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当たり前には名前がある

集中すると周りが見えなくなる、という言葉がありますが自分の場合

集中すると音が聞こえにくくなります

曲を聴きながら作業すると雑音に変わってしまう
それでは勿体無いと音に集中すると、曲に乗りすぎて今度は踊り出してしまう

もういっそのこと踊ってしまうか、音を遠ざけて作業するしか無いのだ

ノーミュージックノーライフなんて言ってみたい人生である

電車に乗った時、音楽を聞くと集中できず乗り過ごしてしまう
なので環境音に耳を傾ける


すると、生活が見えてくる



電車の揺れる音

青空

他人の家

本を読んだりスマホを触る乗客


いろんな生活を目の当たりにする


全く知らない人と隣に座り、
誰かの生活を見ながら揺られ、隣にいた知らない人は知らない駅で降りていく


面白いなと思う

それからというもの、生活音が好きになった
料理を作る音や知らない人同士の話し声、鳥のなき声、雨の音、全てが自分の生活のBGMになった

ずっと個性だと思っていたこれは
APD(聴覚情報処理障害)
という名前があることを知った


そして何よりも、みんなそんなもんだと思っていたから違うことに驚きである

人混みの中で自分に話しかけてくれている人の声と、他の人との声の距離がぐちゃぐちゃになり聞き取りにくいこと


話しているということはわかっているのに、何を言っているか分からず音で捉えていたこと


遠くで鳴った音がすぐ近くに感じること、普通に話しかけてくれている声が映画館での爆発音並みに聞こえて心臓が飛び散りそうになることもあった


毎日がエキサイティングである

耳遠いすわ、なんて冗談で聞き間違いすらも笑っていたが障害なんだと改めて考えさせられる

とはいえ別に悲しい気持ちになるでもなく、説明しやすくなったなと思うだけだった
むしろ生活が前より楽になった


One more time one more chanceを山崎まさよしさん並に気兼ねなく言えるし、テレビや映画を見るとき必ず字幕をつけるようにもなった
字幕、すげー便利ですほんとに

過去にメニエールになった際、片耳が耳鳴りで聞こえなくなり電話対応が何キロも先から糸電話で話しとるんかと思えるほど聞こえにくかった


それはもう白旗を振りたいほどに地獄だった

その戦を乗り越え、集中すればその音のみにフォーカスを当てる技術を身につけた


ただし成功率は五分五分である

今までの当たり前だったことに対して習性も身につけていた

それは、大体の話の流れから相手が何を伝えたいかを妙に察知することである

露骨に気持ち悪くいと感じ出したのは結婚してからである

夫が何を言いたいか手に取るようにわかるのだ

目線や表情、話の流れから多分これだろうという言葉の計算式ができるのだ


突然、うんちの話などされない限りは予測がつく

老後、耳が聞こえにくくなった時に活かせるだろうと期待している

今までの当たり前には名前がつけられていたけど、生活は何も変わらず続いて行くだけ

ただ少し前より詳しく自分のことを知れた

それだけなのだ

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