目が悪くなり、ラジオにハマり、コミュニケーションの何らかを学びました。
最近ラジオを聴いている。理由は簡単で、目が悪くなったからである。
これまでずっと文字を読むことで暇つぶしをしてきたけど、視力低下が災いして気軽には文字を楽しみにくくなった。特に暇のほとんどを捧げていたTwitterがきつくなった。あそこにコミットするには、それなりな母数のツイートをシャーっと走らせてその中からアツいつぶやきを見つけ出すという眼力が必要なのだ。
その分できた暇をつぶすため、急激にハマってしまったのがラジオである。TBSラジオではじまった番組「ACTION」を聴きたくて今年4月にラジコプレミアムに入り、そこから堰を切ったように手当たり次第聴くようになった。
それでわかってきたのは、ラジオはかなりコミュニケーションの勉強になるぞ! ということである。
まず高度な喋りの技術を覗くことができる。パーソナリティというのは喋りの専門家で、時折、専門家ならではの技術論が語られることがある。たとえば伊集院光がある番組で「話すべきことをあらかじめ紙にバーっと書き出してから挑む」と言っていて、あんなトップの方でもそれだけ準備をするのか、一流野球選手が語るバッティング術みたいだなと思った。ある世界の深淵を見られたようで新鮮だった。
さまざまな世代、職業の人たちが何を考えているのか、何に気を遣って生きているのかを知ることもできる。アラサーの芸人さんやミュージシャン、めちゃくちゃ先輩に気を遣うなとか。逆に自分と同世代やちょい上の人だと、エピソードが自慢話にならないように、自分を落としつつ話すなとか。浮世離れフリーランスを15年以上やり、うっかり知りそびれた処世術。今更知って、結構びっくりしている。就職活動をひかえた若い方とかには、超〜ラジオおすすめ。特に知識とかはそこそこあるけどキャッチボールが苦手なタイプは、新聞読むよりもこっちだ。
ラジオを聴き続けると、リスナーも喋りの腕が上がるらしい。ある番組の企画でリスナーが生放送で町の様子をレポートするというのがあったのだけど、そこでは聞き覚えのあるラジオネームのリスナーが、テンポよく楽しいレポートをこなしていた。優秀な聞き手は、喋りも達者だった。
自分もラジオになじんでくると、間の取り方や発声、相槌、ゲストの掘り下げのコツなんかも多少見えてきた気がするし、よく聴くパーソナリティーのボキャブラリーや相槌が伝染ってくる。自分がこれまで雑食的に文章を読むことで知らず知らずのうちに文章術を磨いてきたのと同じように、喋りの技術は耳学問で身につくらしい。
ラジオにはなんとなく「現実世界に物足りなさを感じる若者の逃げ場」もしくは「ある種の作業用BGM」という受け身なイメージがあったけど、実際に聴き込んでみると、受け手を鍛えるメディアなのだなとわかった。
人前で話すのが苦手で、筆一本でやってますふうな感じを出して、喋る仕事からはひたすら逃げてきた。昔ラジオ番組のゲストに呼んでいただいたことがあるけど、ファンにとっては聖地であるラジオブースにボサボサ頭と毛玉だらけのセーターでいってしまい、話は薄いし広げないしと、本当に散々だった。けど、もうすこし昔からラジオを聞いておけば、ちがった人生があったような気も……と、視力低下に至って気づいた2019年。
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