木曜日連載 書き下ろしチョイ怖第二話『Re:Co゠miu』 第二回
初めましての方、ようこそいらっしゃいました。
二度目以上お運びの方、本日もありがとうございます。
こんにちは、あらたまです。
木曜日は怖い話の連載。
第二話は【御愛読感謝企画】です!!
テーマは『オバケよりヒトが怖い』ですが、ところどころに「クスッ」と口元がほころんでしまうかもしれない仕掛けを施して、皆々様にお届けします。
連載一回分は約2000~3000文字です。
企画の性質上、第二話は電子書籍・紙書籍への収録は予定しておりません。
専用マガジンは無期限無料で開放いたしますので、お好きな時にお好きなだけ楽しまれてくださいね。
※たまに勘違いされる方が居られるとのことで、一応書いておきますと『無期限無料の創作小説ですが、無断転載・無断使用・まとめサイト等への引用は厳禁』です。ご了承くださいませ。
【第二回】
半月もすると、みゅうの部屋は段ボール箱が山のように積まれ、足の踏み場にも苦労する有り様になった。
実家に居た頃よりも明らかに運動不足で、体重とニキビも増えたが、自撮りはしない主義だし必要に迫られたなら(そういうシーンは未だやってくるタイミングではないけど)便利に盛れる加工アプリがあるから気にはしていない。
玄関のチャイムが、ピンポンピンポンピィンポーーン……とけたたましく鳴った。
この鳴らし方は『青いリュックサックを背負った配達人のイラスト』をロゴマークにしている、あの配送業者だ。チャイムの鳴らし方といい、荷物の雑な扱いといい、配送センターに『アドバイス』の電話を入れたはずなのに。
「ちっ……」
ドアの外に聞こえてればいいのになと思いつつ、みゅうは舌打ち交じりにドアを開けた。
「ハンコお願いしまーす」
イラストのままのような配達人が、さも面倒臭いといった表情でみゅうに段ボール箱を押し付けてくる。
「お疲れさまでした」
「またお願いしまーす」
印面をわざと天地逆さまに押したのに、それを確認もせず、にこりともせず帰っていった……一体全体、何を『お願い』してるというのだろう?
みゅうにとって、魂の入っていない仕事、即ち『やる気が起きない、いやいややっている仕事』は全て【前世の罪】による罰である。あの配達員のいい加減な仕事ぶりはまさにそれで、前世で相当の悪事を働いたに違いない。
しかし、そのまま感謝も何もなく一生を終えてしまうならば、来世でもまたその罰を受け続けなければならない。そういう人々に感謝の心を呼び覚ましてやり、永遠の刑罰から解き放ち、生き甲斐に溢れた輝かしい人生へと導くことこそ、みゅうの【使命】の最終目標であった。
「わたしの『アドバイス』を無視しても、良いことなんてないのに」
まあいいわ……と、彼女は気持ちを切り替えた。
それよりも、だ。
みゅうが導かねばならないのは配送業者だけではない。それよりももっとたくさんの、救いを必要としている人々がいるのだ。
外の、映えないベランダと住宅街が映り込むのどうしても阻止すべく、そして例のウザい街灯の余りある主張をへし折ってやるべく、カーテンは早々に取り付けた。インテリアショップで吟味に吟味を重ねたお気に入りだ。鼻歌交じりに閉めれば、パステル調のチューリップがふわりと部屋中に花開いたようで、気分がアガる。
その他の生活用品が入っていたり実家から当てつけのように送られてくる段ボールは、必要ならば開封するがほとんどがリビングの隣の冴えない和室に積みっぱなしになっている。食事は近所のコンビニで買った方が安いし失敗も無い。流行りのデリバリーサービスやネット通販も便利だ。
スマホがあれば、何でも揃う。何でもできる。山と田畑に囲まれて、奇妙な決まり事の中で不自由を強いられる実家暮らしとは大違いだ。
だから――優先すべきは、ただ一つ。
届いたばかりの段ボールを床に置き、梱包を解いて、なるべく生活感が出ないように中身をディスプレイして、写真を撮ってはSNSに投稿する。
『これってRICOが昨日アップしてたヤツじゃない?いいなあ!』
『私もすぐにサイト見たんだけど、売り切れてた』
RICOの熱心なファンたちが、みゅうのアカウントにも目を通している。
彼女たちよりも先に、RICOが紹介する新商品をアップすることで、みゅうの存在はよりRICOに近づいていく……真の使命へと【道】を付けてくれたのが師匠ならば、RICOは同じ使命のもとに生まれた大先輩といったところだ。SNSを使って影響力を拡げたRICOは、今や輝かしく人生を謳歌する女の子たちの憧れを通り越して夢や目標そのものに見えた。
「師匠はどうやって使命を果たすかまでは教えてくれなかった。それを見つけるのもわたしの使命だからって……それで、ちゃんと見つけられた。わたしは今、絶好調なんだよ師匠」
たった今したばかりの投稿に、続々と反応がある!
(イイネしてくれた!RICOさんのファンの子たちが、わたしの投稿に!!……しかも私がアップした、RICOさんもまだ紹介してない、昨日アップした商品を早速取り寄せてアップしてる!!!)
RICOが最新の投稿をした通知がポップアップされた。
早速チェックすると、今まさにみゅうがアップした商品をRICOが紹介していた。
「え、うそでしょ……嬉しいいい」
よっしゃああああああ!!と、思わずドスの効いた声で叫んでしまい、隣の部屋からドスンと一発壁を叩かれた。
夜になるとギターを弾きながら大声を張り上げて何やらがなりたてている部屋の方だ。声の感じでは同年代の男性のようだが……そのうち彼にも救済が必要になるかもしれない。
みゅうの投稿に遅れること15分ほどのことだ。RICOがみゅうの投稿を見て何らかの影響を受けたと考えるほど、みゅうも馬鹿ではない。しかし、だ。
「わたし……RICOさんのコメント欄で話題になってる……」
『このデザイナーさん、最近いろんなところで話題になってますよね!さっきも【RICOさんファンの子】が紹介してましたよー』
『RICOさんも注目してるんだ……あーさっきやっぱりポチッとくんだった』
『今、デザイナーさんのウェブショップ覗いてきました。sold out続出~。RICOさん流石ですね、感度高い!』
くふくふと含み笑いをしながらも親指はスクロールを止めない。
憧れのインフルエンサーを取り巻く、イケてるぶった凡庸なオンナの子たちを出し抜いてやったのだ。真の使命に目覚めているみゅうに、彼女たちが敵いっこない。
同じ使命を持つRICOならば、それを判っているはず。だから今こうやって――みゅうは胸の高鳴りが肉体を内側から押し広げ、宇宙と一体になってしまうんじゃないかと錯覚しそうになった。
それほどまでに、今、人生の目標に向かって着実に歩んでいる……その新たな手ごたえをひしひしと感じていた。
【第三回】に続く
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それでは。
最後までお読みいただいて、感謝感激アメアラレ♪
次回をお楽しみにね、バイバイ~(ΦωΦ)ノシシ