
ねじれ文って何?
主語と述語の関係がおかしい文章のことを「ねじれ文」と呼びます。編集をしていたころ、わりとよく出くわしました。優秀なライターさんでも、お疲れのときにやっちゃうことがあるようです。
私は名前のとおりポンコツなので、お疲れでなくてもやります。読み直さないままクライアントに提出してたらヤベェなって思うことがしばしばです。
そこで、自分への戒めも含めて少し解説してみようと思います。「ねじれ文って初耳」「もしかして、やっちゃってるかも」という方は、ぜひ読んでみてください。
ねじれ文の例と解説
ねじれ文の例
家にある調理器具には、フライパン、包丁、おたまなどです。
私の将来の目標は宇宙飛行士になって月を見たいです。
学生時代に頑張ったことはアルバイトでお金を貯めて学費を支払った。
私は週末に勉強とお花を買います。
この小麦粉はあの機械で作っている。
上記を読んで「あっ、気持ち悪い」と思った方はおそらく大丈夫です。サラッと読めちゃったら、自分で書いたときも気にならず見落としそうなので注意した方が良いかも。
解説
家にある調理器具には、フライパン、包丁、おたまなどです。
⇒主述の関係のみ抜き出すと「調理器具にはおたまです」となり、すぐにおかしいことがわかります。「~には~がある」が適当です。私の将来の目標は宇宙飛行士になって月を見たいです。
⇒同様に主述の関係のみを抜き出すと「目標は月を見たいです」となり、これもおかしいことがわかります。「~は~だ」が成立するように直しましょう。学生時代に頑張ったことはアルバイトでお金を貯めて学費を支払った。
⇒これも「頑張ったことは支払った」でおかしな文章です。「~は~だ」が成立するように直しましょう。私は週末に勉強とお花を買います。
⇒これは「勉強」と「お花」が並列して「買います」にかかっているのが間違いです。「勉強を買います」になってしまいます。勉強は「する」、お花は「買う」なので分ける必要があります。この小麦粉はあの機械で作っている。
⇒主述の関係を抜き出すと「小麦粉は作っている」となります。口語表現としてはこの文章でも意味は伝わりますが、ライティングとしては避けたい表現です。生物ではないもの、動作がないものには受動態を用いましょう。
例文の直し
家には、フライパン、包丁、おたまなどの調理器具があります。
or
家にある調理器具はフライパン、包丁、おたまなどです。私の将来の目標は宇宙飛行士になって月を見ることです。
学生時代に頑張ったことはアルバイトでお金を貯めて学費を支払ったことです。
or
学生時代に頑張ったことはアルバイトです。お金を貯めて学費を支払いました。私は週末に勉強したり、お花を買ったりします。
この小麦粉はあの機械で作られている。
ねじれ文になりやすいとき
経験則で恐縮ですが、次のようなときに文章がねじれやすいと感じています。
一文一義になっていないとき
並列させたい単語が多いとき
一生懸命調べて書いたとき
難しい単語が多く出てくるとき
重文・複文を用いると文章の格式は高くなりますが、Webライティングでは求められることが少ないため、多用しないことをおすすめします。極力、一文一義を意識して、シンプルな文章を目指しましょう。
ただ、ブツ切りすぎても気持ち悪い文章もあるので、そういうときは上記のように「~ですが or ~ますが」「~ため」などを用いて、意味ごとに文章を区切ってみましょう。
「フライパン、包丁、おたま」のように並列させたい単語が多いときも必然的に文章が長くなるため、主述の位置が遠くなり、ねじれを見落としやすくなります。
また、一生懸命調べて書いたときや難しい単語が多く出てくるときは、自身の脳みそが疲弊しやすいので、見落としが多くなります。調査や理解だけで疲弊しちゃったよ、というときは一旦休んでから執筆すると良いかもしれません。
ねじれ文はモナリザ文とも呼ばれる
平成21年度全国学力・学習状況調査の出題内容から、ねじれ文はモナリザ文と呼ばれることもあります。
これは、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「モナ・リザ」という絵です。この絵の特徴は、どの角度から見ても女性と目が合います。
一 ― 線部「この絵の特徴は、どの角度から見ても女性と目が合います。」は「この絵の特徴は」と「目が合います」との言葉の関係が不適切です。この内容を変えないように、「合います」の部分を適切に書き直しなさい。
正答率は50.8%だったとのこと。2人に1人くらいは間違えているので、大人になってもうっかり間違いやすいポイントといえそうです。
推敲するときのポイント
ねじれ文に気づくために、次のことをやってみましょう。
音読する
主述の関係だけ抜き出してみる
この2つをやってみるだけで、ねじれ文を発見しやすくなります。また、他者に音読してもらうのも効果的という情報がありました。ねじれ文に限らず、文章の間違いを発見しやすくなるそうです。
参考資料
秋田大学学術情報リポジトリ「小学生の国語誤用の収集・分析と指導法開発に関する研究(2)」
井上 陽童「協同推敲に音読を取り入れた影響の分析――グループ・カンファレンスとの比較を通して――」
最後に
疲れているときに脳と体に鞭うって執筆すると、結構やらかしがちなのが「ねじれ文」かなと思っています。普段はめちゃくちゃバッチリな文章を書く方でも、なくはないので要注意です。しっかり休む、自分が書いたものを定期的に音読してみるなどで対策しましょう。
次回は「形容詞+です」のアリナシってメディアさんによって異なるよね、どうなんでしょうね、というのを書きたいと思います。「美しいです」とかのやつです。