3号廃止はなぜ愚策なのか?
ツイッターが騒然とする事態が起きている。今回の騒動の中心にある話題、それが”3号被保険者制度の廃止議論”である。
第3号被保険者制度とは、『会社員や公務員の配偶者のうち、年収が130万円未満で、扶養されている20歳から59歳までの人が、みずから保険料を支払わなくても基礎年金を受け取ることができる制度』のことだ。
つまり、サラリーマンに扶養されている専業主婦は、国民年金の¥16,000/月を支払わなくても、将来年金がもらえるという制度である。この制度の廃止を訴えているのが、野党最大勢力の立憲と、今回20代30代の比例でトップ、絶大なる若者からの人気を誇る国民民主である。
国民民主の代表である玉木代表は『3号被保険者は年金を収めていないのに全額受け取れてしまう。3号制度を廃止することで、働いて年金を支払っている労働者の年金支払額を下げて手取りを増やすべきだ。さらに、自営業者の妻や母子家庭の母は、個別に保険料を納めなければ給付が受けられないのに対し、第3号被保険者だけが国民年金を全額受け取れるのも不公平だ』として、3号被保険者制度の廃止について理解を訴えている。
3号被保険者制度の廃止を巡り、専業主婦家庭とフルタイム共働き家庭が喧々囂々の争いをツイッターで繰り広げているのである。それにしても、そもそもなぜ今になって3号廃止の議論が巻き起こっているのであろうか?表立っては現役世帯の手取りを増やすため、と言われているが実際のところは別の原因がある。それが”子なし専業主婦の増加”である。
昭和から平成にかけて、男性が十分な稼ぎが得られて物価や税負担も今ほど高くはなかった時代には、多くの専業主婦世帯が存在していた。そして専業主婦の多くが、子供たちを産み育てていた。
しかし時代が変わり、新たな夫婦の価値観が登場した。それが子なし世帯の増加である。子供を育てておらず、なおかつ働いてもいない、そういった既婚女性がどんどん増えているのである。統計を見てもそれは明らかで、専業主婦世帯の子なし率はなんと40%弱まで急増しており、今や共働き世帯よりも多い。
さらに、一人っ子世帯の割合も専業主婦世帯の方が共働き世帯よりも多い結果となっている。専業主婦世帯のおよそ7割が子供1人か0人というのだから驚きだ。
これらの事実から炙り出されるのが、専業主婦を選択している家庭の内情の変化だ。従来の旦那の稼ぎが良くて女性が育児家事に専念できるから専業主婦を選択している家庭よりも、何らかの事情で働けない、子供が作れない家庭が専業主婦世帯を選択しているパターンが増えているのである。ポジティブではなくネガティブな理由から専業主婦世帯を選択せざるを得ない、そんな家庭が増えているのである。
専業主婦も育児や家事をこなして頑張ってるし、国民年金の支払いぐらい免除してあげていいよね、という3号被保険者制度が作られた本来の目的が、時代の変化によってミスマッチとなってしまっているのだ。
このような社会に変化した理由は明白だ。それは『女性の仕事の選択肢が増加している』ことと、『保育園などの公的な育児支援が充実した』ことの2つだ。
平成の30年間に推し進められてきた女性の社会進出と、少子化による人手不足、産業構造の変化で女性でも出来る第三次産業の仕事が増えたことなどが重なり、今や女性が自分のライフスタイルに合った仕事を見つけることは昔に比べて格段に簡単になった。
さらに、働きだした女性に対する公的な育児支援がここ数年で一気に拡充された。保育園が増え待機児童はほとんどいなくなった。今や地域によってはパート主婦でも子供を保育園に預けられるほどである。
この2つの子育て主婦を取り巻く社会環境の変化によって、これまでバリバリに専業主婦業をこなして来た女性は、『どう考えても子供保育園に預けて働いたほうが得じゃん』という考えにいたり、共働き世帯が爆増したのである。
筆者の周りを見渡しても、旦那の稼ぎだけで十分生活できるが、働かないともったいないから、という理由でフルタイム労働をしている主婦は意外と多い。体力のある女性の多くは結婚出産後も働いている。
いまやパート主婦とフルタイム主婦を合わせると、今や全体で見ても6割以上の子育て世帯が共働き世帯となっている。若い世代に限れば共働き率はさらに高い。
子育て中の女性が働くことに対するインセンティブが最大まで高まっている時代に、あえて専業主婦を選ぶ世帯は、女性が働くことに消極的、もしくは体力的な問題から働けない場合が多いのである。
このような社会構造の変化を受け、専業主婦を優遇する3号制度を維持するメリットが社会には薄い、と判断する政党や社会の雰囲気が出てくるのはある意味当然だろう。
独身男女、嫁の稼ぎが130万以上の共働き世帯、年金暮らしの高齢者にとっては、3号被保険者制度の廃止は全くのノーダメージだ。困るのは専業主婦世帯と嫁が130万以下でパートをしている共働き世帯、そして将来専業主婦になりたいと考える未婚女性と、専業主婦を養いたいと考える未婚男性だけだ。数こそが正義の民主主義国家において、おそらく賛成多数で3号被保険者制度の廃止は決定されるだろう。
政府としても、3号被保険者制度があるばかりに、130万円以下に労働時間を抑えている既婚女性にもっと働いて少子化の穴を埋めて欲しいと願っている。ついでに税金も多く徴収できるし、国にとっても一石二鳥だ。
3号被保険者制度の廃止は、もはや避けられないだろう。筆者自身はフルタイム共働き世帯であるため、3号被保険者制度が廃止されても全く問題はない。
しかしそれでもあえて言いたい。3号被保険者制度は形を変えて残した方がいい。
確かに全専業主婦世帯に3号被保険者制度を適応するのは、時代にミスマッチかもしれない。しかし、条件付きで3号制度を残すことは、日本の社会にとってメリットがある。
では、一体どういった条件を加えることがベストなのか?それは……
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