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寝ながら学べる構造主義

内田樹/著

身体は政治的領域に投じられる。権力の網目が身体の上でじかに作用する。権力の網目が身体にかたちを与え、刻印を押し、訓育し、責めさいなみ、労働を強い、儀式への参加を義務づけ、そして、記号を持つことを要請するのである。「監獄の誕生」

古くから日本語の用法で言えば、これは子どもを手も足も出せない有様に縛りつけている、ということになる。子ども自身の手で自分を文字通り縛らせているわけだ。さらに、自分でこの姿勢を取ってみればすぐに気づく。息をたっぷり吸うことができない。つまりこれは息を殺している姿勢である。手も足も出せず息を殺している状態に子どもを追い込んでおいて、やっと教員は安心する、ということなのだろうか。これは教員による無自覚な、子どものからだへのいじめなのだ。
「思想するからだ」竹内敏晴

身体を標的とする政治技術がめざしているのは、単に身体だけを支配下に置くことではありません。身体の支配を通じて、精神を支配することこそ政治技術の最終目的です。この技術の要諦は、強制による支配ではありません。そうではなくて、統御されているものが、「統御されている」ということを感知しないで、みずから進んで、みずからの意志に基づいて、みずからの内発的な欲望に駆り立てられて、従順なる「臣民」として権力の網目の中に自己登録するように仕向けることにあります。

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