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ゆらり流されて。



ある朝、親友とも呼べる友人が
遠い世界に旅立った

そんな経験もなく
どうして良いのかわからなかった僕は
無意識に身支度を済ませ、
とりあえず仕事をしていた。

頭の中は何故かスッとしていて
他愛のない会話ができるくらいだった


休憩時間にふとSNSを見ると
御家族がいらっしゃるとの情報を見て
彼のことを話さないといけないと
居ても立っても居られなくなる。

気づいたら自宅に戻り、着替えていた。


数日前まで一緒に遊んでいた彼が
急に亡くなったと言われても
当然実感なんて湧く訳もなく。

彼が寝ている見知らぬ部屋に辿り着き、
周りで泣いている人を見ても
何で泣いているのだろうかと
不思議に思うくらい。


見知らぬ部屋の奥に進み
彼の顔を覗き込む

綺麗な寝顔。

寝息を立てていても
おかしくないその綺麗な顔は
彼の人生がとても良いものだったのだと
誰もが察することが出来ただろう

彼が空へと旅立ったことを
悟った僕は
嗚咽しながらも彼のご両親に
僕らと接する彼がどのような人だったかを
拙い言葉で言い表し、
その場を後にした。

その後、
彼が生前よく飲んでいた
ハイボールをコンビニで買い
空に向けて乾杯した。

君が引っ越した世界では
ハイボール、飲み放題だといいね

その後、彼の旅立ちをきっかけに
無意識ではあるが、
いろいろな友人と会う機会を作っていた。

恐らく親友とも呼べる彼の旅立ちにより
友人たちの安否が気になったのであろう。

友人達と他愛もない会話をするが、
お酒が進むにつれて彼の話になっていく。

彼が遠くに行ってしまったことは想像以上に
多くの人の心に傷を残してしまっていた

僕は見知らぬ部屋で彼の顔を見た後も
彼といつでも好きな時に
連絡が取れる気がしていた。

どう見たって寝てたし、
また朝が来たらおはよう、
ドッキリだよーて言ってくれるだろうと。
悲しい気持ちになれなかった。

しかし友人たちと言葉を重ねていく度
真実味を増していき
心を締め付けてくる。

1人で散歩している時
コンビニ梯子酒をしながら
ウォーキングだからダイエットだと
言い張る彼の姿が目に浮かぶし、
レモンサワーを飲むと
我が家のレモンサワーの素を
炭酸水がなくなっても
買い出しに行くのが面倒くさいからって
原液のまま飲んでた彼を思い出すし、
海を見ると
彼がその当時好きだった人からの
告白の返事待ちを
1人でいるのが不安だと言う理由で
呼び出されて海を見ながら待ち続けた事を
思い出すし、
東公園の近くを通ると
新しく撮影したMVを
見てほしいと凄い笑顔で
見せてくれた日のことを思い出すし....

あぁ、恋しいな。
まだ僕たちの開拓されていない道について
あれやこれやと言葉を投げ合いたかったな。
まだ話したいことが沢山あるのにな。

それでも
小さく空に浮かんでいた
月より遠い場所に行ってしまった君が
幸せな日々を送っていることを願う

またいつかどこかで。


i love you

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