アルミPCBのプレートを手磨きで鏡面にしてみた
みなさん沼ってますか?
自作キーボードを作成する際に悩むのがプレートの選択です。高い順にポリカ、真鍮、アルミ、アクリル、FR-4、プレートレスとありますが、今回は中国のプリント基板製造サービスを利用してFR-4並みにお安くアルミプレートを作成しました。
どうせ金属プレートにするなら鏡面にしたいよね!
ということで手磨きで鏡面仕上げにする方法をレポートします。
プリント基板の注文
今回注文したのはJLCPCBです。アルミ基板の場合、裏面はソルダーレジストなしのアルミむき出しです。表面はマスク&銅箔なしにしても基材として絶縁層が残るため、表裏逆でガーバーを作成します。厚みは1.6mmを選択してください。
ということで到着した基板です。これで5枚4000円(送料別)くらい。LaserBoostなどのレーザーカットサービスに依頼すると1枚3000円位だと思うのでバカ安です。レジストは今のところ緑、白、黒が選べます。バリがあるので手を切らないように気を付けてください。これを磨いていきます。
作業にあたっての注意
手磨きによる研磨は軽めの地獄です。グラインダーやポリッシャーがあるなら使うべきです。研磨のプロではなく機材も揃っていない場合いくつか気を付けることがあります。
1.ケガに気を付ける
先にも書きましたがアルミPCBはバリがあるためケガに気を付けてください。出来れば手袋をして作業することをお勧めします。
2.研磨方向をそろえる
素人の手磨きでは、どうあがいても研磨痕が残ります。そのため、放射線状のギラツキを抑え研磨痕を目立たせないように研磨する方向は一方向に揃えます。
3.強く擦らない
強く擦ると削りカスを噛んで致命的な傷が残る可能性があります。リカバリをするために、時には最初の手順に戻る必要があります。軽い力でまんべんなく時間をかけて作業します。
4.番手を上げる時は注意する
徐々に番手を上げながら(細かくしながら)研磨しますが、最終工程に進んでから序盤で入れた傷が見つかることがよくあります。番手を上げる際は前の番手の研磨痕が消えていることをよく確認します。照明の種類によって傷が見えにくい場合がありますので色々試してください。
また番手を上げる際はプレートをよく洗います。前のコンパウンドや削りカスが残っていて傷がつくのを防ぎます。
5.傷が消えないときはあきらめて前に戻る
諦めが肝心です。どうあがいても消えないものは消えないのです。一つずつ番手を下げて傷が消えるところまで戻ってください。
6.後片付けはちゃんとする
研磨、特に水研ぎすると周りが汚れます。養生してから作業しましょう。後片付けも念入りに。ついでにシンクも磨いてあげれば家族からの冷たい視線も和らぐに違いありません。
※特殊な表面処理のシンクは磨いたらダメですよ
準備する道具
今回準備したのは以下です。
サンディングブロック
耐水ペーパー(#120・#240・#400・#600・#800)
Mr.ラプロス(#2400・#4000)※実際は#1000・#2000相当
ピカールラビングコンパウンド(平均粒径15µ)
ピカールネリ(平均粒径10µ)
ピカール液(平均粒径3µ)
メリヤスウエス
食器用洗剤
コーティング剤
サンドペーパーやコンパウンドは好みの物を準備いただければよいですが、サンディングブロック(いわゆる当て木)は必ず準備してください。プレートは穴だらけなので、ブロック無しでまんべんなく手磨きするのは至難の業です。
表面の酸化被膜をやっつける
厄介なことにアルミPCBはアルマイト状の酸化被膜で覆われています。この被膜は通常のアルミより硬く、コンパウンドの歯が立たないため削り取る必要があります。耐水ペーパーの#160で被膜を削ります。
被膜を削っている途中です。白い部分が酸化被膜です。色で見分けられると思います。被膜がすべて無くなったら。耐水ペーパーの#240で荒れた表面をならします。
水研ぎで表面を滑らかにしていく
水研ぎとは削りカスが残って傷を残さないように水につけながら研磨する方法です。食器用洗剤を水に混ぜることでさらに削りカスの噛みを軽減できます。
#400で研磨します。酸化被膜を削った時の耐水ペーパーの深い傷が消えていることをよく確認してください。
#400で研磨後の様子です。
磨き終わったらプレートを洗浄して#600で研磨します。研磨方向をそろえると言いましたが完全にそろえると#400の研磨痕が消えているか分かりにくいので杉綾に若干角度をつけて磨いていきます。
#600で研磨後の様子です。
さらに#800で研磨していきます。だんだん光沢が出てきます。
#800で研磨後の様子です。
ラプロスで研磨
ラプロスは模型用としてクレオスから販売されているサンドペーパーですがアタリが柔らかく素人でも精密研磨しやすいので使っていきます。
#2400で研磨していきます。#2400といいつつ一般的なペーパーの#1000相当です。最初に買った時は間違って購入し、なんでやねんって叫びました。しかしその後、高性能に黙らされることになるのですが…
ラプロス#2400で研磨後の様子です。
恐らくこの辺りで消し切れていない深めの傷を見つけることになると思います。その場合は、順番に番手を下げながら消えるところまで戻ってください。
ラプロス#4000で研磨後の様子です。
コンパウンドで研磨
ここからはコンパウンドで研磨します。まずはピカールラビングコンパウンドで磨いていきます。ウエスに適量取り全体に塗り広げてから軽く擦ります。
ラビングコンパウンドで研磨後の様子です。
次にピカールネリで磨いていきます。
最後にピカール液で磨いていきます。香りが独特ですね。私は好きです。
気のすむまで磨いてください。
後処理
これで磨き終わりましたが、残念ながらアルミも錆びないわけではなく、このまま放っておくと表面が白く曇ってきます。そのたびにピカールするのも愛があって良いですが、ワックスか何かでコーティングしておくと防錆になります。私は自動車用のポリマーコーティング剤を塗っておきました。
さいごに
いかがでしたか?鏡面”風”ではありますが、手磨きでここまでできれば、なかなかではないでしょうか。まずまずの高級感だと思います。ただやはり、アルミPCBは表面が固いのがネックでLaserBoostで注文した板のほうが簡単にピカピカになったことだけお伝えしておきます。心して取り掛かってください。