Fラン大学は本当に無意味なのか?
ツイッターで定期的に議論になるのが、”Fラン大学撤廃論”だ。
Fラン大学撤廃論とは『国公立大学や早慶MARCH、関関同立といった一流大学や、日東駒専や産近甲龍といったそこそこ名の知れた私立大学、それらを除く名前も知られていない大学は必要がない』といった内容だ。特に定員割れしていて名前だけ書けば受かるようなFラン大学は今すぐ潰してしまえ、と非難されている。
先日の記事に書いたが、日本ではホワイトカラー志望の人材が明らかに供給過多なのに対して、現場で働くブルーカラー職は危機的な人手不足にさらされている。
無駄に多い大学を潰せば、学力的に高くない学生は高卒や専門卒として早いうちから現場仕事で働かざるを得ない。そうすれば一部の優秀な大卒のみがホワイトカラーの仕事に就き、そうではない高卒がブルーカラーとして人手不足を解消できる。まさに国策として一石二鳥というわけだ。
さらに、もし学力的に高くない学生が高い学費を払ってFラン大学に入学して4年間過ごしたとしても、ほとんど成長できる可能性は低いことも指摘されている。確かにFラン大学で4年間バイトをしながらサークル活動をして遊び惚けていたり、家と大学を往復してソシャゲをしているよりも、18歳からブルーカラーとして仕事に就いて4年間まじめに働いているほうが、人として成長できることは間違いないだろう。
人は会社に勤めて毎日休まず働くことで、協調性や忍耐力、お金の使い方、自立心などをはぐくむことができる。一部のブラック違法労働などを強いてくる会社は論外だが、まっとうな会社に勤めることは何よりも社会的成長につながるのである。
そのことについては筆者も全く異論はない。Fラン大学どころか、一流大学に入学したのにサボって遊んでいる学生よりも、まじめに働いている高卒のほうがよほど成長速度が早いだろう。
Fラン大学撤廃論を語る人々は、大した学力も向上心もない学生を無駄に大学へ進学させてしまうFラン大学こそが、日本の若者の成長を阻害していると考えている。Fラン大学で若くて貴重な4年間を無駄にするぐらいなら、高卒でブルーカラー労働者になって働いたほうが本人のためだ、と彼らは本気で思っているのである。
しかし、筆者は断言したい。もし大学へ行ける環境があるなら、絶対に大学へ行ったほういい。
マクロな視点でのブルーカラー労働者の不足という問題を解決するために、高卒を増やそうと考えるのはわかる。しかし、ミクロな視点で見れば、高卒で工場で働くよりも、Fラン大学へ進学したほうが幸福になりやすいのである。
ちょっと待て。でも人間的な成長という面からみれば、Fラン大学へ進学するよりも高卒で働くほうが成長できるんじゃなかったのか?そう思う読者は多いだろう。
しかし、ここが大きな勘違いなのだ。Fラン大学へ進学するメリットは成長できるか否か、そこではないのである。人間的成長などをはるかに上回るメリットが、大学進学には存在しているのだ。
では高卒よりもFラン大学卒になるほうがどんなプラスが人生に付与されるのであろうか?
まず1つ目が”劣等感を抱いて生きずに済む”ということだ。
筆者は高卒で働いているたくさんの知り合いがおり、その年齢層も団塊の世代からZ世代まで幅広い。大卒者の割合は団塊の世代まではそこまで多くはなかったが、氷河期世代のあたりから急増した。
その結果、氷河期世代以降で高卒の人間の多くが、同級生たちが楽しそうに大学生活を満喫する姿を横目に見ながら、工場や建築現場で労働するという経験をしていたのである。
そのため、彼らの多くは『俺も大学へ行きたかった』『キャンパスライフを経験してみたかった』という大卒への強い劣等感を抱くことになってしまっているのだ。
高学歴なのに仕事がうまくやっていけず、工場の現場に流れてきた大卒に対して、ベテランの高卒作業員が『大卒のくせになさけぇ奴だな!』と過剰な罵倒する話はよく耳にするが、その根底にあるものは大卒への劣等感なのだ。
サラリーマンのみならず、高卒ながら自営業の世界で成功して社長となった人間ですら、『大学生活を送ってみたかった』と酒の席で漏らすのを聞いたことがある。大学へ行けなかったという事実は、人によっては非常に強く引きずってしまう過去になるのである。特に大学へ行ける学力があったにも関わらず、家の事情で断念した人には、そういった傾向が強い。
筆者は大学生の時代に、趣味の集まりで知り合った数多くの高卒ブルーカラーの先輩たちと食事を共にしたが、みな一様に『大学はきちんと卒業しろ』『大卒のカードは強いから絶対に持っておけ』とアドバイスを受けた。
ツイッターで大卒より高卒の時代が来る!Fラン大学へ行くより高卒で働くべき!と投稿している人間がみな一流大学卒なのとは正反対だ。どちらの意見を重く受け止めるべきかは一目瞭然である。
さらに大学へ進学すべき明らかな理由はまだまだ存在する。2つめが……
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