しているように思えるのです。
人道的に、というと何様のつもりだと思われそうですが、なんというかこの国は、道徳的に正しい方針を政府が"said"で済ませずに"done"しているという印象を持ちました。
【In a Nutshell】
体感と一般論を照らし合わせても、オーストラリアでのチップ事情は「ご自由に」と言うことでしたね。
強いて基準を上げるなら
レストランやホテル、タクシーといったホスピタリティ業界(低賃金)で
いいサービスを受けたと思ったら
懐に余裕のある範囲で
料金の10%程度を上限につけてもいい
といったところでした。長々と書きましたが完全に任意です。
私自身、「チップ」と言う概念に初めて触れたのは小学生の頃。珍しく母とタクシーに乗った時のことです。家の前でタクシーから降りる時、母が「お釣りは入りません」といいながらお金を渡していて、とても驚きました。
「なんでお釣りもらわなかったの?」と私が聞くと、
「今日はどうしても車ではいけなくて、助かったからだよ。自分ではできないことをしてもらうんだから、対価を払うのは普通だよね。本当に助かったなら、言葉はもちろんだけど、その気持ちを形でも示せれば相手も嬉しいでしょ」
と、こんなようなことを話してくれました。その後も母からのお小遣いの基準は、相場よりも母がどれだけ助かったか、と言う、極めて主観的かつ相対的なものでした。私の中での「チップ」の定義はこの体験に基づいているので、オーストラリアのチップ文化は極めて"正しい"ように思えるのでしょう。
Today's talk is over. Thank you for reading.
Have a nice day and hope to see you soon!