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ギャラリー・ホッピング

若い頃、バーを巡ることが楽しくて仕方がない時期があった。一晩のうちに、何件かのバーを回る。これをバー・ホッピングと言うらしい。それを知ったのは10年くらい前だろうか。銀座がバー・ホッピングの中心地というのだけど、今はどうなのだろう。本業勤務先にはジョブ・ホッパー達がいる。

ギャラリー・ホッピングという言葉は、アート・バーゼルに関連したアートのデジタル化の挑戦の記事で読んだ。

緊急事態宣言が解除され、各地のギャラリーがオープンしはじめたので、ギャラリー巡りを再開した。沢山のアートに触れるということは、それだけで学習効果が高いものと考える。そして、日本のギャラリーのWeb発信について、ちょっと整理してみた。既に会期終了している展覧会が多い点についてはご容赦いただきたい。



大久保 紗也 個展『They』@ WAITINGROOM

レイヤーとペインティングの中に出現するようなドローイングの人体的な表象、感情、自身の状況、そうしたものを画面にリフレクションするかのような作品、何度か作品を見たことがあるけれど、波板の作品が新しいと思った。

展覧会のページはあるけれど、現在開催中の展覧会を示しているので、リンクを貼ったら、見に行く度に違う展覧会が表示される。また、Twitterなどで展覧会の情報を流通させられないので、デジタルの集客としては、このホームページの構成を見直した方がいい。まぁ、Facebookページでファン・エンゲージメントしているから、そちらでのコミュニケーションでいいのかもしれない。


天覧美術 @ eitoeiko
岡本光博、木村了子、小泉明郎、鴫剛、藤井健仁

岡本光博氏キュレーションによる天皇制を考える企画展。テーマがテーマだけに新聞(一般紙)からも取材があった。その記事を見て、近所の牛込警察署が連携をしたという。そうした話題性のある展覧会、小泉明朗の映像作品、特撮番組の映像を編集したものがあった。昭和の映像とともに、ある種独特な特撮がつぎはぎ(編集による効果もある)感を増しており、異化効果的な感情が巻き上がった。いまでは、築50年近く経つであろう団地が、真新しく、ピカピカだったのも影響しているかもしれない。

eitoeikoもWAITINGROOMと同様に、展覧会専用のページは用意していなかった。こちらもFacebookによるコアなコミュニケーションを行っている。そして、今回の展覧会については、各種メディアで報道されていた。


鈴木星亜「Surface 2014 - 2020」 @ Maki Fine Arts

風景を描いているが、独特のテクスチャを見せる。CGのような均質感にも見えるし、切り絵のような雰囲気もある。線が蛍光しているようにも見えて、不思議な感覚に包まれる。

既出の二つのギャラリーと違い、それぞれの展覧会専用のページを専用URLで設けている。しかしながら、OGP(Open Graph Protocol)は実装しておらず、SNSでのシェアなどで不利になる。アーティストによって、作品画像のSNSへの露出を許可されていない可能性はあるけれど、SEO対策を考えるならば、OGPは入れておきたい。
※OGP: Twitterや、Facebookにシェアしたときに画像、説明などが表示されるようにする規格、SNSでの情報流通の他、SEOにも効果がある。

さすがに、OILは実装している。


minami solo exhibition“costume doll” @ そよや 江戸端

中島水美氏による個展、会場は町家を改装した江戸端会議室。内装工事、空間デザインを手掛ける会社が運営しており、神楽坂界隈の内装工事事例などがパンフレットに記載されていた。

女性の美を人形に掛けて提示する写真作品の展覧会。2020年の今、なぜ、女性美なのか、しかも男性目線で見た女性美を見せる衣装人形、女性が女性を選ぶというコンセプトの市松人形などを展示、これが、ものすごく引っ掛かり、ゼミでジェンダー研究をしている同級生と、かなり議論になった。

まだ、オープンしたばかりのギャラリー、レンタルスペースとしても活用できる。東京藝大と縁があるみたい。オープンしたてで、名前を変えた(?)ということで、SEO的には不利になる。ひとつの施設で複数の機能を持たせているために仕方がないかもしれないけれど、ホームページは集約した方がよいだろう。何しろ、江戸端会議室で検索すると、レンタルスペースのマッチング・サイトがトップに表示されているから。施設名で検索した場合は、マッチングサイトではなく自社サイトがトップに出る方がいい。


ジャド・フェア Animal Friends @ hiromart gallery

ミュージシャンのジャド・フェア氏による切り絵の展覧会、モノクロの動物の絵が並ぶ。モノクロで平面的な絵は、直接見るよりもオンラインのスクリーン上で見た方が視覚に深く飛び込んでくるように思えた。

展覧会用のURLは用意しているものの、こちらもOGPには対応していない。Facebookでは、作品の画像が流れているし、新聞の記事で紹介されたときも作品の画像があったので、対応すればいいのにと思う。



ギャラリーに限らず、美術館の展覧会情報が見づらかったりする。Webデザインの観点と、UXの観点、情報アーキテクチャの観点とか入るといいのではないかと思うものの、阿部寛のホームページの例もあるし、多様性こそ面白いのかもしれない。



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Tsutomu Saito
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