見出し画像

【統計学修士の備忘録】#8 時系列分析の基礎

こんにちは、ぽむぽむです。金融統計の試験に向けて猛勉強中です。

前の投稿でも記載した通り、金融統計は時系列分析との関係がとても深いです。

ということで、時系列分析の基本とされる ARMA モデルや GARCH モデルやについて投稿していきたいのですが、その前に今回はまず時系列分析で頻出の概念について記録しておきます。

定常性 Stationarity

時系列分析ではデータが定常であるかどうかが非常に重要となります。定常性とは簡単に言うと、そのデータの統計的な性質が時点によらないということです。例えば時間が経つに連れてどんどん上昇していく株価などは定常ではありません。

ちなみに"統計的な性質が"時点によらない、と書きましたが、この統計的な性質が何であるかによって、強定常性(Strong stationarity)なのか弱定常性(Weak stationarity)なのかが変わってきます。

まず、$${x_{t_1}, x_{t_{2}}, …, x_{t_{m}}}$$からなる時系列データがあったとして、このデータ全てが$${h}$$ずつズレたとしても分布が同じである場合、強定常である(Strongly stationary)と表現します。つまり、

$$
P(x_{t_{1}} \leq c_{1}, …, x_{t_{m}} \leq c_{m}) = P(x_{t_{1} + h} \leq c_{1}, …, x_{t_{m} + h} \leq c_{m})
$$

ということです。

また、$${m=1}$$の場合は$${P(x_{s} \leq c) = P(x_{t} \leq c)}$$、つまり、$${x_{t}}$$は時間($${t}$$)によらず、全く同じ分布を持つということになります。

しかし、この定義ですとあまりに強すぎて、なかなか実際に当てはまるデータはありません。そこで実際には、この Strongly stationary なデータが持ついくつかの性質だけを抜き出したものを用いることが多く、 これは Weak stationarity と呼ばれています。

Weekly stationary なデータとは、以下の性質を満たすものです。

  • $${E(x_{t}) = \mu < \infty }$$

  • 自己共分散関数が時間のラグだけに依存する

自己共分散関数$${r(s,t)}$$とは$${x_{s}}$$と$${x_{t}}$$の共分散のことです。この$${s}$$と$${t}$$の間のラグが$${h}$$、つまり、$${|s-t| = h}$$の時に、$${r(s, t)}$$が$${ h }$$だけに依存している場合、二つ目の条件は満たされているということになります。

実際には、この定常性と言うと単にこの弱定常性のことを指していることが多く、本 note でも特に指定がない場合は、定常性を弱定常性の意味で用いることにします。

また、先ほどの定義にもあった通り、定常な時系列データの自己共分散関数は時間のラグのみに依存するので、ラグ$${\tau}$$を用いて$${s_{\tau}}$$と表すことにします。これは自己共分散列 Autocovariance sequence(ACVS)と呼ばれています。

それでは自己相関については、どのように表せるでしょうか。相関は共分散を分散で割ったものですので、

$$
\rho(h) = \cfrac{r(t, t+h)}{ \sqrt{r(t,t)} \sqrt{r(t+h, t+h)}} = \cfrac{r(h)}{r(0)}
$$

となります。これを先ほどのACVSを用いて表したもの

$$
\rho_{\tau} = \cfrac{s_{t}}{s_{0}}
$$

を Autocorrelation function(自己相関関数、ACF)と呼びます。

ガウス過程 Gaussian Process

$${x_{t_{1}},…,x_{t_{m}}}$$が多次元正規分布に従っている時、$${ \{ x_{t} \} }$$ はガウス過程と呼ばれます。証明はスキップしますが、Weakly stationary なガウス過程は Strong stationary です。(逆は成り立ちません)

ホワイトノイズ

以下の条件を満たすプロセス$${x_{t}}$$をホワイトノイズと呼びます。

  • $${E(x_{t}) = \mu < \infty}$$

  • $${s_{\tau} =0}$$かつ、$${s_{0}}$$は有限で時点によらない

平均と分散が一定で iid な確率変数が連なっているとイメージすると分かりやすいと思います。
ちなみにこれを$${x_{t} \sim WN(\mu, \sigma^{2})}$$と表したりもします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?