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技術者派遣業界に就職する方へ

私がキャリアコンサルタントの原点としてあるのが、
13年半勤めたある技術者派遣の会社での経験からです。
新卒で入社して7年、メカエンジニアとして自動車や特殊車両の
設計開発に従事し、その後は同じ会社で採用や教育などを
経験させていただきました。
そんな経験から、これから技術者派遣業界に就職しようとする方へ
私なりの見方でお伝えしようと思います。

技術者派遣業界とは

技術者派遣(エンジニアリング・アウトソーシング)と聞くと
ほとんどの方が聞いたことないと思います。ただ、メーカーの設計開発の
部署でお勤めの方であればピンと来るかもしれません。
それだけかなりニッチなお仕事なのですが、この仕事は一言で言うと
『派遣先で技術サービスを提供する人』
となります。
これまでのエンジニアの経験を踏まえて、派遣される企業が
困っていることを専門的見地から解決していく(一緒に仕事をしていく)
立場となります。いわゆる「プロのエンジニア」なんですね。

では、この業界にはどんな会社があるかというと、

・メイテックホールディングス
・テクノプロ
・WDB
・アルプス技研
・フォーラムエンジニアリング
・AKKODiSコンサルティング(旧・VSN)
・オープンアップ(旧・夢テクノロジー←フルキャストテクノロジー)
・パーソルR&D
・スタッフサービス・エンジニアリング
・アウトソーシング
                     などなど・・・・・・

などがあります。
総合人材サービスのグループ企業から独立系まで多くの会社が存在しています。

技術者派遣業界で働くメリット・デメリット

この業界で働くメリット・デメリットは以下のような感じでしょうか。

【メリット】
・様々な経験、幅広いキャリアを積むことができる
 メーカーであればその会社が強みとする製品開発しか携われないため
 取り扱う製品群によってはスキルの幅に限界が出てきますが、
 技術者派遣であれば、日本の製造業のほとんどを相手にするので、
 幅広い製品に携わることができ、それに伴うスキルや幅広いキャリアを
 得ることが容易です。
・定年まで技術者(エンジニア)として勤めることも可能
 メーカーであれば、設計開発部門でも時期が来れば必ず管理職
 になるタイミングがやってきます。
 管理職ともなれば、メンバーの管理をする立場となるため、
 どうしても現場の第一線での設計開発業務から離れざるを得ません。
 しかし、技術者派遣であれば専門性を発揮していつまでも
 エンジニアとして活躍することも可能です。
・人脈を広げ、新たな視点やキャリアアップが容易
 いくつかの派遣先での勤務を通じて、仕事を通じた人脈を広げることも
 できますし、派遣先の会社のカルチャーや出会う派遣先の技術者を
 通じて、常に新しい視点やキャリアアップのヒントを得るチャンスも
 多いです。

【デメリット】
・技術力が上がらない(ただし、勤務する派遣先や派遣元により異なる)

 一般的にはコアな技術は自社の社員が、ノンコアな技術は派遣社員が
 行うケースが多いとされています。このため、仕事を通じた技術力の
 向上は果たされにくいデメリットがあります。

 わかりやすい例として、自動車メーカーで先端技術や先行開発に
 自社の社員を投入し、足りない分(=既存技術で対応可能な開発)を
 派遣社員が行う、というケースです。

 ただし、と書いているのが、
 たまたま勤務した派遣先のメーカーがコアな仕事をさせてくれたり、
 派遣元(技術者派遣会社)との信頼関係でコアな仕事のアサインを前提
 としてやらせてくれたりなど、一概にもデメリットとは言えません。
・主体的なキャリアアップ、スキルアップが望めない
 派遣先のメーカーで仕事をしている場合は、
 基本的には頼まれた仕事を淡々とこなすだけとなってしまい、
 メンバーと一緒に仕事をする中で得られるコミュニケーションスキルや
 指導力、リーダーシップの機会が限定されてしまいます。
 併せて、普通就職できないような大きな企業でのお仕事が多く、
 そこでの環境や雰囲気になじんでしまい、本来求められる
 キャリアアップやスキルアップを行わなくなる傾向があります。
 ※派遣元の会社ではこれを打破すべく様々な対応をしています
・常に周囲にアンテナを伸ばし、真面目に自分を磨き続ける必要がある
 メリットの裏返しですが、
 派遣先の方は「プロのエンジニアだから何でもわかるだろう」と
 接してきますし、いろんなことを相談されます。
 この期待に応えて仕事をするのが求められるため、
 常に最新技術や情報に触れて知見を増やし、そしてお客様である
 派遣先はどのようなことが困っているのか、助けてほしいのかを
 キャッチアップして応えていく必要があります。 
 頼られて認められるにはただ仲良くすればよいのではなく、 
 プロとしての仕事ができなければ長続きすることはできません。

技術者派遣のエンジニア(技術者)が求められるもの

メリット、デメリットを受けて、技術者派遣のエンジニアが
求められるものは何かというと、簡単に書くとこんな感じです。

 ・派遣先(メーカー)で求められる技術力をすべて熟知していること
 ・メーカーの担当者は、自社にはない知見、能力、刺激を求めていること
 ・派遣元(技術者派遣会社)の代表としての振る舞い
  ※よく勘違いしますが相手は技術力の対価にお金を頂く「お客様」です
 ・幅広い相手とのコミュニケーション能力、コーチング能力
 ・自らキャリア、スキルを磨き続ける向上心

技術者派遣の会社は、上記に応えるため様々な研修や自社勉強会を企画し
社員に受けさせています。
私が過去に在籍した技術系派遣会社では、新卒入社のエンジニアは3年以内に指定資格を必ず取得させる、など、キャリアを磨く向上心を強制的に身に着けさせるようなことをやっていました。 

では、どの技術者派遣会社で働くのが良いのか

上記に書いた通り、様々な会社が存在します。
なのでどの会社? と思いがちですが、私なりに思う選択のポイントは
以下のとおりです。

①法令順守(コンプライアンス)を重視している会社か?
 技術者派遣は、一人当たりの粗利が高く、様々な会社が参入します。
 また、技術者の人数も減少傾向にもあり、技術者の人数をどれだけ
 抱えられるかがポイントでもあります。
 それ故にトラブルが多く、世間的には危ない業界とも見られています。
 そのなかで有名な事件が
 「ニコン熊谷製作所で働いていた派遣社員が過労死自殺」です…。
 そのため、「コンプライアンスを遵守します!」とどの会社も採用では
 言っていますが、その会社をネットで調べてみれば様々な情報が
 出てきますので、そんな情報を参考にしていただくと良いと思います。
②どの会社に派遣者を多く送り出しているか
 会社のホームページや採用情報などで取引先の情報が公開されている
 会社もあります。
 こちらも参考にするのも一つです。
 これは会社名そのものではなく、「広く製造業とつながりがあるか」
 という視点で、です。このつながりが浅いと、技術者派遣の本来の
 メリットでもある「幅広いキャリア」が得られるかがポイントです。
 ※今は良くても、10年以上という長期で考えてみてください
③本当に社員(技術者)を大切にしているか
 この業界の会社のほとんどが社員間のつながりを強調し、
 大切にしています、という打ち出しで採用をしていますが
 それが本当かどうかを見極めるのが大きなポイントです。
 仕事のアサインは基本的に会社が行うものですので、
 関わる営業担当のレベル差はないか、
 会社としてキャリアアップを考えた施策を打っているか、
 などがポイントです。
 合わせて、会社が働く一人ひとりの希望を聞き、次の派遣先に
 つなげているかもポイントです。

ちなみに、これらを満たしているであろう会社は
私が感じるには実は1社しかありません。
その会社は「メイテック」という会社です。
ホームぺージなどは地味でなかなか伝わりにくいのですが、
この会社は1974年に創業した独立系の会社で、
「エンジニアが生涯働ける環境づくり」を重視して運営しています。
お客先と技術力を含めて深いつながりがあり、どのメーカーでも
「メイテックの技術者は素晴らしい」という評価を得ています。
その証として、メーカーが派遣会社に支払う派遣料金(時給)です。
この業界の派遣料金平均は3,000円台といわれる中、
メイテックの派遣料金平均は5,000円台とずば抜けています。

技術者派遣業界で働く皆さんへ

私がこの業界で技術者派遣としてお客様先で仕事をして、
採用活動で新卒・中途社員を採用し、退職する前の数年間は
社員全員のスキルを把握し、お客様から要請された案件に対して
適任と思われるエンジニアをアサインする仕事を行った経験があります。

そこから言えることは、
エンジニアとしてこだわり、生涯エンジニアとして
プロの仕事をしていく決意のある方
であれば、
この業界であれば自分のやりたいことに集中し、
活躍でき、周囲から認められる仕事である、ということです。
プロの仕事をするためには、
自分を磨き続け、相手の要望に応え続ける
ことが大切なんだと思います。

この業界は昨今の技術者不足もあり、
それなりのスキルやキャリアがあって、
通常のコミュニケーションスキルが取れればすぐに内定が取れる
業界ですが、必ず上記につまづく瞬間が出てきます。
つまづいた、と思ったときには年齢面や経験面で振り返ったときには
すでに後戻りできないような状況となっていることがほとんどで、
そうなったときには「遅い」のです。

だからこそ、技術者派遣業界で働く皆さんには、
プロのエンジニアとしてプライドを持って、
日本の製造業を支えて欲しい
と願っています。

最後に

私のキャリアコンサルタントとしての原点は、退職する数年前に
行ったエンジニアのアサイン業務で、エンジニアのキャリアを理解し、
正しく導くことが、将来幸せに働けるエンジニアが一人でも増える
きっかけになるのだろう、と思って携わることに決めました。

働く以上は自分が歩んできたキャリア(=歴史)を振り返り、
次を考える瞬間が誰しも訪れます。
エンジニアは専門性が高い仕事なので、経験年数・内容や年齢面にあらがえない事情もあり、「あのとき、ああしていればよかった」と後悔することのないようにありたい、と思っています。
エンジニアは常に自己を磨き続ける大変な仕事ですが、その先に得られる
称賛は大きいものなので、そこに向かって陰ながらサポートができれば、
と思いこの記事を書きました。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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