ハトホル神殿の天体図の夢見
犂とオオカミ、天文考古学の視点
デンデラのハトホル神殿は、エジプト文明最後の時代(紀元前305~30年)に建てられたもので、その東側の礼拝堂の天井には天体図がありました。(現在はルーブル美術館にある)
その天体図には、カバ座やワニ座など、古代エジプト特有の星座のほかに、古代メソポタミア、バビロニアから入ってきた星座や黄道十二星座なども合わせて描かれています。
天体図の中心には、犂に乗ったオオカミが描かれ、これは現在はどの恒星に当たるのか不明とされているそうです。また犂とオオカミの下に描かれている一反木綿のようなものは、牡牛の足で、北斗七星を表しています。
またメソポタミアの粘土板ムル・アピンには、星々について書かれている部分で、1番目に犂、2番目にオオカミについて書かれています。ギャヴィン・ホワイト氏によると、犂は社会を表し、オオカミは世界の秩序を破壊するものを表していると考えているようです。
また現在の研究者たちの考えとしては、犂とオオカミにあたる恒星は、さんかく座の恒星と考えられているようです。(『星座の起源』近藤二郎著 参照)
北極星について
私は恒星占星術や精神世界を学んでいるので、その視点から見ると、恒星意識が降りてくることで世界が変化したり、またメソポタミアの天文学のように惑星の動きが地上に反映されることなどを考えるので、その時代の北極星が何であったかは重要で、図像の中心にあるのは当然北極星ではないかと考えます。
北極星は歳差運動により約25800年かけて変遷してゆくので、エジプト時代の北極星はトゥバン(りゅう座)です。この時代、恒星や惑星と切り離せない文化の中で、粘土板の一番最初に書く星がさんかく座ということはあり得るでしょうか。これは単に犂の形を当てはめたにすぎないように思えます。
ハトホル神殿の天体図は、エジプト文化とギリシャ文化が混ざったヘレニズム時代のものですから、バビロニアの粘土板に描かれている犂とオオカミは、ハトホル神殿の天体図の犂とオオカミに違いないはずで、天体図の中心にさんかく座を描くなどあり得ないと思います。
では明らかにこれはトゥバンなのかというと疑問もあり、神殿の建てられた時代は紀元前305~30年頃で、クレオパトラ7世(前69~30年)も関わっており、この頃はトゥバンは既に北極星の座を退いて、コカブ(こぐま座)が北極星となっています。しかしエジプト文明は明らかにトゥバンの影響のもとに発展したもので、この辺りについて、天体図にはどのように反映されているのか分かりません。
コカブなのかトゥバンなのか、なぜ粘土板には犂とオオカミで分けて書かれているのか。
そこで犂とオオカミは何を表すのか、夢見してみました。
夢:自殺するユーチューバー
登録者数1000万人越えのユーチューバーが自殺すると言っていて、これは水面下で何度も話し合って計画された方針であり、家族もすでに了承していました。
ユーチューバーはピストルでお腹を撃ち、死ぬまでにかなりの時間を要しました。なぜ頭を撃たなかったのかと聞くと、周りの人と最期の時を過ごすためと言っていました。夢の中の私は若く、このユーチューバーと付き合っていて、苦しみながら弱ってゆく姿を見るのは辛かったですが、でもみんなのために最期の時間を作るのは流石だと思っていました。
最終的に、ユーチューバーは這って川までゆき、川に入って流れに身を任せ、流れてゆきました。
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人気ユーチューバーの自殺は、頂点にいるものが座を譲って去ってゆくことであり、やはりこれはトゥバンを表していると思いました。不動の位置から徐々に下りてゆくトゥバンを、エジプトの人々は自分たちの栄枯盛衰と結び付けて見つめていだろうと考えると、夢の体験と相まって心が揺さぶられました。
犂に乗ったオオカミにはそのような意味も込められているわけで、犂は大地を耕して繁栄をもたらすトゥバンであり、ギャヴィン・ホワイトの説ではオオカミは世界の秩序を破壊するものらしいので、これをトゥバンの世界を壊すコカブと考えることもできます。
しかし、オオカミが破壊者という考えは、偏った考えのようにも思えます。
粘土板ムル・アピンには、「荷車」と「天の荷車」という二つの星座について書かれていて、これは北斗七星とこぐま座に該当するようなので、こぐま座のコカブをオオカミとするかどうかは、今回の夢見だけでは疑問の残るところです。
犂は流れゆく川であり、オオカミをユーチューバー(トゥバン)と見ることもできると思います。
どちらにしても、夢見者は地上から見た図と恒星の当てはめをしようとすると、地上との関係に繋ぎ留められてしまうと思うので、詳細に答えを出す必要はないと思います。
私は今回の夢で、天体図の中心には過ぎ行くトゥバンが描かれているのだと知っただけで、十分に心打たれ、夢見者としてはこれ以上は何も追求する必要はないと感じました。
近藤二郎氏は、『星座の起源』の本編の中では語っていませんが、巻末に差し込まれた2020年の対談では、犂とオオカミが北極星ではないかという説を、今後研究すると話していました。皆が納得する証拠や根拠を出さなければいけないのは大変なことですが、さんかく座は明らかに間違いだと思うので、今後のご研究を陰ながら応援したく、また楽しみにしています。