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大学院レビュー@東北芸術工科大学
東北芸術工科大学の大学院レビュー、M1が研究1年目の成果を発表する会。石黒光さんに誘われて講評の日に出かけてみた。芸工大は東京選抜展とダブルアニュアルを見ているが、山形まででかけたことはなかった。春名真歩展を開催しているし、木原先生とも挨拶したし、次回の卒業・修了制作展は大学に行こうと考えていた。
12月の初め頃、雪の降る前のちょうどよいタイミングでしょう。山形に住んでいる同僚に降雪について確認してみたら、例年は12月半ばくらいに雪が降ると言う。それにしても山形からのリモートワークって、ちょっと羨ましいなと思った。週に何回かは東京のオフィスに居るのだけどね。。。
山形新幹線に揺られて2時間半くらいだろうか。山形駅に降り立つと、さすがに寒い。前泊して芸工大に出かける予定にしていた。ホテルからリモートワークを行い、日帰り温泉につかり、地場の居酒屋に行き、山形ラーメンを食べて、山形を満喫していた。残念ながら美術館は展示替え中であり、ギャラリーらしい場所は見つけられなかった。
山形駅前からバスに乗って20分くらい、東北芸術工科大学に到着した。写真で特徴的な建物を見ていたし、知っていたけれど、いざ対峙してみると存在感がある。能舞台もあって、水盆のような大きな池、水の流れが印象的だった。長い階段は京都芸術大学と同じだな。山の斜面にキャンパスを造成したのだろうか。
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中央の三角の建物の最上階にあるギャラリーが会場だった。それと学食と一階のロビーにも作品が提示されていた。
石黒さんと合流し、作品を拝見する。同級生の作品についても説明してもらうという贅沢な時間となった。
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石黒さんの展示はコーナーにあった。本人が希望してコーナーに展示をしたかったという。大きな作品に目がいく。3メートルを超える大作。その形の不安定さとは裏腹な大型の作品に対峙した際の戸惑い、抽象画と思いつつも見ていくと画面の上部の二つの顔と向き合うことになる。すると画面下部に繋いだ手を発見することになる。
パンドラと名付けられた作品、最後に出てくる希望は何なのだろうか。繋いだ手は二人の人間なのか、一人の内面と対外的な人物との呼応なのか、見ているこちらに問いかけられているようである。
小さな作品は立体も含めて展開されている。大きな画面が支配的に見えるが、小さな世界にある作品も、その存在を示している。儀式的な様相を見せるが、その儀式は作家の研究する「アンフラマンス」を表すことだという。
マルセル・デュシャンの手記から見つかった言葉、彼の造語であり、その語の解釈は未だに揺れていると言う。日本語では極薄と翻訳されているらしい。
アンフラマンスとは、何かを示唆させるもの。椅子に残った誰かのぬくもりであるなどと例示される。物質界にありながら可能なかぎり非物質界に近い位置、その寸前に留まることを指した言葉であるという。石黒さんは、このアンフラマンスを絵画的に解釈し、それを示そうとしている。
レビューでは、作品の大小に関する質問があった。それを受けて、精神によってスケール感は変わらないと応答していた。
大きな作品と小さな作品とを混載させる石黒さんの展示、大きくすること、数を作ることは、ひとつのマジックだが、それと逆行するかのような石黒展の秘密がひとつ解けたような気がした。
山形に向かう新幹線の中で、2024年の芸工大の東京選抜展を思い出していた。萩中さんと鹿野さんも同級生だった。
石黒さんの案内で、二人の展示を見る。二人とも学食の二階のカフェスペースにある展示室で発表をしていた。
複雑な画面を見せる鹿野さんの作品。
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キャンバスの下地を作り、色を重ね、それを削り、シルクスクリーンとドローイングを施すらしいが、どうやってこの画面を作っているのか判然としない。とても興味深いのはシルクスクリーンを使って絵画を作っているということ。複製性を持った技法であり、この作品の中央には少女信仰で見た女子高生のピエタを認めることができる。講評での指摘、意味のないものを作るとステートメントにあった。
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作品について質問したいと思ったものの、タイミングがあわずに会えなかった。
鹿野さんの隣には萩野さんの発表のスペース。メゾチントの研究発表を行っている。
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目立ての道具、やり方、回数によって得られる黒の画面が異なる。
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修士の2年では到底メゾチントの研究は終わらないと話していたことが印象的だった。そして《卵どろぼう》についても説明をもらえたのがよかった。
雨は降っていて寒かった。学食は朝、昼、晩と用意されており、制作に向き合うには最適な環境だと感じた。2月の卒展を見にくるのが楽しみになった。
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