夜を享受せよ、ファミレスを享受せよ【『ファミレスを享受せよ』感想】
俺たちは深夜が好きだ。深夜の一人きり感を満喫できる街が好きだ。そんななんかちょっとだめそうな奴らが、ぽつぽつと集っている深夜のファミレスが好きだ。
夜を享受せよ。
ファミレスを享受せよ。
いいですよね、深夜のファミレス……。なんか静かに後ろ向きな空気が流れていて……。勉強やら作業やらで来ている人間が多いはずなのに、「がんばろう!」なんて雰囲気がぜ〜んぜん存在しない、あの空間。
こう……高尚な退廃さ? って言いますか? 深夜のマクドは荒れた退廃さがありますが、深夜のファミレスは高尚な退廃さがありますよね(?)
その空気感を丸ごと体験できる。『ファミレスを享受せよ』は、そんなゲームでございました。
どんなゲーム?
深夜にふらっとファミレスに行くと、いつの間にか時の止まった永遠のファミレス「ムーンパレス」に迷い込んでしまった主人公。どうにもできないので、ドリンクバーでジュースを飲んだり、同じく迷い込んだ人たちと雑談したり、ドリンクバーでジュースを飲んだりして脱出を図ります。
……いや、正確には脱出を測っていないかもしれない……? 必死こいてなんとかしようとする雰囲気はなく、状況に流れ流されゆるゆるとファミレスの時間を享受する、そんなゲームです。
シンプルで良い雰囲気のグラフィックに、ほどよい癖のキャラクターたち。静かなBGMと凪のような台詞回し。
このゲームを構成する全部が「深夜のファミレス」そのもので、とっっっても愛おしい空間なんですよね。
狸谷的にはもうここで200%満足を得ていたのですが、これはゲームの感想noteなので流石にもう少し書きますね。
ゆるゆる雑談って、楽しいもんですね
このゲームで行うメイン行動は「キャラクターとの雑談」です。
迷い込み仲間の皆さんは、迷い込み先輩でもあります。つまり、時が止まったファミレスで既に膨大な時間を過ごしてきているんですね。
ゆえに、「誰かに話しかけに行く」気力は、もう既に失っている方々ばかりです。
なのでこちらが会話デッキを準備して、そのデッキの中から雑談を仕掛けていってあげます。(無視してくる人はいません。きっとみんな育ちが良いんや)
雑談をすると、その話の中から新たな会話デッキが生まれます。そうして少しずつ、ファミレス「ムーンパレス」のことや、各キャラクターのことを知っていきます。その後どう動くかはプレイヤー次第、ってなわけです。
キャラクターとの会話は小粋で興味深いものばかり。この雑談が面白いのも、「早くここから脱出しなきゃ!」という焦りを無くしてくれる要因な気がしますね。
狸谷は全会話デッキを見たくなり、ファミレス内をぐるぐる歩き回る不審者と化しておりました。
時の止まった永遠のファミレス
主人公が迷い込んだのは、時の止まった永遠のファミレスである「ムーンパレス」です。この「時の止まった永遠のファミレス」という場所が、各キャラクターたちやストーリー、果てはあんな要素にまで作用してきます。
例えば迷い込み先輩であるキャラクターたちは、既に長い時間このファミレスで過ごしています。ゆえに、パニックや発狂のターンは遠い昔に経ており、みんなもう落ち着いて(諦めて)いる状態なんですよね。
だからこちらも焦らされることはない。ゆっくりとこのファミレスを享受できるってワケです。
「永遠のファミレス」であることがストーリーやその他の仕掛けにどう作用しているかは、ぜひご自身の目で確かめてください。狸谷的には設定がめちゃくちゃ気持ちよくはまる、よくできた内容だと思いました。
もうちょっと言語化すると、「おぉ……こんな……そうかこの設定がこんな……ちょっとすごいなこれ……!!!」でした。
ファミレスを享受せよ
あれこれ書きましたが、狸谷のお気に入りポイントはこのゲームが「深夜のファミレスそのものである」ことです。冒頭に書いてたやつですね。
なので、可能ならば深夜に……「深夜」の定義って人それぞれなので「何時に」とは言えませんが……とにかく深夜に遊んでほしいです。(狸谷的には2時〜4時半ですかね)
で、ゲームのお供はお酒でなく、ぜひジュースとかコーヒーとかで。ファミレスにはお酒もありますが、ここはやはりドリンクバーで飲むことができる飲み物を選びたいところです。
皆様もぜひ、このゲームで上質な深夜をお過ごしください。
200%狸谷の娯楽のためにしか使われません。お金は後悔のない使い方を。