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刺身の上にタンポポを乗せる仕事ができない

※これはノンフィクションです。

去年、WAISを受けた。WAISというのはウェクスラー成人知能検査、簡単に言うと正式なIQテストである。
結果としては総合ではIQ130ということで、全人口の上位2%、あの有名なMENSAの基準にギリギリ引っかかる程度だった。ここまで聞くと単なる自慢に聞こえるかもしれないが、もう少しわたしの話を聞いてほしい。わたしはWAISについて専門的な知識があるわけではないので、間違いもあるかもしれないが、ざっくりWAISの結果について説明しようと思う。
WAISでは言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標について測定が行われる。

言語理解は言語や知識を解像度高く理解し使いこなす力
知覚推理は知覚した情報(WAISでは特に視覚からの情報)を整理し、それに基づいて推論を組み立てる力
ワーキングメモリーは脳内に一度に保持しておける情報の量
処理速度は目の前の情報を処理するスピード

である。わたしの結果はどうだったかというと、
言語理解144
知覚推理122
ワーキングメモリー137
処理速度82
だった。
ちなみにどれも平均は100、標準偏差は15である。
この数値ではピンと来ないと思うので、ランダムな100人の中での順位で表すと、
言語理解1位
知覚推理7位
ワーキングメモリー1位
処理速度88位
相当になる。一つだけ下から数えた方が全然早い。

ちなみに各指標間で差が15〜20より開いていると「発達障害の疑いあり」とされるらしいが、わたしの場合、最大の差は言語理解と処理速度で62である。検査士の方もこれほどの差はなかなか見たことがないとおっしゃっていた。

まあ要するに、頭を使う作業をさせると(自分で言うのもなんだが)めちゃくちゃ頭は切れるのに、単純な作業をさせるとかなり鈍臭くて、そこの差がとんでもないということだ。
エクセルやプログラミング、文章をまとめる、暗算などはトップクラスでできるのに、タイピングや折り紙、板書を写す、書類の整理、配膳作業などは皆に遅れをとる。

しかし、社会ではそのような人間の存在はあまり知られていない。普通片方できたらもう片方だって人並みくらいにはできると思われるのだ。特に、頭を使う作業の方が単純作業の反復より難しいとされている現代社会では、前者ができて後者ができないやつのことなど想像すらつかない人も多いだろう。

実際、わたしは幼少期から、「お前は頭がいいんだからこのくらい簡単にできるだろう」というような言葉を何度もかけられてきた。だが、できないものはできないのである。

ネットでは誰でもできる底辺の仕事として「刺身の上にタンポポを乗せる仕事」というミームがある(タンポポじゃなくて食用菊だとか、それだけやる仕事は実在しない、とかは置いておいて)が、わたしはそれができない。よく学生バイトの定番とされる飲食店のホールスタッフも難しい。昔やった採点バイトもわたしだけ睡眠を削ってやらないと間に合わなかった。
世間の「誰でもできる」がわたしにはできない。

愚痴を垂れ流して、だからなんだ、得意なことを活かせば給料が高いいい職に就けるだろう、と言われれば、確かにそうかもしれないですと言うしかない。ただ、それもわたしの能力を評価してくれる会社と巡り会えればの話ではある。未来はわからないので、いい会社に入って自分の得意分野で活躍できる可能性も、バイトできずに金欠で孤独死の可能性も、わたしの人生にはある。

ただ、「普通の人」にできないことはできるが「普通の人」にできることはできない、そんな変人もこの世界で生きようともがいてることを知ってほしくて、ここにこの文章を残すことにした。

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