(外国語報道を読む)ハンガリーにとってテュルク評議会は平和の集い
オルバーン首相はサマルカンドにてテュルク評議会を「平和の集い(békefórum)」として見ていると発言。また、「欧州ではウクライナの平和を望む声は緊張関係を悪化させようとする人々の声よりも静かではないか」とも発言したとのこと。また、テュルク評議会のメンバーはトルコの食糧危機などの調停活動においての活躍に大きな感謝を送ったとされる。
ハンガリーはテュルクなのか??
ちょっと待て。テュルク評議会においてハンガリーはオブサーバーという立場を占めるが、言語の知識があるものならば誰しもハンガリー語はテュルク諸語ではなくウラル諸語の一つであることは知っている。一定の知識があるものならば、なぜテュルク諸国の群れにハンガリーがいるのか疑問に思うはずだ。例えばラーザールは「言語学はもはや科学ではない。全てブダペストの政に過ぎない…オルバーン氏がいる限り、ハンガリー語は公式にテュルク諸語なのだ」と辛口に評している(1)。言語学者が聞けば卒倒しそうな内容だ。
フン帝国の末裔
しかしながら、二〇〇八年にハンガリーが評議会に加盟したように、同国は自信がアジアに起源を持つ民族国家であることを掲げることを隠していない。ハンガリーが「テュルク系の」国家としてテュルク評議会に関与していきたい本当の目的はよくわからないが、表向きには民族主義の影響が見え隠れする。
実はテュルク評議会に加盟した頃から首相はオルバーン氏だった。飯田によれば、オルバーンはかつてはソ連に対して避難をする民主派の政治家だったが、権力を握り変った(2)。現在では、ヨーロッパやウクライナの味方というよりもロシアのプーチン政権、中国の習近平政権寄りの人物という印象が強い。また、民族主義的な姿勢を強く打ち出し、例えば国外のハンガリー人にハンガリーの市民権を付与するなど、ハンガリー人を少数民族として掲げるウクライナなどを以前から刺激してきた。
ラーザールによればオルバーンはハンガリーはフン族のアッティラの末裔であり、国民はフン・テュルクの出自とテュルク系の言語と関係していることを誇りに思っていると発言している(1)。
ハンガリーの政治家が自身をテュルク民族としての誇りを誇示することは民族主義的観点に基づいた擬似科学に過ぎない。二〇二二年の八月にも「大クリルタイ」と評したイベントをテュルク諸国とハンガリー国内で行ったが、評議会議長のビナリ・イルディリム(Binali Yıldırım)も同イベントのスピーチで「フン帝国の統治者であるアッティラの孫たちを愛している」など、歴史的装飾に塗れたスピーチをしているようだ。
オルバーンの耳はフンの耳?
ハンガリーのオルバーン首相(Orbán)は以前からハンガリーのウクライナ戦争への関与に対して否定的だった。「欧州ではウクライナの平和を望む声は緊張関係を悪化させようとする人々の声よりも静かではないか」という彼の発言から、自分達の思想にあった世界観を共有した人たちの声のほうを重点的に聞ける耳を持っているようだ。例えばG7.huによれば今年の6月から8月にかけてブタペストへ電車で逃げてきたウクライナ人の数はおよそ二万人とされている(3)。
だが、オルバーン首相の足元にいるはずの人々の声がハンガリー国外の、どこにいるかもはっきりしない"緊張関係を悪化させようとする人々"の声より小さいとは思えない。耳だけはフン族の遊牧民族の血を強く受け継いで、ハンガリーの外に彷徨い出ているのだろうか。評議会が平和の集いとオルバーン首相が評してもそれはハンガリーの民族主義者たちが見たい平和しか見れない舞台なのであろう。
参考
(1) https://hungarianfreepress.com/2018/11/25/hungary-is-now-part-of-the-assembly-of-turkic-speaking-countries/
(2) https://rkb.jp/article/99588/
(3) https://g7.hu/elet/20220911/kaoszbol-zurzavarba-csoppentek-az-iskolakezdessel-a-magyarorszagra-menekult-ukran-gyerekek/
"Ez alapján csak a nyári hónapokban vonattal 14 ezer ukrán érkezett a háború elől a fővárosba, harmaduk gyermek volt, és összesen közel 20 ezren igényeltek 30 napos tartózkodási engedélyt"
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