黒い電話ボックス

ある都市の片隅に、誰も近寄りたがらない古びた電話ボックスが存在している。その電話ボックスは、かつてはよく利用されていたが、今は使われることはほとんどなく、ただ放置されたままだ。

地元の人々は、その電話ボックスに関する恐ろしい噂を語り合う。「黒い電話ボックスに電話をかけると、必ず誰かが死ぬ」というのだ。その噂は、長い間広がり続け、若者たちは好奇心からその電話ボックスに近づいてしまうことがある。

ある晩、若いカップルのAと美咲は、友人たちと遊びに出かけた帰り道にその電話ボックスを見つけた。友人たちの間では、「黒い電話ボックス」に電話をかけることが流行していたため、二人も興味本位で中に入ることにした。

中は薄暗く、電話機の前には古びた椅子が置かれていた。Aは冗談半分で電話をかけ始めた。すると、受話器の向こうから微かな声が聞こえた。「誰かが、死ぬ…」という不気味なささやき。

Aは驚いて受話器を置いたが、美咲は興味を失わなかった。「もう一度かけてみて!」と言う。Aは渋々もう一度電話をかけたが、今度は沈黙が続いた。気味悪さを感じた二人は、すぐに電話ボックスを出た。

その晩、Aは不安で眠れなかった。すると、夢の中にあの電話ボックスが現れ、再び不気味な声が響いた。「お前の番が来た…」

翌日、Aは友人と街を歩いていると、突然携帯電話が鳴り響いた。画面には、見知らぬ番号が表示されていた。恐る恐る電話に出ると、あの声が再び聞こえてきた。「もうすぐ、あの電話ボックスに戻ってくるだろう…」

その後、Aの周りで不幸が次々と起こり始めた。友人が事故に遭い、家族が病気になり、彼自身も次第に心身を蝕まれていく。

数日後、Aは自分の運命を変えるために、あの電話ボックスに戻る決意をした。夜、彼は一人で電話ボックスに向かう。恐怖に満ちた心を抱えながら、彼は受話器を取った。

すると、電話の向こうから再び不気味な声が響いた。「お前は選ばれた。最後の一人になるのは、お前だ。」

その瞬間、電話ボックスの周囲が暗闇に包まれ、Aはその場から消えてしまった。翌朝、通りすがりの人々が電話ボックスを見ると、受話器は外れて地面に落ち、Aの姿はどこにも見当たらなかった。

それ以来、誰もその電話ボックスには近寄らなくなり、噂はさらに広がり続けた。「黒い電話ボックスに電話をかけると、必ず誰かが死ぬ」と…

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