【AC6】ルビコン珍道中【感想】
このたび、AC6の三種存在するルートをクリアしました。
ひととおりプレイしたと思えたので、感想を書きます。
シリーズは本作以外未プレイ。ネタバレをします。ご注意ください。
1.終わって思ったこと
レイヴンの火→解放者→賽投の順でプレイ。順当だね。
1.1.レイヴンの火
燃え残った全てに火を点けたほう。
オーバーシアーの意思である、争いの火種になるものをこの世から消してしまおうという発想によるもの。
一度生まれたものは、簡単には死なないというウォルターの重い一言から察せられるけど、もはや物理法則を凌駕している資源のコーラルに人間が可能性を見出してしまう以上争いが止まらないのであれば、そもそもそんなヤベーもの消費し尽くして争いをなくしたほうがいいと彼は果断したはずだ。実際あんなのヒトの手に負えないものだと思う。
技研はコーラルという「火」で高度な技術発展を目指したが、やはり戦火をも誘ってしまった……プロメテウスの火のエピソードみたい。
ついでに言えば、ギリシャ神話においてゼウスはプロメテウスから火を貰っちゃった人間に対して罰を与えるべく、ヘパイストスに「女性」を作らせ、男性しか存在しなかった人類はそんな神々に魅力を与えられた女性という存在に振り回され、女難を経験するなんて神話らしいエピソードがあるんだけど……火たるコーラルのエアちゃんもセリアも多分女性で、多分男性の621とドルマヤンは彼女らに唆された……は言い過ぎか。
エアちゃんか……あのあと621って再手術しない限りエアちゃんと交信ができる状態なんだろうか。あのエア機体が破壊されようが、621に対する抑止力がなくなっただけであってエアの思念は消えないのではと……
条件はともかく交信のメカニズムがいまいちわからなかったけど、コーラルを介してC兵器を動かしていたのであって、普通のAC乗りみたいに肉体が入っているみたいな食らい判定はなさそうだし。
エアちゃんがコーラルとして群れから独立した個だとすれば、621の脳内に灼きついたままともとれるけど、そういえばこの人って人じゃなくて脳波に干渉するようなCパルス変異波形なんていう代物だから……彼女の根源たるコーラルを完全燃焼し尽くしたのならエアも燃えカスになってしまったか。
このルートは数多の人々の夢と生活を奪う大量虐殺のエンディングになったけど、長い目でみると人類クラスでそこそこ長い期間平穏をもたらせたんじゃないか。したがって、大戦犯621万歳!! レイヴンよ永遠に(悪い意味で)
1.2.ルビコンの解放者
共生を誓ったほう。
レイヴンの火が可能性という不確実性を潰そうとした道だとしたら、こっちは逆に可能性に賭けてみようという、良くも悪くも一寸先が闇のオチ。
エアちゃんとしては同胞を見殺しにしたくないってのもあっただろうけど、コーラルとかいうドンドン増えてくやべー代物を今後ルビコニアンひいては人類はどう扱うのかとか、企業勢力は衰退しても大量のコーラルを擁するルビコン3は再び戦場になりそうなのとか、オールマインドはまだコーラルリリースを狙えそうだから暗躍するであろうとか、大局的には問題山積みな茨の道。
エアや惑星土着の人はとりあえず目先の大事なものを死守できたから嬉しいだろうけど、それは飽くまでもミクロな視点だし。また、これほどの偉業を成し遂げてしまった621の存在も怖い。ウォルター亡き未来、野良犬はどこへ向かうのだろうか。ルビコニアンに帰化とか? うーん。
1.3.賽は投げられた
オールマインドのエンブレムが三角形なのは第三の選択肢って暗喩も込めた意匠だったのかなーとか考えてたら……
後半にさしかかり、急に人間を見下し始める人間くさいオールマインド!
圧倒的人選ミス、イグアス!!!!(誉め言葉)
ゲーム中で表現された部分では驚きと笑いを隠せなかったものの、コーラルリリースを果たしたこのルートは、行き詰った現状の打破みたいな感じでとても興味深かった。SFものは、こういうお話が救いというか一つの結論として存在するのかなと痛感した。
『幼年期の終り』に端を発するといって過言ではない「何らかの導き手に依る、人類規模の統合・偉大なる進化」がこのルートではAC6的に描かれたんじゃないかな。
傭兵支援システム(AIなのかすらわからないけど……)でしかなかったオールマインドは、多分自分の意思をコーラルごと宇宙に放流して、実際のエンディング中のアレみたくヒトをACに進化させたかったのだろうな(と思うと「換体パーツ」という説明文に納得ができる)。
だけど、ただのキーに過ぎない621とエアにトリガーを引かせたくないから始末しようと彼女(?)は思ったのに……できなかった。イグアスとかいう飼い犬に手を噛まれ、その狂犬も野良犬に下されてしまった。傭兵支援システムが大きい夢をコーラルに抱いたばかりに、度重なる不測の事態によって計画の一番オイシイところを621とエアに奪われたのだ。か、かわいそう……
みんなはポンコツとかドンマイなんて言うけど、個人的には出来ないなりに努力をして頑張ってアレコレ手を尽くしたけど全然報われなかったあわれな人だと感じた。悲しいことに人間を見下すシーンとかはとても傲慢だけど、彼女がもしAI、つまり、ヒトの被造物だとしたら、オールマインドはよくできたコピーだなとも。神が自分を模して作ったのが人々だったかのように……
で、オールマインドは『幼年期の終り』でいうところのオーバーマインド役になろうとしたんだろうね。名前も似てるしね……ともあれ、人類を統合して、その主概念として在ろうとしたのに…………
オールマインドは、争いばっかりする進化の袋小路に追い込まれた人類を、コーラルというチャンスに載せたろ! と躍起になったが、621とエアがコーラルリリースを遂げてしまったために皮肉にも「お膳立てした奴」なオーバーロードと同じ役割となってしまったというわけ。
オールマインド(以下AM)は、わざわざオーバーシアーのやり方も解放戦線のやり方も否定する言動を残していて、コーラルを主軸に据えたこれらの堂々めぐる闘争に揚棄をしようとしたんだろうな。
それでこんなにいっぱい心血注いだプロジェクトだったのに……AMさんは人間くさいところも含め、イグアスと結合したばかりに両性的な存在になったり報われなかったりと私の大好きな要素が詰まっているので忘れられない存在になりました。
で、たぶん人類は旧い肉体を捨て、ACになったんですかねえ……
とことんコーラルっていうモノがエクストロピーじみてて恐ろしい。
2.気になった登場人物
2.1.スネイル
621目線で彼を見たとき、どうしてもこの人は気持ちよく殺せる奴だと思った。ウォルターの愛犬を駄犬と呼ぶわ捨て駒にするわ、高慢ちきだわヒス起こすわ……極めつけはびりびりバックアタック。初周回時クソほど苦労して倒したアイビス戦のあと、一体この技研都市でこの先どうなるんだ?! って胸躍らしてた所にチクリと半畳を、もといスタンニードルランチャーを入れられた時は「いつか復讐できるんだろうな……」と、いっそ冷静でいられた。すがすがしく。
思えばこの人、どのルートでも621の手で殺害するチャンスがあるね。終盤一緒に行動していそうだったフロイトはアイビスの火ルートでしか戦えなかったが……そういえばスネイルさんがバルテウスごっこしてる間何してたんだろう。ラスティにヤられたか。
ともあれ、バルテウスネイルの断末魔はスウィンバーンを凌ぐのがいい演出だなと。盛大な死を与えたのち、「そういえばコイツも621目線で見ればクソ野郎だけど、私利私欲と常に戦いながら企業の利益を第一線に考えて敗北した哀れな男なんだな」と思うと愉快。
2.2.オキーフ
スッラに次ぐ止めておけおじさん。三周目終盤になるまでV.Ⅲの存在を忘れていた。
コーラルリリースに夢を見るな、と具体的に忠告してくれる有数の存在なものの、人のまま死ねとか言っているので、オールマインドの企みが成就したらどうなるのかわかっていたのね……どう知り得たのか。
第9世代強化人間であり、しかしかつてはオールマインドが必要とした第4世代強化人間だった可能性があるという匂わせが妙だ。オールマインドから計画の仔細を聞かされるも賛同しかね、離反をしたという順序なのかな? 621に命を狙わせるほどであれば結構がっつり計画に携わっていたのでしょうか。
でもなー元々どういう性格だったんだろう。登場シーンが少なすぎるんだよねえ……この人に限った話じゃないか。ただエア曰く厭世主義者のように見えて今を必要としているっていう評がひっかかる。
人類の織り成す現実に辟易しているなら、むしろコーラルを介して意識を統合してしまうような……進化? を経て超越的な自由と秩序を得られるコーラルリリースに賛同しそうなものではあるけど。結局怖くなって人の道を選んだのかもしれない。
2.3.ラスティ
目的の為ならなんでもするコウモリ野郎……あれ? 621もそうじゃね?
似た者同士、解放者ルートではこの裏切者とやたら強い傭兵621によってアーキバスは一気に傾く羽目に……
この人にとって目的が同じであろうがそうでなかろうが、陣営や個人というものは基本的にどうでもいいみたいで、レイヴンの名を冠する621を戦友と称して有益な情報をお漏らししてくれたりしたのは自分の目的の為で、その無視できない戦力の621が敵になりそうなら説得とか特に無く排除しようとするので愛着ガバガバ野郎というよりは愛着ヒエヒエ野郎だったかな。いや、一周して愛着ガバガバだよなそれは。
にしても滑空してコチラのそばに着地してくる描写一番多い人だった。
物理的距離と人同士の親密感ってそこそこ直結しているのと、そういう時彼が進んで協力してくれるシーンが多かったから、心術に長けるとも言えるか。
賽は投げられたシナリオではナレ死はおろか、気が付いたら死んでる人だった。オールマインド戦でちょっと顔を出すから、多分死んでいるよね。"残りカス"になった挙句「どれだけ殺すつもりだ」って皮肉を浴びせてくるの好き。己の目論見が潰え、621に選んだ言葉がこれ……いいね! 得意そうな皮肉も枯れてる風で。ただ強いだけの621を危険視していたのを思い出す。
2.4.ペイター
エンブレムや名前がアレってことは自分の二面性を自覚・自認しているって解釈でいいのかな? だとしたら余計食えない奴である。
出世欲も、道草を食いまくっているものの根っこは生存本能なので、生きる為に戦っていると云えば本作の登場人物っぽい気がする。上司の死を悼みつつ喜ぶという奇人なところも含めて。
2.5.メーテルリンクと五花海
かわいそう。ウォルターにも同情されるほど。雑死。
2.6.ミシガン
遠足アイスワーム討伐の際例の武器を持ってこなかった時の怒号が印象的。ヴォルタをはじめ雄野郎だらけの部下に慕われる鬼軍曹にして、英雄として残酷な立ち回りをした過去(ファーロンからベイラムへの鞍替え)を持つも古巣を気にかけている側面がある、といったコテコテなキャラクターだけど、死に際まで漢すぎて逆にこの作品では異彩を放っていた。口調すら崩さず、裏切りや豹変が多い人物のなかで一切のブレを見せなかったから、意外性が薄いという意外性があった。
まあ、部隊ごとラスティに殲滅されたのは意外だったけどあれはラスティの仕事人っぷりが意外なだけだ……
2.7.ヴォルタ
彼は本編で戦えるのが二周目であるという点、どんなミッションの進め方でも序盤の壁越えのエピソードで戦死してしまうのが彼のアイデンティティだろうか。
確かに壁越えはミッションとしても高難度だけど……きっと解放戦線側から、それなりの脅威と見做されてジャガーノートの集中砲火を受け続けたに違いない。だって……マイ621は、アリーナのヴォルタに10回くらい殺されるほど苦戦したんだから。そう思うとヴォルタの設定的な強さって中堅クラスと上位クラスのAC乗りのボーダーラインなのかなと。
悪友であるイグアスとは付き合い長かったんだろうな。裏路地の博徒か。多分この人たちは連れション800回くらいはしてそう。エンブレムすらお揃いのカンジだし。
2.8.イグアス
序列数をヴォルタと足し算すると9になるってんで、片割れを失った彼は壁を越えられなかったのだという言説に泣いた(ACシリーズは9というナンバーに強い意味が付与されるみたい)。
ふ~んと思ってアリーナのほうの序列を調べたら19。なんか惜しい。ラスティは9。そのまんまだった。調べたら29位は最下位のインビンシブル・ラミー。なんともいえねえ。
イグアスくんは、大富豪でいう所のスペードの3だったなーと思った。誰にとっても無視できない621はさながらジョーカーだけど、唯一パっとしない実力の彼が最後の脅威として楯突くことができたから。否、まさかとすら思わせないタイミングで再登場したんだからそれ以上か。
燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんやを地で行く奴でオールマインドの壮大な計画や思惑なんていざ知らず、手駒になってでも621にギャフンと言わせたい負け犬精神ひとつで干渉波を巻き起こし(?)621と二人っきりになって喜ぶ変態。そう考えるとAC6らしいキワモノの一人ではあるか。彼の熟成された、矜持と呼ぶにはあまりにもちっぽけな意地っ張りプライドが彼の孤独な人生を完成させていると思うとあわれだ。
悪友を失って、同時に(恐らく初めて)憧れる事のできる人間を見つけてしまった事実は素直になれないイグアスにとって苦心そのものだったのではないのでしょーか。アイスワーム討伐直後の野良犬野郎が決めやがった発言は敬意と焦りを隠しきれてなくて好き。本当はそんなスゲー奴を超えたかったんだよね。
2.9.レッド
本編で殺し合いができるのはいつだろうな~♪
いやシチュエーション熱っ!!!! 最高だった。敗残兵狩りに遭ってて、そんな敗残兵を狩ろうとしているアーキバス部隊ごと621に狩られてかわいそうだった。
ミッション後、アリーナのテキストを読み直して複雑な気持ちになった。
そしてセリフのパターンが4つほどあると聞いて、リプレイミッションを静かに押下した。
出番は結構少ないけど印象に残った。まっすぐな人には厳しい世界だったよね。
2.10.訓練生
二周目、ゲームに慣れてきた621がするへんてこアセンの最初の犠牲者になりがちな人。
かわいそう。
2.11.リング・フレディ
男娼という人物紹介と、エンブレムの儚さに心奪われた。
(いわゆる肛門性交のメタファーだというのが有力ですが、個人的には同性愛特有の「未来を結実しない情愛」を暗示しているような気がしてならなく切ないです)
でも出番が少なすぎない? ドーザーじいさんのドルマヤンのオキニってのが生々しい人ですね。ほかの同志と距離感あるところとかも。
この人を倒さずに認識範囲外に逃げたり再度接敵したりする時の反応がかわいいので何度もやっちゃう。
2.12.六文銭
やたら強かった一宿一飯の恩義おじさん。アリーナでもミッションでも苦戦した。特に後者ではちょうど敵ACがリペアキット使い始める頃だったから……
2.13.シンダー・カーラ
50年前の人物なんだったらこんなに声若いわけなくない? AIか何かか? と思ったらそれは違うみたい。変声器でも使っているのか。
技研絡みなだけあって技術力と知識をもってストーリーを動かしていた印象。
この人の寄越すミッションって護衛対象があるものばっかりなんだけど、悉く初見でミスった思い出があるので周回するたび苦い気持ちでした。
2.14.チャティ・スティック
ザイレムと一体化したあと、自身がバスキュラープラントに激突するまで一体どんな「笑える」冗談を吐くのだろうか……とずっと陰鬱なことを考えてた。レイヴンの火ルートでは、フロイトにあっさり破壊されてしまうのが心悲しかった。
2.15.ハンドラー・ウォルター
殺し合ってる最中に、そんな優しい声で621を呼ぶなよ……
今まで裏方で指示をしていた人が、敵にガッツリ洗脳されて、おそらくACの部品レベルにさせられて前線に放り出されて主人公と死闘をさせられるっつーエグい場面なんだよね。無理やり駆り出しているようで、アーキバスからすればちょっとした実験装置みたいな扱いされてて残酷。
いやー、この人の「一度生まれたものは、簡単には死なない」ってセリフがすげー好き。つーかこの世界観で強化人間を捨て駒や部品扱いしてないのも苦心が伝わって好き。もっと言えば任務中の指図も、どことなく老婆心が洩れている雰囲気を醸していていい。父性のあるキャラクター像だったと思う。
2.16.エア
めっちゃ強かで超優秀な人だった。色々揃ってて怖い人だなと実感した。
押しかけ女房的なノリでレイヴンレイヴンって迫るけど、思想を違えたらちゃんと敵対するし、肝が据わってるよね。
オールマインドと一緒で何気に正体がよくわからないよね。
2.17.オールマインド
この人も先に述べた通り、とても興味深いキャラクターだったなと。結局断定がしづらい存在だった。だいいち実体ある人物にすら立ち絵とか無いもんねこの作品。それがいいんだけど。
そういや二周目開始時、なんか帰還を歓迎しますってセリフを意味深げに言ってたのはなんだったのだろうか。もしメタ的な二周目とかを感知している人物だとしたら、AC6バースで何度も何度もコーラルリリースのために努めているのかと思うと猶更健気である……
3.おわりに
名作でした。フロムソフトウェアありがとう!!!
早くDLCで追加ストーリーでも出してくれ!!! それまで逆関節アセンでぴょんぴょんバッタさんしてるかね、、、