衣・食植・住展 鑑賞メモ
表参道GYREの『衣・食植・住展』を見に行った。これはアートの展覧会ではなく、古来から日本に存在していた古代布をテーマにしている。主たる展示はヘンプであり、日本語では大麻と書く。おおぬさと読む。
3,4か月で2メートルを超える植物、それを収穫し、繊維を糸にして布にする。古くから神事にも用いられていた。
薬物として規制されないのか?という疑問が沸くが、ヘンプはほとんど麻薬成分がない。ほとんどと言っているのは、実際にはよく分からないということ。
第二次世界大戦後にGHQ主導で規制されたというような記載を見た。麻全般が規制されたなどとされている。
では、なぜ、この時期にヘンプが注目されているのか。
ファッション業界は二番目に地球に負荷をかけている業界(一番は採掘業界、石油やガスや鉄鉱石などの採掘)、消費者に近い業界でもあり、サステナブルあるいはエシカルに敏感になっている。日本ではあまり感じないかもしれないけれど、環境に対して何も表明・コミットしないブランドは淘汰されている。そして、そうした海外のブランドは調達先にもコミットを求める。日本の小売はそこまでのスタイルに達していないように見えるけれど、サステナブルへの対策は既に不可逆な進行中の課題として認識されている。
ヘンプは、脱コットンの素材になりうる可能性がある。綿花栽培は大量の水を必要とするし、様々な倫理的な、地政学的な課題がある。そこにヘンプの活用が考えられるのだろう。
高級な着物は絹、庶民の着物は麻、日本史の教科書で読んだ。
ヘンプ栽培は規制されている。認可が必要で、北海道のヘンプ協会が様々な活動をしている。栃木県、群馬県と奈良県で栽培もされているらしい。
ヘンプ栽培は、土壌改良効果もあり、水もそれほど必要としない。農薬無しでもよく育ち、春に植えて夏には収穫できる。生地にするまでには様々な工程を経る必要があるけれど、多彩な機能性を備えている。
耐久性が高く、使っていくことによって馴染んでいく
速乾性がある
消臭、殺菌作用がある
長持ちするし、清潔であり、洗濯してもすぐに乾く。そうした機能性を持った生地は、古代では重宝されたに違いない。
GYREの他のフロアで、ヘンプ生地を販売もしていたが、驚くような価格だった。まだ、新しい素材、許認可の問題と、薬物のイメージがあるが、ヘンプの活用が立ち上がりつつある。布としての用途だけでなく、食用、住居の素材としても利活用することができる。また、バイオエタノールの原料としても使用できる可能性を持っている。
副業のファッション関連の仕事、ヘンプについていろいろと教えてもらった。この素材の可能性をより掘り下げて、何か仕掛けをしたいと思う。