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(基本解説009)「基本的人権」いまの中学受験生はここまで学んでいる

(政治や法律の基本解説)
(5分で読める)



まず人権が守られるのは
強い国家であること

そして政治が安定していることで
初めて認められるものです 
これが原則です




以下は、中学受験生が学んでいる
基本的人権の5つの内容です(まとめ)


① 平等権

国民は法のもとに平等である
人種、性別、身分、考え方などによって差別されない

② 自由権

身体の自由、居住・移転や職業選択の自由、思想や良心の自由、信教の自由、学問の自由、集会・結社・表現の自由、財産権

③ 社会権

生存権、勤労の権利
教育を受ける権利、労働三権

④ 参政権

選挙権、被選挙権
最高裁判所裁判官の国民審査

⑤ 受益権(または請求権)

裁判を受ける権利、請願権(法律の制定等を求める権利)
国家賠償請求権



生まれたときから持っている権利

 日本国憲法の三大原則のひとつである「基本的人権」。それは「人間が、ただ人間として生まれたということだけで持っている権利」をいいます。教科書的に言うと、人類の長い歴史のなかで、みんなが幸せに暮らすために得られた権利である、ということです。

まずは平等権、自由権、社会権の3つ

 この基本的人権には主に次の3つが挙げられます。「平等権」「自由権」そして「社会権」です。

平等権」とは、差別されない権利です。国民は法のもとに平等であり、人種、性別、身分、家柄、考え方などによって差別されない。

自由権」は国からいろいろなことを制限されない権利です。むかしは日本でも女性だからというだけで選挙権がなかったり、戦争に反対しただけで逮捕されることもあったのです。

社会権」とは、わたしたちが人間らしく生きていくために、必要に応じて国に「助けてもらう」権利です。この「社会権」は20世紀から広く認められるようになっていきます。

自由権のなかにも、また3つがある

 さて、②「自由権」をもう少し詳しくみてみましょう。自由権はさらに「身体の自由」「精神の自由」「経済活動の自由」の3つに分けられます。

「身体の自由」
法的手続きなしで拘束されない、奴隷にされない権利。

「精神の自由」
どんなことを思っていても、それだけでは罰せられない。「思想・良心の自由」「表現の自由」「信教の自由」「学問の自由」などがあります。ただし、思っていることを外に向けて発信する場合、どこまでならいいのか問題になることもあります。

「経済活動の自由」
経済的に自立するため、自由に経済活動を行う権利です。これには「居住・移転の自由」や「職業選択の自由」、そして自分の財産を持つことができ、その財産を不当におかされない権利である「財産権」などが含まれます。

遅れてきた人権「社会権」

 ③「社会権」の番です。資本主義の発展とともに富める人と貧しい人との格差も広がってきました。そんな社会のなかで人間が人間らしく生きていくために必要なものを、国家に保障してもらう必要性が言われるようになってきました。もし自力で生活できなくなったときには、声をあげて助けを求めることができる権利です。この権利を「社会権」と呼びます。20世紀になり、ドイツのワイマール憲法に初めて登場したので、「遅れてきた人権」と言われることもあります。

それは人間らしく生きる権利

 社会権は、この日本でも特に重要であり、憲法にも「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」とあります。代表的なものに「生存権」や「教育を受ける権利」「勤労権」「労働三権」などがあります。

生存権
健康で文化的な最低限の生活を営む権利。

教育を受ける権利
教育は義務ではなく権利です。

勤労権
働く権利のことです。

労働三権
労働者の権利として、団体権・団体交渉権・団体行動権を認めています。労働者が雇う側と対等な立場で話し合うために、労働組合をつくる権利、また組合に加入できる権利をいいます。

さらに参政権と受益権がある

 上記に代表される3つの権利、「平等権」「自由権」「社会権」を守るために、さらにあるのが「参政権」と「受益権」の2つです。

④「参政権
これは政治に参加する権利です。選挙のときに投票する「選挙権」と、選挙で選ばれてみんなの代表となる「被選挙権」です。これには国民投票や住民投票などの権利も含まれます。

⑤「受益権」(または請求権」)
人権が侵害される可能性があるときは、裁判を受けたり損害賠償を請求したりする権利です。

まだまだある「新しい人権」

 ここまでたくさんの権利が出てきましたが、まだまだあります。それは憲法には記載されていないけれども裁判のなかで認められてきた、いろいろな権利で「新しい人権」とも呼ばれています。たとえば「日照権」に代表される「環境権」や「知る権利」「プライバシー権」などが含まれます。まるで人権カタログのようで、とても覚えきれませんね。無理に覚えなくてもいいのですが、これだけたくさんある人権というのは、放っておくと無制限なものということです。終いには「人を殺してもいい」というところまで行ってしまいそうです。

「公共の福祉」という考え方で人権を制限

 日本国憲法の基本的人権に関する条文のなかに「公共の福祉」という言葉がたびたび出てきます。この公共の福祉とは、どんな意味でしょうか。専門家のあいだでも、いろいろな考え方があるのですが、ひとつは「他人の人権」という考え方が有力です。公共の福祉を通じて「自分の人権が他人の人権とぶつかるときは、人権は制限されるべきである」「人を殺してはいけないのは、他人にも生きる権利があるからである」という、人権に備わる限界を示しています。
 この、他人との人権的距離感ともいえる「公共の福祉」という考え方は、「社会全体の利益」とも捉えられます。大勢の人間が、同じ領土で生活するわけですから、人権の矛盾や衝突を調整するという意味においても賢明な考え方と言えます。

人権とは安定した強い国家のもとにある

 つらつらと、人権について列挙してきましたが、読むだけでも大変ですね。お疲れさまでした。わたしたち国民には、どれも大切なものばかりです。しかし、これらの人権が守られるのは、まず強い国家であること、そして政治が安定していることで、初めて認められるものばかりです。



参考文献
『プレステップ憲法 第2版』駒村圭吾編  弘文堂
『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ』池上彰  海竜社
『政治のキホンが2時間で全部頭に入る』馬屋原吉博  すばる舎
『新しい社会6 政治・国際編』小学校社会科用教科書  東京書籍 



2,655字





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