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「もう一度、写真の話をしないか。」
ロバート・フランク展。清里フォトアートミュージアムで展覧会があった。
ロバート・フランクの未公開作品を含む100点以上の作品の展示。代表作『アメリカンズ』とそれ以降の作品を含む。
展覧会にあたり、ニューヨークのロバート・フランクを訪ね、展示する作品ひとつひとつについて確認を行う。彼の意向により、作品をスマホなどで撮影して欲しくない。SNSに掲載して欲しくないとして撮影禁止だった。展示を見ていて、プリントのクオリティの高さに釘付けになる。確かに、これをスマホなどで撮影したら、作品の魅力の半分も伝わらないような気がする。銀を多く使うと、綺麗に見える。だから、初期の写真作品は銀塩写真として、プリントの仕上がりを重視していた。そうした教授の話を思い返していた。
今年、ロバート・フランクが亡くなった。そうした意味では、彼の意向が入った最後の展覧会ということだ。
ロバート・フランクが写真を習っていた際に、パウル・クレーの絵を見て学ぶように指導をされた。
創造性に溢れるアーティストは、しきたりを破り、危険を冒す事、そして芸術はひとをあらゆる束縛から解放する
タイムズ紙への写真作品応募にあたり、2位の成績となった。結果としてこれは良かった事だとしている。
アーティストとしては時に激怒する事が必要
だと気が付いたから。これこそ、アーティストの思考、アート思考だな。ただ、アート思考は定義付けできるものじゃ無いとも思う。
1952年の写真集では、冒頭に『星の王子様』を引用し、写真を撮った。
現実をドキュメントする場合の表現とは、アーティストの内側から来るものだということを表明
カメラを持った詩人として評価された。既に名声を得ていた小説家ジャック・ケルアックに紹介文を依頼した際に、仕上がってきた原稿が短すぎるとしてやり直しを依頼し、周囲を驚かせたというエピソードもある。
展示については、それぞれの作品の美麗さに目を見張る。カタログ、パンフレットに掲載されている画像とは次元の違う作品の美しさがあった。100点以上の作品のうち、印象に残っているのが次の3点。
タイムズスクウェアー 1952年
ノーマン・メイラー 1951 – 58年
ベンジェームス、炭鉱夫 1953年
特にベンジェームスは衝撃的だった。このサイトに写真があるのだけど、展示作品とは雲泥の差だった。
作品そのものの圧力があって、美しさがそう感じさせたのかは分からない。ロバート・フランクが作品撮影を禁じた理由が、この辺りにあるのだろうと感じた。
ノスタルジーも感じ、美しいと感じる『アメリカンズ』。当時のアメリカ人が忌避した意味が少し分かるエピソードがあった。
9月に開催されたスイスカルチャートーク、スイスのローザンヌ美術大学の写真学科の大学院生数名が10日間、東京に滞在し、作品制作をするというもの。ミロ・ケレールと小山泰介のトークイベントに参加した。
そこで提示されていた映像作品。日本の普通の家庭で、普段の食事をする人達を撮影した作品。これを見たときに感じた感情が、当時『アメリカンズ』を見たアメリカ人にも発生したのではないかと想像した。
閑話休題。ロバート・フランクの展示に戻る。
ベンジェームスとノーマン・メイラーは、まるで自分がその場に居るような錯覚を得た。ノーマン・メイラーはこちらを見つめてくるポートレイトであり、実際に対峙しているような、まるでこちらが見られているような不思議な感覚が湧き上がってくる。
写真のモチーフが、日常的なもの、普段は目を背けていたもの、そうしたものを写真として保存し、提示した。1950年代にとって、これが衝撃的に受け止められた。既視感のある写真に感じたが、ロバート・フランクに影響された写真家によるものと推測する。
『アメリカンズ』の撮影にあたり、車がポイントになると考えた。自動車は自由を与え、様々な文化を生み出す存在となった。
今では自動運転、MaaS *1 などの取り組み、移動にあたっての自分で運転しなくてはならない自動車からの自由 *2 を求めているように感じる。『アメリカンズ』の撮影が1950年代なので、それから70年。
レベル4自動運転の実現は2040年あたりからとされ、これからの数十年は大きなパラダイムシフトを経験することになると思う。
100年単位と言われる人あるいは社会の感情の変化が見られるのではないだろうか。
*1 Mobility as a Service: 様々な移動手段を組み合わせて最適な移動手段を提供する考え方
*2 この展示から2ヶ月後に、交通事故をテーマとした展示を見たのは、何かの因果を感じる
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