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助手席より愛を込めて

川に沿って生活道路が伸びている
その少しだけ入ったところに車が何台も駐めれそうな草むらがある。
私たちはよくここに車を止めて話す。

たっぷりとコーヒーが入ったカップはまだ熱々だ。コンビニで買ったばかりで、この一杯が飲み終わるまでは一緒に居たいからあえてМサイズにした。

『あついなぁ』
彼は蚊に刺されやすいくせに不用心に窓を全開にした。蛙や虫の声が聞こえる。
風は涼しいが季節はあきらかに進んでいると感じる。

暗闇の中で話す。
慣れた光景だが時間が気にならなくてとても良い。
わたしはこの時間が好きだ。

なんの話からか沢山のことを一気に思い出し、背筋が寒くなった。
涙が出てしまった。

『家来るか?』
優しい声に頷いた

もう1人ではない
1人で泣かなくていい。安心で涙が引いていく

眼鏡の奥の優しい目がこちらを見る
どこにいても彼は私を見ている。

注意深く。
なにか起こったらすぐに来れるように

『なんでこんなとこ刺される?!』
彼は指を掻きむしる。

彼は自分のことには酷く鈍感だ。
わたしは助手席から愛を込めてあなたを見る

注意深く。
蚊がいたらすぐに叩けるように

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