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産まれた土地

15年ぶりくらいに産まれた土地を訪れた

母親が里帰り出産したので母方の親戚が多く住んでいて、昔はよく訪れた

仲の良かった祖母も晩年この土地に暮らしていたのでしょっちゅう訪れた

親友みたいな祖母だったので亡くなった時には

祖母のいない世界をわたしはまだ35年以上生きないとならないのか

その時間の経過とともに思い出もどんどん薄れていくのだろう

そう思って只々途方に暮れた

ものすごくファンキーで面白い人だった

わたしがオトナになってからも駅の改札までよく迎えに来た
病的にせっかちで到着予定の何時間も前から改札口の側にいる

駅からは徒歩5分
迎えにくる必要なんかないのに
何度そう伝えても改札口にくるのだ

楽しみにしすぎて
あれこれ張りきりすぎて
具合が悪くなる始末なので
到着時間を知らせるのをやめたり
嘘の時間を知らせたりもした

今でも駅に着いたら
改札口にいるのではないかと思ってしまう

墓参りには良く行くけれど
祖母のいない家を見にきたのは15年ぶり

ポストの表札とか置物とか
生きていた頃のまま残されているものが
玄関周りにまだ飾られていた

15年経っても気配は散りばめられているものだ

もう祖母はどこにもいないのに

ここに来たらこういう気持ちを味わうことは知っていた
激しく心が揺さぶられること
悲しい感情が湧き出ること
知っていたからここには来なかった
来れなかった

祖母だけじゃない

あの頃、毎年共に正月を祝った親戚はもうみんな亡くなり
本家があったところはマンションが建っていた

迎えてくれる人のいないこの駅に降りるのはとてつもなく寂しい
改札口で待たれるのがあんなに鬱陶しかったのに
もう待っててくれる人はここには誰もいない

祖母には本当に愛してもらった

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