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短冊CDディスクガイドと謎の作曲家・平成太郎

7月に「短冊CDディスクガイド 8cmCDマニアックス」なる本がDU BOOKS(ディスクユニオンの出版部門ネ)から発売されました。

短冊CDディスクガイド

80年代末からレコードのシングル盤に取って代わったシングルCDの規格、8cmCDあるいは通称:短冊CD。
こと日本において90年代という最も音楽が売れた時代に展開され、90年代の終わりとともに消えていった、平成レトロ以外の何者でもないそんなCDの名盤をまとめた初の本格的ディスクガイドです。
監修はミュージシャン・DJのディスク百合おんさん。
また執筆者の中にはいつもTwitter拝見して楽しませていただいてますプロ100円CDディガーのデラさんや、ファンシー絵みやげ収集家の山下メロさんなど素晴らしい皆さんが参加されております。

肝心の内容についてですが、総数600曲のうちほとんどを今や顧みられることのない企画物、マイナーアイドル、マイナーアニメソング、芸人ソング、お色気歌謡などが占めています。
中には山下達郎“アトムの子”とかブラビの“Timing”なんかもラインナップに加わってはいますけど、実際コラム部分を除いたほとんどがレア・グルーヴと言って差し支えない。
一応自分も8cmCDを数百枚単位で持ってはいるんですが、そんな自分でも驚くような、そして慄くような盤が目白押しです。
中には自分がずーっと探してる盤も多数紹介されてて、やっぱ持ってる人は持ってんだな〜と嬉しいやら羨ましいやら恨めしいやら……楽しく読んでいます。
まあ実際のところ90's J-POPのミリオンヒッツなんてわざわざディスクガイドもへったくれもない有名曲ばかりですし、それでももっと分かりやすいライトなものが必要ならミュージック・マガジン2022年10月号“特集:1990年代Jポップ・ベスト・ソングス100”とかオススメです(たしか1位はOriginal Loveの“接吻”だったはず)。

そしてもう一つ付け加えておくと、その優れた選曲と同じくらい、90年代当時の文化風俗を切り取った素晴らしいジャケの数々やコラムも満足度が高いです。
というわけで自分みたいなJ-POP DJはもちろん、平成レトロ文化に興味のある一般リスナーさん、クラブDJの方でも飛び道具をお探しになるのにもとてもいい本だと思います。
ご興味のある方はぜひ、お近くの本屋さん(通常の取次でお取り寄せできるはず)か或いはお近くのディスクユニオンまで。
ディスクユニオンで買うと短冊CD型の栞が特典で付きます。多分。

で、

そんな「短冊CDディスクガイド 8cmCDマニアックス」にも掲載されているあるCDを最近購入したんですが、それがこちら。

ビバ!結婚!

“ビバ!結婚!” 平成おんな組。
このCD、曲自体は以前から知ってたんですがちょうどメルカリに安めに出てるのを見つけまして、状態のいいものを手に入れられました。
90年代深夜のお色気番組「平成女学園」で結成された平成おんな組唯一のシングルなんですが……。
ビバビバ結婚ビバ結婚〜♪誰かお嫁にもらってね〜♪と今のコンプラ的には間違いなくマズい歌詞を、へっぽこで脱臼したメロディーに乗せてボディコンのおねえさん3人が歌う(しかも結構上手)。
もう平成的としか言いようのない企画で、この手の企画は2000年デビューでシングル2枚リリースしたワンギャルを最後に絶滅したと思うんですが、そこは1993年リリースの平成おんな組、何の躊躇いもなく歌って踊っています。
ちなみにカップリング曲“パトロン募集中!”については以下略です。

ここからがこのnoteの締めなんですけどね。
この“ビバ!結婚!”実は何を隠そう、作詞が秋元康なんですよ。
テレビの企画ですし歌詞のアレな感じで想像つく人もいたかもしれないですけど。
カップリング曲も含めてちゃんと秋元康名義で作詞をされてらっしゃいます。
今ならAKBや乃木坂のおねえさん組にカバーさせても良さそうなものですが、自分の過去作を参照しないあたりが秋元康のシャイなところかも知れません。
(そう考えると2000年のワンギャルより後、2009年デビューのSDN48がこの手の企画の本当のラストだったかもしれないって今思いました。)

じゃあ、作詞は秋元康で分かったけど作編曲は誰なのさ?って思うじゃないですか。
これが“ビバ!結婚!”“パトロン募集中!”両曲ともクレジットは「平成太郎」となっています。
……これ、まず間違いなく著名な作曲家さんの別名義だと思うんですよね。
・名前が番組名&ユニット名に合わせた名前
・この二曲以外(少なくともネット上では)作編曲家としての実績が残っていない
・テレビの企画物で何の実績もないポッと出の作家にシングル二曲まかせるのは考えにくい気がする
作詞家作曲家などが何らかの事情で名義を使い分けるのは割と有名な話しです。
例えばテレビの企画だから裏番組にスタッフで関わってるとか、まあお色気歌謡だから名前を変えてるとか。

というわけで、もし「平成太郎」氏の正体について何か知ってらっしゃる方がいらしたら、是非ご一報頂きたい。
ちなみに自分は、メロディーのキャッチーさ(さっきお前へっぽこって言ったじゃないか)と名前の捩りから、今年5月にお亡くなりになった“浪花のモーツァルト”ことキダ・タロー先生ではないかと予想しております。

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