バーチャルとリアルの往復 ファッション・デザインの場合
リアルとバーチャルあるいはデジタルは境界が溶けてハイブリッドになっていく。そのうち区別することに意味がなくなって融合していくだろうけど、デバイス次第だと考えている。
Wiredの有料記事、フリーランスライターのロザリンド・ジャナの記事、ファッション、アート、カルチャーを専門にしている。
デジタルでアイデアを練り、実際の服作りにあたっては3Dプリンタや樹脂を使って素材を作る。しかも生分解性を備えるという。
ファッション業界はデジタルからの裏返しが実験されていて面白い。デジタルで試行錯誤したことをリアルに持ってくる。もともと自動車産業で先行していたシミュレーションがファッション業界でも起こりつつある。
副業のファッション・アパレル産業向けのコンサルティングでデジタル化についてアドバイス、議論することがあって、業界で実際に起こっている変化を肌で感じている。Wiredの記事との答え合わせが、副業の結果としてできることに、とてもラッキーだと思う。
本記事はファッション、デジタルテクノロジーなどを融合させるスカーレット・ヤンのインタビューから始まる。ヤンはバーチャル上のデザインから実験を始める。下にある vimeo のサムネイルに写っているのは、3Dプリンタで作成した型に樹脂を流し込んで作ったもの、これをスワッチのようにして、それを手にとり、重ねたり繋げたりしている。そのようなアイデアの醸成は、今までの服作りと変わらないようにも見える。
以前、ホビーユーザー向けに服を小ロット生産を提供するサービスを展開するスタートアップにインタビューする機会があった。彼の話は実に興味深いが、印象に残っているのが、「着れない服をデザインしてしまう」ということだという。提携しているパタンナーによって調整するらしいが、元々パタンナーはデザイナーの指示を忠実に再現することを大事にしている。そのような着れない服に対する改善の指摘をすることを躊躇してしまうらしい。新しい事業ならではの苦労話を聞いた。
ある程度の知識を持った人ならば、デジタルを最大限に活用することができるだろう。
「デジタル[王国]は創造に関してより自由で、制約や重力がありません」と彼女は言う。そのほかの点については、バーチャルとリアルを交互に切り替え、バーチャル上のデザインを現実に反映させながら、例えば半透明で、生分解性のドレスをつくるにはどうすればいいかといった、複雑な工程を解明していくのだ。
アパレル3D CADはいくつかあるが、CLOが人気が高いなと思う。その他にもアパレルCADがあるけど、学校で教えているのはCLOが多い気がする。
ただ、現在のコンピュータグラフィックスの技術では、リアリティのある服は少し難しい。やはり実際の服をモデルが着た写真の方が魅力的に見えることが多い。でも、後一息。CGは、リアリティを求める形に進化もしていくと思われるが、むしろデジタルならではの世界も進展していくと考えている。decentraland でファッション・ウィークが開催されたのはこの春のこと。
Wiredの記事ではハイブランドとゲームのコラボについてまとめられており、さらにデジタル上のコレクションについて言及している。デジタルファッション業界の市場規模の予測、モルガン・スタンレーは2030年までに6兆円以上の市場規模になると予測している。もっとアグレッシブな予測も紹介されていた。間違いなくメタヴァースは稼げる市場とハイブランドは見なしているよう。
クロアチアのデジタルファッションの企業が、インスタグラムにコレクションを発表したところ、Vogueから連絡があったという。デジタルは物理的な境界を容易に超えてしまう。パリ、ロンドン、ニューヨークと、モードの中心地は大事だが、そこに居る必要性は少なくなっていくのでしょう。
最近、不思議に思っていることのひとつ、日本では譬え話や擬人化という空想上で世界を広げていくことが得意にも関わらず、デジタル上に展開される世界の話は苦手意識がある。(と思う。)これは何か?いろいろな人に疑問を投げかけて、ディスカッションをしている。結論に至るものではないけれど、引き続き思索、議論、対話を繰り返していきたい。