木曜日連載 書き下ろしチョイ怖第二話『Re:Co゠miu』 第八回
初めましての方、ようこそいらっしゃいました。
二度目以上お運びの方、本日もありがとうございます。
こんにちは、あらたまです。
木曜日は怖い話の連載。
第二話は【御愛読感謝企画】です!!
テーマは『オバケよりヒトが怖い』ですが、ところどころに「クスッ」と口元がほころんでしまうかもしれない仕掛けを施して、皆々様にお届けします。
連載一回分は約2000~3000文字です。
企画の性質上、第二話は電子書籍・紙書籍への収録は予定しておりません。
専用マガジンは無期限無料で開放いたしますので、お好きな時にお好きなだけ楽しまれてくださいね。
※たまに勘違いされる方が居られるとのことで、一応書いておきますと『無期限無料の創作小説ですが、無断転載・無断使用・まとめサイト等への引用は厳禁』です。ご了承くださいませ。
【第八回】
※ ※ ※ ※ ※
RICOのブログは順調すぎるほど順調に更新されている。
一時間と空けずに、古民家の周りの雑木林や雑草伸び放題の荒れ地、近くの小川の写真などを交えて、
『ここを畑にします。まずは土作りかな?』
『ガレージも作るよ!街に買い出しに行くなら、軽自動車が便利だよね』
『川魚が釣れるんだって。私はお肉もお魚も食べないけど。畑の隣に水を引いて、ため池を作るお話もあります。そこで飼ってみようか!』
あくまでも健康的で、それまでの都会的でオシャレなイメージとはかけ離れたキャプションが付いていたが、彼女の投稿に飢えていたファンたちからの「イイね!」がひっきりなしに付いていった。
RICOは本当にたった一人で、このあばら家を改築していくのだろうか?
生活基盤の予定だという畑などを開墾するのに、重機などが入っている様子もないし、手伝っているスタッフも居る気配がない。
「RICOさん、大丈夫なのかな?農業って思ってるほど楽じゃないよ……一人分っていったって、素人にはギャンブルみたいなもんだし」
田舎暮らしで、家業の手伝いの大変さや近所づきあい、お裾分けのありがたさが幼いころから身についているみゅうには、計画の全貌がみえてこないりこの移住計画は不安要素しか見当たらない。
「いいなあ!ロハスだし、ヘルシーだし、見てるだけで癒される」
「何部屋あるんですか?シェアハウスとかにしないんですか?」
「RICOさん、一人で大丈夫です?スタッフの方とかいらっしゃらないんですか?」
ほら、やっぱり。
みゅうは投稿へのリアクションは敢えてせず、成り行きを見守る。
もし、RICOの身になにか異変が起きているなら、誰よりもRICOを応援しRICOを追いかけて、RICOの力になってやれる【この自分】がなんとかしなければならない。
不用意にも試練の場に踏み込んだ彼女を守れるのは――
彼女の【使命】を真に理解し、成就するための手助けができるのは――
暢気にコメントを書き込んでいるコイツらなんかじゃない。
みゅうの親指は、その時、既に送信ボタンを押していた。
コメント欄の一番下。最新の書き込みを知らせるスタンプが、みゅうのメッセージをRICOにいち早く読ませようと点滅していた。
『RICOさん、何をしようとしてるか分かんないけど、みんなを新しいステージに導こうとしてるなら、遠慮なくそう言って?きっとわたしだけじゃなく、力になりたいと思ってる子たくさんいるよ』
「は?なにコイツ」
「あー勘違いちゃん登場」
「うっざ……」
みゅうのコメントに、瞬く間にアンチコメントが連なっていく。
(まったく!これだから何もわかってない、クソ凡人どもめ!!)
スマホの画面の中を不規則なリズムで流れていく全ての文字列を、みゅうは開き切った瞳孔で見下ろしていた。
絶望でもなく、憐れみでもなく。
それは一種の祈りだったかもしれない。
ただただ……文字列をみゅうに投げつける者たちは、RICOやみゅうのような【目覚めたもの】を理解しようとしない者たちは、即座に滅びねばならないと思った。
『……みゅうさん!いつも思いやり溢れるメッセージ、ありがとうございます。実はそのつもりだったんだ!
以前からみゅうさんみたいに熱心に応援してくれているフォロワーさんや、アグレッシブに活動してるフォロワーさんに『このプロジェクトのお手伝いをしてもらえませんか?』ってお誘いしようかなと考えていたところなの。
みんなの力をひとつにして、私の田舎暮らし通信はどんどんパワーアップしていくよ!お楽しみにね』
全身が痺れて動けなくなっているみゅうのスマホに、メールが届いた。
「ううわ……マヂだ?」
※ ※ ※ ※ ※
「ちょっと!今、時間いい?」
みゅうの隣室の彼が、コンビニに買い物に出ようとしたところを、オーナーが呼び止めた。
「あ、ハイ。なんすか?なんか俺、やっちゃいました?」
「アンタじゃないのよ。隣の……ツンケンちゃん、最近あの子の顔、見た?」
特に訝しがることもなく、彼はみゅうの部屋のドアに振り返った。
瞬きをゆっくり、一度。
「そういやちょっと……や、ますますおかしいっすね。元々そんなに顔合わせる方じゃなかったけど、オーナーと話した後も気持ち悪りぃくらい静かですよ。例の大工仕事の音もぱったり止んだし」
「だよねえ。ゴミ出ししてるのも見かけないしさあ。あの子、愛想ないわりにはゴミ出しのルールだけはきっちり守る子なのに」
「おはようございます、いつもお世話になっております」
ハッとして二人が振り返ると、細身のスーツをそつなく着こなした男が、ぺこりと一つ、会釈をした。
「あれ、どうしたんすか」
「あたしが呼んだの」
「なんでまた?」
あのぅ……スーツの男は彼の方をチラチラと見つつ、わざとらしく話を切り出せないような素振りを見せる。
「ああ、気にしないで。オーナー判断でこの子には立ち会ってもらってもいいと思ってんのよ。もしも【二件連続】なんてことになったらさ……この子、隣の部屋だし」
「あ、そういう事情でしたか。ですねえ、隠しておいても隣室と為れば、いずれは知られる話でしょうし」
オーナーは苦々しい顔を隠しもせず、これ見よがしに舌打ちをして見せた。
スーツの男――この物件を担当する不動産屋の男は、ニコニコとするばかりで、オーナーの素振りには気にも留めない様子である。
みゅうの部屋の隣室の彼は、嗚呼こういうのも愛想笑いのうちだわなと、腹の内で呆れた。
都合の悪いことは見て見ぬふりをする。臭い物にはノールックで蓋をする。ニコニコと、然も何もないふりで虚偽の安心を与え、本来の意味での信頼とは似て非なる関係性を一方的に構築していく。
……腐れ縁、ていうんだっけか。
オーナーのような義理と人情を第一に生きているタイプには、どうにもし難く厄介で、避けて通っていてもいつの間にかくっついている質の悪いやつに映っていることだろう。
おそらく、彼に今の部屋を体よくあてがったのも、全てはこのスーツの男の描いた絵図面の通りなのだろう。
(俺は飛んで火にいる夏の虫だったわけだな、たぶん)
煮ても焼いても食えぬタイプと踏んだ途端、急にオーナーの肩を持ちたくなって、だからなんなんすか!と彼が言いかけたその時。
大家は彼の襟首を掴み、ぐいっと鼻先を寄せて囁いた。
「ちょっと前に話したでしょう。ここの部屋、前にも行方不明者が出てるって。その時の感じと似てんの……昨日、家賃の振り込みの日だったけど、案の定入ってなかった。まさかとは思うけどさ」
「それってまさか?」
「アンタが決めていいよ。更新したくないなら、今すぐここで不動産屋と話を進めて、引っ越しちまえばいいさ。そん時はアタシも交渉手伝ってあげる。この担当にはこれ以上煮え湯を飲まされんのは御免だし?こっちから釣銭を出してやってもいいくらいだからね」
【第九回】に続く
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それでは。
最後までお読みいただいて、感謝感激アメアラレ♪
次回をお楽しみにね、バイバイ~(ΦωΦ)ノシシ
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