世界が嫉妬する、ビュールレコレクション。
ビュールレコレクション。
初耳ですね?
アートにあまり興味がない方はもちろん、美術好きでもなかなか目にしない単語です。
今回は、そんな初耳の「ビュールレコレクション」が見られる展覧会のレビューです。
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ビュールレコレクションをご存知なくとも、「印象派」という単語は聞いたことのある方が多いのではないでしょうか?
モネ、ルノワール、セザンヌなどなど、日本でもとても人気の高い作家たちをまとめて「印象派の作家」と呼んだりすることもあります。
そんな人気作家たちの作品を一挙に見ることのできる展覧会が「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」です。
副題についている「ビュールレ・コレクション」、これは、本展に展示されている作品すべてが
スイスの実業家・E.G. ビュールレという個人が収集(コレクション)したものである、ということを表しています。
美術コレクターというのは、法人・個人問わず世界中にいます。
日本だと、たとえばZOZO TOWNの前澤さんは非常に著名なコレクターですね。
そのスイス版がビュールレさん。
(正確ではないけどおおむね正しい理解。それで十分。)
個人が自分で購入した作品を、日本の美術館に貸してくれている。
そういった背景のもと、本展は開催されています。
・・・え?
そういう難しい話は聞いてない?
あ、そう・・・
では今回も見どころポイントを6点紹介します!
①印象派の大家の非常に良い作品が来ている
先述したモネ、ルノワール、セザンヌはもちろん、ほかにもドラクロワ、ドガ、マネ、ゴッホ、マティス、ピカソなどの作品が一気に見られます!
めちゃくちゃ豪華では・・?
日本国内で、いつでもこれだけの大家ばかりを見られる美術館というのはほとんどないです。
しかも保存状態がすごく良く、ひび割れや退色がほとんどない作品ばかりです。
さ・ら・に!めちゃくちゃステキな額に入っている作品もあります!!
普通、絵を購入する場合、額に入れるかどうかは購入した人が決めます。また、どのような額にするかも、購入した人が決めます。
「これ、作品はめちゃくちゃ良いのに、額のチョイスが・・・」という場合もあるので、実は額は非常にセンスが問われる部分だったりします。
本展で展示されている作品は、一点一点大切に選ばれたであろうと思われる額に入っています。
絵の魅力を倍増させているので、ぜひ「どんな額が使われているかな?」という点もチェックしてみてください。
②日本初出展の作品がある!
これまでに日本ではお目見えしていなかった作品が来ています。
この機会を逃すと、次に見られるのは来世かも・・・!?
③なんと言っても、コレクターの愛が感じられる
あるコレクターが集めた作品だけを展示している展覧会の場合、コレクターの愛を感じられるか否か、そこがけっこう重要だったりします。
「愛・・・?ちょっと意味わかりませんね・・」という方!
そのご意見もごもっともなのですが、何と言うか、コレクターの好みがはっきりと反映されている、というのがコレクション展の醍醐味だなと私は思っています。
もちろん自分の好みと全然違うコレクターもいたりして、それはそれで面白いです。
「この人、私とは全く違う好みなんだな~。あんま話合わなそう」とか、そういうことを思ったりすることもあります。
そういう、「コレクター対自分」のやり取りを味わえる。
それがコレクターの所蔵作品展の大きな特徴かなと思います。
ビュールレコレクションの場合、ビュールレ自身が作品収集をしていた時代と印象派の作家が制作をしていた時代が重なっているため
「この作品はまだ世に認められていないけど、自分は好きだ。価値がある。だから買おう。買うことで作家を応援しよう。」
というような、そんな気概を感じられました。
④展示室内のレイアウトが美しい
全部で10セクションから構成される展覧会ですが、セクションごとに壁の色を変えて鑑賞しやすくする工夫がなされています。
しかも、非常にしっとりとしたきれいな色使いがされていました。
印象派の絵たちにぴったり合っていて、その点も見どころです◎
⑤モネの睡蓮が見られる!!!
モネと言えば睡蓮。睡蓮と言えばモネ。
そう言っても過言ではないくらいモネの代名詞と言うべき「睡蓮」が見られます。
しかも!ただ見られるだけではない!
写真撮影OKです!!!
普段美術館に行く機会のある方はご存知かと思いますが、普通、美術館の展示作品は撮影NGであることがほとんどです。
それが本展では(睡蓮一点だけではあるものの)撮影可能!
なんという贅沢・・・
なんて貴重な機会・・・
これを逃すわけにはいきません!
※特に好きなところをアップで撮影しました。筆致がすばらしい。すてき。
⑥展覧会の構成がうまい、そしてキャプションが充実しすぎていてすごい
「美術の展覧会、全然絵のことわからなくて途中で飽きちゃうんだよね」
「絵?見て面白い?」
こういうイメージを持っている、そんなあなたにこそ本展はおすすめです。
本展は、各作家の作品を、「古い時代のもの→新しい時代のもの」という順で配置しています。
こういった配置をすることで、美術の歴史を知らなくとも、現地で十分理解することができます。
作家ごとに年代によって作風が変わったりするところもちゃんとわかります。
そして、作品理解を助ける最強ツール・・・「キャプション(作品解説)」!
キャプションがすごく充実していてびっくりしました。
作家の生涯を紹介したあと、作品の背景などを説明したキャプションがさらについている、という徹底ぶり。
これで美術の知識ゼロの人でも、「ふんふん、な~るほど」とわかるようになっています。
作家同士の交流や、作風への影響など、そういったことも書かれていました。
単なる絵だと思って漫然と見ているだけだと楽しくなくても、
「この作家とあの作家は仲が良かったんだな。言われてみれば、あの絵とこの絵似てるかも?」
などのように、少しずつ自分の中で消化できてくると、美術鑑賞がぐっと面白くなります。
もちろん、「あっこの絵なんとなく好き!」とか、そういうのだけでも感じられれば十分だと思います!
印象派は日本でもファンの多い作家が多いので、毎年日本のどこかの美術館で必ず展覧会をやっています。
また、印象派の作品自体、パッと見て非常に美しい上に難しく感じさせる部分が多くないので
これまで展覧会に行ったことのない人でも、十二分に楽しんでもらえるのではないかと思います。
本展で印象派のファンになったら、また別の印象派の展覧会に行ってみるのもおすすめです!
いろいろな作品を見ていくと、徐々に何かがつかめるかも?
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ここまでわりとまじめに書いたのですが、このエントリーの「世界が嫉妬する」。
ここの意味、全然書いてませんでしたね。
ビュールレコレクション。正直に言います。
めちゃくちゃ欲しいと思う作品がいくつもある・・・!
単純に私の好みとビュールレさんの好みがかぶっているだけ、という可能性もあるんですが
いやはやそれにしてもめちゃくちゃステキな作品がすごく多かったです。
心の底から欲しい・・・買えるわけないけどもっ・・・!!!
世界が嫉妬する、というより、私が一方的にうらやましいと思っているだけかも。
でもそれくらい良い作品が多かったです!
みなさんもぜひ現地で見てみてください。
【展覧会情報】
至上の印象派展 ビュールレ・コレクション
会期:~2018年5月7日(月) ※東京展の後、福岡・名古屋へ巡回予定
会場:東京・乃木坂(六本木) 国立新美術館