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懐かしい話
竹生の大きな道路を折れたわきにこじんまりと三角屋根のみせがある。
硝子窓には舞踊・小道具とかかれており、その字体から敷居の高そうな雰囲気をまとっている。
近づくと外から見えるのはパーティグッズだ。それは量販店にも並ぶような季節もので『どうぞのぞいてくださいな』と通行人に語りかける。
硝子の引き戸を開けるとあまりの軽さに驚く。主人は普段から手入れを怠らず、細やかな気配りができる人なのだろう。
自分の顔と通りすぎる車が反射する硝子戸をしめるとなかは商品でいっぱいだ。
女主人は小さな体を小さな隙間におさめていたがすっと立ち上がる。
それでもかわいらしい大きさの女主人はいつもお洒落で化粧もきちっとしていた。
おばあちゃんとは呼びにくいほど綺麗で
おばさんというほど生活感がない。
親しみをこめておばちゃんと呼んでいた。
おばちゃんのいない店の商品棚にはまだおばちゃんの温もりが残っているように見えた。
手拭いは梱包し直し、必勝手拭いには数枚丁寧にアイロンがかかっていた。
ニッケル鈴をつけたより紐。なにに使うはずだったんだろう。
いろんな記憶がよみがえり、
もっともっと話せばよかったと思った。
このお店は演劇、しいては芸能のお師匠さんでした。
なくてはならない店。そんな店も誰も継がなかった。
年々、ネットでの買い物が主流となり、小売店は軒並み閉店している。
店主が高齢、売上が上がらない。理由はいろいろあれど私たちにできることは利用し続けること。
残すためには消費者が投票のごとく選ばないとね。