【統計学修士の備忘録】#7 金融統計学とは
こんにちは、ぽむぽむです。機械学習のテストが終わりほっとしていますが、今度は金融統計の試験勉強が始まりました。
実は私の修士のコースは MSc Statistics (Financial Statistics) というカッコ付きのものでして、統計学修士の中の金融統計コース(?)みたいな感じになっています。一般の統計学コースの学生たちともほとんど同じ授業を取りますが、(Financial Statistics) 付きの学生たちは金融データに関連する授業を必修で受けなくてはなりません。そのうちの1つが Financial Statistics という授業です。
私は学部時代は金融を専攻していたのですが、そのうちに統計学にも興味が出てきて大学院で学びたい!となったので、金融✖️統計の響きだけで私にピッタリだと思って今のコースを選びました。が、当時は金融統計学で何を学ぶのか良くわかっておらず、数理ファイナンス(Mathematical Finance)、金融工学(Financial Engineering)、数量ファイナンス(Quantitative Finance)との違いも曖昧でした。
そもそも日本の大学でしたら金融統計という授業があったら良い方で、金融統計学専攻などは聞いたことがありません。また、ネットで調べても定義や上述の他学問との違いは出てこないと思います。ということで、教授や周りの学生から聞いたこと、この1年で学んだことを踏まえつつ、金融統計学とは何か記録しておきたいと思います。
金融統計学とは何か
金融統計学とは、統計学の一分野で、金融に関連するデータを扱うものになります。つまり普通の統計学と同じで、データを分析して規則性などを見つけることには変わりはないのですが、その対象データが金融データに限られたバージョンということになります。
それでは世の中には大量の種類のデータが存在しているのに、何故金融データだけがこんな立派な一分野を作り上げているのか気になるかもしれません。確かに身長のデータだけに特化した分野を作り上げて、身長統計学を流行らせても良さそうです。しかしその様な学問はなく(あったらごめんなさい)金融統計が一つの大学院のコースにまでなっているのは、金融データが非常に特徴的だからです。
まず、金融データは"伝統的には"時系列データがほとんどです。例えば、株価を分析したいとなったら株価の時系列データを使います。
また、時系列データと言っても、金融データの場合は有効に使える時系列分析のツールが限られています。例として、イギリスの株価のインデックスを見てみます。
リターン同士は無相関に見えますし、ホワイトノイズの様にも見えます。しかしボラティリティはどうでしょうか。この図を見ても何となく分かると思いますが、金融資産リターンのボラティリティには以下のような特徴があります。
ボラティリティ・クラスタリング:ボラティリティが一定期間ずっと高い時期と低い時期がある
連続性:連続的に展開していく
有界:ある程度のレンジの中で上下する
レバレッジ効果:価格が激しく上昇あるいは下落する時に、普段とは違う動きをする
このようなボラティリティの特徴に対応するために用いられるのが ARCH モデルや GARCH モデルです。
また、時系列分析にとどまらず、機械学習を用いたリターン予想や、最適ポートフォリオの構築なども一応金融統計学の範囲には入っていますが、ここら辺は他のファイナンス分野とのオーバーラップもかなりありそうです。
他の金融〇〇との違い
先ほど挙げたいくつかの分野の中でも1番混同されやすいのは数理ファイナンス(Mathematical Finance)だと思います。しかし、数理ファイナンスは数学のうちの一分野で、デリバティブ価格を求める際などに用いられる確率解析を主に扱うイメージです。測度論などをバックグラウンドにしているので、金融統計とはかなり異なるものだと思います(たぶん)。私も学部の時に確率微分方程式を解かされましたが、ただただ数学の問題を解いている感じがしました。これ本当に金融の勉強してるのかな…みたいな。
また、金融工学はこの数理ファイナンスを広げたものとされています。デリバティブプライシングやポートフォリオ理論などがメインですので、実務において用いられることを目的としているイメージです。ちなみに金融工学を勉強していると言うと、フィンテックとかですか?と聞かれることが多いのですが、フィンテックは金融工学とは異なります。あくまでも金融工学は、資産運用や金融取引などにおける意思決定に係るもので、フィンテックは金融サービスを便利にするテクノロジーです。
ところで金融工学と数量ファイナンスの違いは何でしょうか。インターネット上での定義もバラバラですし、そもそも金融工学の修士と数量ファイナンスの修士を見比べても、同じことをやっているように見えます。どなたか教えてくださると嬉しいポムです。
補足
金融データは"伝統的には"時系列データがほとんどと書きましたが、最近は様々なデータの活用が期待されています。1番良い例はテキストデータで、Twitter やブログの書き込み、ニュース記事などのテキストデータを元に株価の予測をするというアイディアがあります。また、融資の際に、SNSでのつぶやきやECサイトでの取引履歴等から個人の信用度を予想するというものもあります。
この様なビッグデータ(オルタナティブデータ)は巨大かつ高次元ですので、伝統的なアプローチでは太刀打ちできないことが多く、新しいアプローチが日々研究されています。
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