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『Irregular Reports いびつな報告群と希望の兆し』@東京都美術館 鑑賞メモ
東京都美術館で開催されていた京都芸術大学の発表とも言える展覧会を見てきた。
会期が短く、休日の日程は23日のみだった。
湯島天神は梅が咲き乱れ、上野公園も早咲きの桜が開いていた。そうした春の陽気のためか、人は多いと感じた。ただ、コロナ禍以前の花見の時期ほどではない。
去年も鑑賞に出かけた。
服部浩之をキュレーターとして、京都芸術大学の学生、院生を含む150名の応募者の中から16組を選出した展覧会。
この展覧会で注目したのは、本田莉子の作品。去年の『フィールドワーク 世界の教科書としての現代アート』展にも出展していた。ポスター写真にも掲載されている大漁旗を使った作品を提示していた。
中央に糸車があり、それを取り囲むような木と紙で作られた掲示板のような造作がある。赤い糸で結ばれており、糸車から紡ぎだされたモノだろうか。一灯かかげられた照明は明滅している。
展示には3つの小型スピーカーが配置されており、それぞれにそれぞれのセリフが流されている。そして、赤い糸と白い紙への縫い付けは、千人針のイメージであろう。
巨大な縫い針が、展示ケースに保管されていた。
スピーカーからのセリフ、女性を神格化すること、女性は優しい、慈悲深いなどのラベリングすること、そうしたことに対する否定の言葉が響く。その「ちがう」という言葉が、鑑賞後も耳に残っている。
パフォーマンスも提示された。
どんなパフォーマンスなのだろうか、糸車を回し、糸を馴染ませていた。そのうち、大きな針に糸車から糸をかける。
そして、周りに立てられた紙に針を突き立てる。
紙が切り裂ける音、スピーカーからのセリフは変わらずに流れる。なんというヴァンダリズム。これは社会に対するもの。
順番に赤い糸を紙に縫い付けていく、思い通りに回らない糸車、縫い付ける糸に身動きが取れなくなっていく。そうなりながらも、パフォーマンスは続く、紙を破る音、セリフ、そうしたものが繰り返されていく。
縫物は女性の仕事?社会の中にあって、そうしたジェンダーのバイアス、そうしたバイアスは、縫い針をここまで大きくしないと気が付かないだろう。そうしたものを打ち壊したいかのような暴力性が提示される。
女性の神格化を否定するセリフが重なる。
様々なことが思い起こされる。
パフォーマンスに圧倒された。
パフォーマンス後、アーティストと話をすることができた。この作品には、様々な意味合いが込められており、今日の日本の状況をズームした作品だと感想を伝えることができた。問題意識を持っている人こそ、作品に衝撃を受けるのではないだろうか。
差別と区別、性別の違いを出発点としつつもフラットに考えるということ。差別をしないということ。女性を尊敬するということも、女性というだけでそうした態度を取るという事は差別でもあるということ。
ジェンダーに関する作品もいろいろと見てきたが、noteに書いたことは無かったように思う。
この作品、パフォーマンスも含めて鑑賞できてよかった。
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