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ヤン、銀座に現る🇰🇭【スーパースターを目指すカンボジアの若者たち】第50話


🇰🇭ヤン、その後

こんにちは、レナです。

2023年7月

カンボジアのヒップホップの帝王・ヴァンダが、日本にやって来た。

日本のヒップホップ界の女帝・Awichさんに招待されて、銀座でパフォーマンスをするためだ。


夫の事務所に「ミュージックビデオを撮って欲しい」とやって来た、小柄なあどけない青年が、まさかこんなカリスマスターになるなんて!!

そして、これに同行して来たのが、ヤン。

給料は要らないからポラリックスに携わりたい!とやって来た、カメラマンの青年だ。


ヤンは今、ポラリックスが所属するカンボジアの芸能事務所・バラメイの撮影・編集のトップのポジションにいる。

2023年4月
私や夫がカンボジアを訪れた時、ヤンは仕事でタイに行っており(しかもプライベートジェットで)、会えなかった。

その代わり、ヤンは、ヴァンダの撮影クルーとして東京へやって来た。

しかも、ビジネスクラスで。私だって乗ったこと無いのに!

「ケンとレナのこと、スペシャルゲストとして登録しておくからね!」

と連絡をくれたヤン。

日頃、夜11時には就寝態勢に入る40代中年夫婦は、夜11時から始まるヴァンダのライブに向け、日中に数時間の昼寝をこなし、
会場が銀座のクラブということで精一杯のおめかし(all UNIQLO)をして、
私は久しぶりにヒールなんか履いて、ヨチヨチと銀座へ向かった。

銀座にVannda!


ライブ会場には、たくさんのカンボジア人。

懐かしいクメール語サウンズに、我々は思わず話しかけてしまう。

「カンボジアの方ですか?」

「そうです!ヴァンダ見に来ました!」

私たちがカンボジアに行った頃、アーティストにお金を払ってライブを見るという文化がカンボジアには無いと聞いて、驚いた。

でもカンボジアは変わりつつあるのだろう、ライブ会場にいたカンボジアの人たちは、ヴァンダのために5000円を支払っている。

この文化の躍進の背景には、ローラさんはじめ、バラメイ事務所のカンボジア人たちの努力があるはずだ。

ライブ会場についてドキマギしていると、ヴァンダの一味が現れた。

「レナ!!ケン!!」

「ヤン!!」

久しぶりの再会に、私たちは抱き合って歓喜した。

左がヴァンダ
右がバラメイ・プロダクションのカメラマン
ヤンです


「久しぶりに会えて嬉しいです。」

ヴァンダは、すっかり王者の風格。

「あの、いつもありがとう、ポラリックスのこと面倒見てくれて」

「とんでもない。僕は、ポラリックスのファンなんです。」

彼は私をハグしてくれた。

あの時と変わらず、彼は謙虚で、とっても良い子だ。

しかもヴァンダは、私たちを彼の控室に呼んでくれた。

おかげで私たちは、ヤンとゆっくり話すことができた。

ヤンの可愛いところは、そのぽっちゃりフォルムで犬のように甘えてくるところ。

「レナ、ケン、本当にありがとう。

全部のこと…教えてくれたこと、おかげで俺、本当に日本に来られたよ!(しかもビジネスクラスで)」

ヴァンダのパフォーマンスはカンボジア人の熱狂に包まれ、銀座の空がクメール色の炎に燃え上がった。

殆どがカンボジア人のお客さんだったけれど、僅かにいた日本人の若いお客さんがこう呟いているのが聞こえた。

「新興国のパワー、すげー。」


私にとってヴァンダのパフォーマンスより何より嬉しかったのは

昔とちっとも変わらない、カメラを構えるヤンの真剣な顔。

そして、それを涙して見ている私に気付いて、ニッコリ笑うヤンの顔。

「ママ、俺。。。まだ誰にも言ってないんだけどさ、結婚するんだ!」

「エエーーーーッ!」

ヤンは、キャー!と私の肩に顔を埋めて照れている。

「え、あの子と!?」

「そう!5年、付き合った!」

ヤンに彼女ができたとき私たちは一緒に住んでいて、ヤンは彼女を紹介してくれた。

あの時のヤンと今のヤン、収入も環境も大きく変わったけど

君は大事なものを見失わなかったね。

「結婚式は12月なんだ。でへへへ」

12月、カンボジアの一番に良い時期。ヤンの晴れ姿を見にいかなきゃ。

多分、エコノミークラスだけどね。

「俺、サソリに会いたいなぁ・・・。いつもサソリと肉を取り合ってケンカしたなぁ。」

そう、ヤンとサソリは、しょっちゅう肉を取り合ってケンカをしていた。

そんな青年が、まさかこんな形で日本に来るなんて!しかもビジネスクラスで!!

カメラマンとして大成したヤン!

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