無責任やってみなおじさん
"やってみなおじさん"をご存知だろうか?
やってみなおじさん(みなおじ)とは、仕事にも慣れ少しずつ自主性も出てきた後輩社員が、仕事の進め方について相談してきた時に、『俺が責任は取るからやってみなよ』快く背中を押してくれはするものの、もし失敗したら知らん顔をして助けてくれないおじのことだ。
みなおじは少し軽い感じはあるが、多くは感じの良い中年男性が多く、若手社員も付き合いやすい上司、先輩として認識していることが多い。みなおじは早く仕事を後輩に覚えさせて戦力にしたい、という意識も強いので、新人には丁寧に指導してくれるタイプが多い。
お前はどうしたいのおじさん(どしおじ)が仕切る部署に配属され、雑な新人教育を受けたのち、『で、お前はどうしたいの?いつまで新人気分で指示待ちしてたダメだよ』と詰問されている同僚に比べて、『自分は当たりの上司を掴んでよかった』と安心できるタイプだ。
みなおじはどしおじとは対照的に、おっさん相手にベスト・コミュニケーションを選択肢から選ぶクソゲーを仕掛けてはこない。若手の主体性を育てたい!と頭では願いながらも、本心ではマイクロマネジメントが大好きで、自分のやり方を押し付けたがるのがどしおじだ。みなおじはざっくりとした指示と期限だけ伝えて、あとは後輩にお任せのマクロマネジメントをするタイプである。
まるで監獄のように厳しいルールのもと働いているどしおじの部下に比べ、放し飼いをされ自由に働けているみなおじの若手たちは、徐々に主体性を持つようになる。サラリーマンとはいえ、小さな枠でも自己裁量権を与えられることで、人は自主性を成長させることができる。
そしてある日、みなおじの後輩はすくすくと育った自主性の赴くまま、自分の仕事を少しでも効率化しよう、改善しようとしてみなおじに相談する。それに対してみなおじは『いいんじゃない?何かあった時には俺が責任を取るので、とりあえずやってみなよ』と快く背中を押してくれるのだ。
すっかりみなおじのことを甲斐性のある立派な上司と思っている若手社員たちは、自分たちの主体性に従って業務に取り組むことになる。もし失敗してもみなおじが守ってくれる。上司との信頼関係を信じて前向きに仕事に取り組めるだろう。仕事が上手くいっているうちは何の問題もない。しかし、問題なのは自分で考えて仕事をこなした結果、大きな失敗をしてしまったときだ。
ショックを受ける社員はみなおじにすがる思いで相談をすることとなる。責任は俺が取る、その言葉通りきっと上にも上手く説明してかばってくれるはず。しかし、そんな後輩の気持ちは裏切られることとなる。
いつもヘラヘラしているみなおじは急に表情を曇らせ、『何でそんなことしたの?俺そんなやり方教えてないよね?それは駄目だよ』と完璧なまでの梯子外しを決めてくるのである。予想もしなかった手のひら返しに驚く若手をしり目に、『俺聞いてないよ。どうして俺に事前に相談しなかったの?』とみなおじの追撃は止まらない。
後輩も自分の判断がもとでやってしまったミスであり、みなおじの言い分もわからないでもないと思いつつも、「いや、責任は俺が取るって言ってたじゃん」とモヤモヤした気持ちで報告書を作成するはめになる。
やってみなおじさんはコミュ力と要領の良さで上役たちに信頼される無能風有能おじさん(無風おじ)に近い性質を持ち、高いコミュ力と保身力で上に気に入られている場合が多い。
減点方式の日本企業では、失敗を部下や他部署などに押し付ける”保身力”は出世のために非常に重要なスキルである。みなおじは若手に気持ちよく仕事をさせることでリーダーシップがあるという評価を受けつつ、後輩の失敗は若手のスタンドプレーとして処理することで、社内で立場を得ているのだ。そう、みなおじは仕事を後輩に丸投げするだけでなく、責任まで丸投げしてくるのだ。
徹頭徹尾『俺のルールに従え!』と、現場のボスとして君臨する窓際承認欲求おじさん(承おじ)は、若手社員にとっては大変めんどくさい存在であるが、承おじは実は甲斐性が結構あり、従順でごまをすってくれる後輩の失敗はかばってくれることが多い。
『こいつは失敗したがめちゃくちゃ頑張ってる!悪いのは俺たちに仕事を押し付けて事務所でサボってる奴らだ!』と上層部批判に走るのは冷や冷やさせられるが、新人がやるような簡単だがしんどい作業を『俺についてこい!!』と先陣を切ってバリバリこなし、『承おじさんのおかげでうちの会社は回ってますよね!』とゴマさえすっておけば、菓子パンやコーヒーを奢ってくれるなど、承おじは結構可愛いところがあるのだ。
そんなわかりやすい承おじや、見える地雷のどしおじに比べ、一見すると安全そうに見えて実は危険なみなおじは、社会経験の浅い若者にとっては非常に避けにくいブービートラップなのである。
やってみなおじさんは主任やリーダー、課長あたりまで幅広く存在しており、彼らにはしごを外されて評価を落としてしまう人間はとても多い。また、みなおじの中には、仕事だけでなく決断やその責任まで丸投げしてくる"無責任やってみなおじさん"も存在している。もし無責任みなおじの部下になってしまった場合、若手社員は一体どのようにして身を守りつつ、働いていけばよいのであろうか?
みなおじの部下になった時に、最も意識しなければならないこと、それが……
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