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ロスジェネバイトリーダーという人柱

いま全国で空前絶後のアルバイター不足が発生している。いや、もっとはっきりと書こう。

ロスジェネ世代に変わる新しい人柱が見つからない時代が到来したのである

その現状を赤裸々に綴ったウェブニュースを引用しつつ、この問題について書いていこうと思う。コンビニや飲食店のアルバイトが不足している要因が二つある。

まず一つ目が少子化だ。これまでに何度も記事で書いてきた通り、日本は空前絶後の少子化が進行中である。政府が今まさに異次元の少子化対策を実施中であるが、その結果が出るのは数十年後の話である。令和日本ではコンビニや飲食店の店長が求める若いバイトさんたちの数が減り続けているのである。

そして少子化によって発生しているのが若者の青田買いである。各企業も若者というだけでウェルカムな時代が今到来しているのである。昔なら厳しい就職戦線に打ちのめされ、正社員で働くことを諦め、とりあえずフリーターになって働かざるを得なかった、という若者が多数存在したが、今ではそのような若者はほとんどいない。新卒カードさえあればどこかの会社の正社員になれる時代なのだ。

「極端な話かもしれないが、若い人は誰もコンビニなんかで働かない。それくらい来ない。それはもうわかっている。若い人は他にいくらでも働き先があるし、そもそも昔に比べて若い人が少ない。少ない若者が好き好んでコンビニで働くことはない。とくに都心ではそうだ」

Newsポストセブン:各業界で深刻なアルバイト不足 「代わりはいくらでもいる」時代は終焉

そして2つ目の理由が、今回の主題となるロスジェネ世代のバイトリーダーたちの引退である。若者というだけで引く手あまたの令和と違い、ロスジェネ世代が就職活動に励んだバブル崩壊直後の就職戦線は本当に過酷だった。就職氷河期という名前の通り、新卒採用枠は凍り付き、有効求人倍率が1.0を超えるまで10年以上の歳月を必要とした。この長すぎる氷河期の間に大卒資格を持つごく普通の能力を持った若者たちが大量にアルバイター市場に流れ込むこととなった。

「この店舗の近くとなるとワンルームでも最低7、8万はすると思う。昔はもっと安かった。それだけの家賃を出して今どき牛丼屋でアルバイトはしないだろう。できないことはないが、まずしないと思う。いまの若者はいくらでも仕事があるし、私たち世代のような無茶な夢の追い方はしない。正社員で兼業とか、正社員をしながら趣味の延長線上で夢を追うし、それができる。日本の働き方改革や少子化による厚遇からそれができる環境にもあるのかもしれない。そもそもいまの若い人は簡単に正社員になれる。50社100社全落ち、聞いたこともない会社すら落とされてフリーターのまま10年なんて時代とはまったく違う」

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我々ロスジェネが若かった時代ではコンビニやバイトの面接はかなりしっかりしており、ふにゃふにゃした返答をしていれば容赦なく面接で落とされていた。またミスが多ければアルバイトでもクビになっていた。

なぜたかがアルバイトにそんなハードルが課されていたのかと言えば、他にいくらでもなり手がいたからである。就職氷河期時代はアルバイトですらお店側の買い手市場になるほどに、世の中には仕事を求め彷徨う若者がいたのだ。今の時代、それなりの大学を卒業しても仕事が全く見つからずにフリーターになる男の話を聞けば、多くの人がよほど素行に問題があるのでは?と疑うであろうが、ロスジェネ世代はそれなりにまともな新卒でも仕事にありつけなかった人材が市場に溢れていた。なぜならロスジェネ世代は景気が悪かったうえに人数まで多かったからだ。

「都心の店舗に限れば独身でワンルームに住むようなフリーターが減ったように思う。昔はそういう人が多かった。夢追い人だけでなく、優秀な大学を卒業しているような若者も来てくれた。それで社員になった者もいる。しかしいまの若者は他にいくらでも仕事があるし、言い方が難しいが昔ならうちのアルバイトでも採用しないな、という若者でもそれなりの人気業種に就職していたりする。それも正社員が当たり前だ。そんな人気業種と取り合いして勝てるわけがないし、正直、私も就職の厳しい時代の人間だったので羨ましく思う」

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そして就職に失敗し、ズルズルとバイトを続けているうちにレールから零れてしまいバイトを辞めるタイミングを見失ったロスジェネたちが、日本のコンビニや飲食店の24時間経営を支えてきたのである。

正社員になれなかったが人並みの能力があり、薄給でも休まず働いてくれる……そんなロスジェネバイトリーダーたちは、コンビニや飲食店にはとても使い勝手の良い人材であったのである。時代に翻弄され気が付いたら社会の便利なインフラサービスの歯車になってしまったロスジェネたちは、豊かで利便性の良い社会のための人柱であった

「昔は大卒で就職が決まらない子も大勢いた。それも一流大学だ。安い時給で店を仕切ってくれたが、いまはそんな都合のいい若い子は来ない。私は『時代が変わった』と認識しているが、同業のオーナーの中にはその時代の感覚で『優秀な若い子が来ない』と愚痴る者もいるし、ベテランの中にはいまだに『代わりはいくらでも来る』と思っている者もいる。それで来ればいいが来ない。結局そのオーナーが1日中働いている」

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ロスジェネと同じく就職のタイミングにリーマンショックが発生し就職難に直面したゆとり世代でもバイトリーダーの道に進まざるを得なかった若者は一定数発生した。しかし氷河期と違い、リーマンショックによる就職難は期間が短く有効求人倍率が急回復したおかげで、彼らは比較的傷が浅いうちに正社員の座を掴むことが出来た。

ロスジェネ世代の悲劇は、就職難の期間がおよそ10年とあまりに長すぎたことだ。フリーターとしての期間が長引けば長引くほど、正社員に就職することは難しくなってしまう。就職が見つからないからフリーターとして働き、フリーターとしての期間が延びるほどにさらに就職できなくなる。就活の負のループはロスジェネフリーターを非正規雇用にくぎ付けにしたのだ。

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そうして貴重な20代を棒に振りアラサーになる頃には、ロスジェネ世代は立派なバイトリーダーに成長してしまっていた。薄給の非正規雇用の男性は当然結婚することが難しく、未婚のまま歳を重ねるごとに社会から疎外されていった

そんな中で男がアイデンティティを保つには仕事に居場所を見つけるほかなかったのだ。バイトリーダーという名前だけの称号に固執し、やる気のないバイトに説法する彼らを見て笑う人は多いだろう。バイトリーダーという役職はは外部の正社員たちから見れば何の価値もないものかもしれないが、何もかもを奪われたロスジェネ世代男子にとっては手放せない肩書なのだ

リーマンショック前に小泉旋風が巻き起こり、平成日本は久方ぶりの好景気に沸いた。そのタイミングに正社員の座を掴んた非正規雇用ロスジェネ男子はかなりの数いたのであるが、『俺が抜けたらバイト先の店舗が回らなくなる!』と頭バイトリーダーになってしまっていたせいで絶好のチャンスを逃してしまったロスジェネ男子も多かった。その結果、リーマンショックによって彼らの再就職ラストチャンスは失われてしまった

それから15年、彼らロスジェネバイトリーダーたちを人柱とすることで安くて便利な長時間営業のお店がこれまで運営されてきたのである。

しかしそんなコンビニや飲食業界に大きな転換期が訪れることとなった。それが……

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