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石丸伸二さん「メディアは『出生率』を二度と使わないで!」発言から少子化問題を疑う

6月24日に東京都知事選の立候補者討論会が開催された。

その中で石丸伸二さんに以下の発言があった。

まず問題の定義が間違っています。合計特殊出生率、皆さん、メディアの皆さんもう二度と使わないでください。これを自治体レベルで議論して何の意味があるんですか?

https://youtu.be/GSCrT5fuIdE?si=rzGHqfWcDW5LHmo_&t=1768

この発言を聞いて、メディアだけでなく私も少子化問題を正確に捉え直す良い機会と思い、調べたことをここで解説したい。

この発言は司会者の

東京都の合計特殊出生率は「1」ポイントを下回り「0.99」で全国最低となった。出生率減少の根本的な理由とその解決策は何か?

という問いに対して石丸さんが回答したもので、回答を噛み砕いてまとめると以下の2点だ。

  1. そもそも自治体レベルで合計特殊出生率の低下を問題とするのは誤り
    なぜならば、田舎が高く、都会は低く出る数値だから

  2. 本来は国レベルで取り組むべき問題だが、若年層の雇用・所得環境の改善と男女の偏在の解消が必要

1点目の主張

まず合計特殊出生率の性質を理解したいが、計算式を見れば理解できた。

厚生労働省の用語解説では

15~49歳までの女子の年齢別出生率を合計したもので、1人の女子が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当する。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo-4/syussyo6.html

と記載されている。

要するに、「1人の女性が一生のうちに生む子供の数」を表す指標である。

また、以下の数式で定義されている。

厚生労働省 用語の解説

少しだけ噛み砕くと

この数式、未婚女性がたくさん転入した場合に値はどのように変化するだろうか?

未婚女性が転入しても、生まれる子供の数がいきなり増えるわけではないため分子はあまり変わらず、15〜49歳女性の人口は増えるので分母が流入した分だけ大きくなり、合計特殊出生率は低くなる。

東京都は大学入学や就職などを機に20代の女性が流入してくるため、分母が大きくなりやすい。

逆に、未婚女性がたくさん転出した場合は分母が小さくなるため、たしかに合計特殊出生率は田舎が高く、都会は低く出る(出やすい)数値といえるだろう。

石丸さんの主張どおり、東京が全国最低などと自治体間で合計特殊出生率を比較して議論することはあまり建設的でないようだ。

2点目の主張

「本来は国レベルで取り組むべき問題だが、若年層の雇用・所得環境の改善と男女の偏在の解消が必要」のうち、前者の「若年層の雇用・所得環境の改善」は「経済的不安が理由で結婚や出産を諦めている人を減らすべき」という整理に留めて、割愛する。

「男女の偏在」は私は認識していなかっただけに驚いた。

ニッセイ基礎研究)東京一極集中、女性主導で復活へ-2022年・東京都は男性の1.6倍の女性増、男女減少格差27倍のエリアも [https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=73766]

上の表を見ると、東京都の転入した女性は流入した男性の1.6倍と多い。

一方で、東京を含む東京圏や大阪などの都市部へ転出した分、地方からは女性が減っている。全国的に男女がより偏在してくトレンドであることはたしかだ。

まとめ

長年、合計特殊出生率がどのように計算されるか、値が若い女性の転入出に大きく影響を受けることを知らずにいた点は反省したい。

マスメディアは指標の動向を「厚生労働省によれば…」など報道する。そして政治家が「危機的状況だ」などとコメントする。

実際、人口動態は厚生労働省、人口移動は総務省が集計・報告しているデータであり、行政が出す統計だからと盲目的にその指標を改善することが正しいと思ってしまう節はないだろうか。

合計特殊出生率の全国平均や出生数そのものについての議論は一定意味があるかもしれないし、改善するに越したことはないが、「東京都の合計特殊出生率が1ポイントを切って全国最低」といったメディアの煽り文句は冷静に受け止めることにした。なぜなら人口移動の影響が大きいからだ。

石丸伸二さんの既存の問いを疑い、正しく問いを設定しようとする姿勢を見習いたい。


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