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(基本解説023)「族議員」とは何か

(政治や法律の基本解説)
(3分で読める)




専門分野を持っているのが「族議員」

「道路族」や「農林族」などと呼ばれるが
票集めしてくれる業界との癒着が問題に

民主党への政権交代で廃止されるも
再度の自民党政権で復活する





族議員とは何か

 たまにニュースにも出てくる「族議員ぞくぎいん」。何か悪い印象もあるけれど、この「族議員」とはいったいどのような議員なのでしょうか。それは、それぞれ専門分野を持っている人たちが族議員と呼ばれます。たとえば、高速道路の建設問題について集まる国会議員たちを「道路族」と呼んだり、教育問題について詳しい議員たちを「文教族」と呼びます。

専門分野を持っているのが族議員

 国会の実質的な審議は、本会議ではなく、いろいろな委員会で行われます。衆議院も参議院も17の委員会(常任委員会)があり、国会議員はこのいずれかの委員会に所属しています。たとえば、農林水産委員会に所属して論議や勉強を積み重ねていくと日本の農業問題についてのエキスパートになり、「農林族」と呼ばれるようになります。

選挙のときに関係業界が票集めしてくれる

 また、たとえば国土交通委員会に所属した議員は、審議を通じて大手の建設業者に知り合いができたりします。建設業界にとっては道路建設などの公共事業などが縮小されたら困るので「国土の発展のためには必要です」と議員たちに働きかけします。こうして多くの「族議員」が、関係する業界の利益のために努力するという構造ができてきます。
 選挙のときには、「道路族」議員のもとに建設業者が駆けつけてきて票集めをしてくれ、活動資金の面倒まで見てくれたりします。「農林族」の選挙には農協関係者が協力してくれます。

業界は自民党議員に働きかけ

 族議員といえば、やっぱり自民党です。戦後長い間、政権与党なので、政策や行政に関わりがあります。これは自民党の政策決定過程の変化の産物ともいえます。これまで業界側が自民党議員に寄ってきたのは与党の一員として力を発揮できたからです。自分たちの業界に利益をもたらしてほしいといった場合に働きかけをします。野党の議員にはそういう力はないので自民党議員に集中します。

特定の業界との癒着とも

 このように「族議員」は専門分野に明るい人たちなのですが、長く所属していると業界との関係も深くなってきます。そのうち国益というよりも特定の業界の利益だけのために活動するという議員も出てきてしまいます。しかし、政権交代で一変します。

一度なくなった族議員も再度の復活

 政権交代で新たに与党となった民主党は、この「族議員」のしくみが政界と業界の癒着を招いている、「省益あって国益なし」という認識でした。そこで民主党は党の政策調査会(自民党の政務調査会に相当)を廃止してしまいました。
 ところが、このしくみでは若手議員や当選回数の少ない議員はやることがなくなってしまいます。民主党は議員立法も原則的に禁止してしまったので、政府に入れない議員のあいだで不満が高まっていきました。結局、菅政権は党の政策調査会を復活させ、「族議員」の養成を始めます。その後、再度の政権交代で自民党の族議員が復活しました。


参考文献
『政治のことがよくわからないまま社会人になった人へ』海竜社  池上彰
『政治学講義[第2版]』東京大学出版会  佐々木毅
などから適宜抜粋



1,381字






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