深夜のエレベーター
ある大都市の高層ビルには、奇妙な噂があった。深夜0時を過ぎると、エレベーターに乗るとき、絶対に「13階」のボタンを押してはいけないという。
会社員のDさんは、その噂を信じていなかった。残業を終えた深夜、ふとその話を思い出したが、ただの都市伝説だと考え、面白半分で「13階」のボタンを押してしまった。
すると、エレベーターはゆっくりと動き始め、なぜか通常通りの動きではない違和感を感じた。13階に着くと、扉が音もなく開き、Dさんの前には異様な雰囲気の廊下が広がっていた。ビルの設計上、13階は存在しないはずなのに。
Dさんは不安になり、扉を閉じようとしたが、エレベーターの内部のボタンが全て消えてしまっていた。そして、背後から誰かがじっと見つめている気配がした。
恐る恐る振り返ると、エレベーターの角に影のようなものが揺らめいていた。それは、口を大きく開けた異形の人影だった。
慌てて閉じるボタンを連打するDさん。しかし、エレベーターは動かず、人影がゆっくりと近づいてくる…。
翌朝、清掃員が扉を開けるが、誰も乗っておらず、Dさんの姿も見つからなかった。ただ、エレベーター内には、誰かが爪で引っ掻いたような傷跡が残されていたという。