見出し画像

ポラリス保健室だより 3月

お酒とのつき合い方

毎年この時期は歓送迎会やお花見で飲酒の機会が多いと思います。
今月は「お酒とのつき合い方」について考えてみませんか?

三月、弥生、桃の節句

弥生は三月の呼び名ですが、「弥(いや)」は「ますます」とか
「いよいよ」という意味があり、「生(おい)」には、草木が芽吹くという意味があるそうです。
弥(いや)生(おい)が詰まって、弥生(やよい)と呼ばれるようになったそうです。
すごく生命力を感じますよね。

そして、3月3日は「桃の節句」
こちらも調べてみると五節句のうちの上巳(じょうし)の節句に、
川で身を清め不浄を禊ぎ、酒を酌み交わして穢れを払うという行事が、宮中で曲水の宴として催されるようになり、そこで桃の花を盃に浮かべた桃花酒を飲んでいたことから「桃の節句」と呼ばれるようになったのだとか。
いろいろ諸説あるようですが、お酒は「穢れを払う」「清める」という役割をもっているのですね。

「飲酒ガイドライン」が公表されました!

先日、厚生労働省から「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が公表されました。
毎年この時期は歓送迎会やお花見で飲酒の機会が多いと思います。
なぜこのタイミングだったのか・・・
この時期を狙ったかどうかは定かではありませんが
お酒好きの方は何だか複雑な心境を抱いたかもしれませんね。
飲酒ガイドラインは、国のアルコール対策である「第2期アルコール健康障害対策推進基本計画」(2021~2025年度)に作成の方針が記載されていて、有識者でずっと議論されてきたものです。
飲酒に伴うリスク、適切な飲酒量・飲酒行動などが示されています。
厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」

「少量の飲酒は健康によい」?

お酒を飲むと気分もよくなり、緊張も緩んでリラックス、会話も弾み楽しくなる。
仕事を円滑にするために、今では死語になりましたが「ノミケーション」という言葉もありました。
「気分がよくなり、楽しくなる」というのは、お酒が脳内に気持ちよくなる物質(ドーパミン、セロトニン)を分泌させるためですが、作用は短期的です。
しかし、この快感を脳が覚えていて(報酬系回路)それを求めるようになります。だから、ついついお酒の量がかさんでしまうんですね。
そして、その快感に「はまる」という状態になると、自分ではお酒をやめたくてもやめられない、飲む量もコントロールできない、仕事をはじめ生活に支障が出てしまう。これがアルコール依存症という病気です。
お酒を飲む人は誰でも例外なく「アルコール依存症」になるリスクがあります。一度でも飲酒後の記憶が飛んだ経験のある方は要注意です。

さらに、お酒を飲むとドーパミンやセロトニンだけでなく、コルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。長期間お酒を飲んでいるとストレス耐性が下がり、抑うつが助長されていきます。お酒を飲むとストレスが発散できると思いがちですが、そうではないのですね。
何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。

発がん性もある「アセトアルデヒド」

お酒を飲み過ぎると肝臓が悪くなると聞いたことがあると思います。
これはお酒が体内に入ると主に肝臓で分解されるためです。
お酒を飲むと顔が赤くなったり、動悸や頭痛、吐いてしまうといった状態になったり、見たりした経験がありませんか?
これはお酒が肝臓で分解されるときにできる「アセトアルデヒド」という毒性物質の影響です。
アセトアルデヒドは発がん性があることがわかっています。
肝臓ではアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH;アルデヒド脱水素酵素)によってさらに分解され無害化されるのですが、このアセトアルデヒドを分解する酵素ALDHの働きは遺伝なので、この酵素の働きが弱いとアセトアルデヒドが貯まりやすく「お酒に弱い体質」になります。日本人は働きが弱いか欠けている人が 41%程度いると言われています。
人間は適応能力が高い生き物ですから、「アセトアルデヒド」による反応もだんだん弱くなっていわゆる「お酒に強くなった」という状態になるかもしれません。しかし、それは身体が発信するアラームが効かなくなってしまったということでもあるのです。

「いやいやそんなことにはなってないから大丈夫」
「お酒の飲み方まで指示されるなんて・・・」
そうですよね。
「自分の身体は自分がいちばんよくわかっている」
自分の専門家は自分自身です。
病気や治療についての知識を日頃から身につけ、予防や主体的な治療選択ができるようにヘルスリテラシーを高めていきましょう。
まずは、日常的に自分がどのくらいお酒を飲んでいるのか?
正しく把握することから始めてみましょう。

リスクが高まる飲酒量

生活習慣病のリスクが高まる飲酒量は、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上です。
(実際どのくらいリスクが高まるかの詳細はコチラ*減酒.JPが開きます)
女性の方が少ないのは、
・男性に比べて小柄な女性は血中のアルコール濃度が高くなる
・男性と比べて肝臓でのアルコール代謝能力が低い
・女性ホルモンがアルコール代謝を阻害する

ということがわかっているからです。

純アルコール摂取量を簡単に把握できようにするために「ドリンク」という共通の物差しがあります。1ドリンク=純アルコール量10gです。
つまり、男性は4ドリンク以上、女性は2ドリンク以上の飲酒量は
リスクが高まる
ということです。
お酒のドリンク換算目安です。
・ビール(500ml)=2ドリンク(350ml=1.4ドリンク)
・日本酒(1合180ml)=2ドリンク
・缶チューハイ(350ml)=2ドリンク
・焼酎(1合180ml)=4ドリンク
・ワイン(グラス1杯)=1ドリンク
・ウイスキー(ダブル1杯)=2ドリンク

いかがでしょう?
お酒を飲むとき、どのくらいの飲酒量になっていますか?
男性は4ドリンク、女性は2ドリンクに満たない量が「適量」です。

量だけでなく「頻度」にも気を配りましょう

「適量」だからと毎日お酒を飲み続けると、先ほどもお話ししたとおり、
ついつい「もう少し」がでてきて、アルコール依存症になるリスクが高まるといわれています。
お酒を飲むとよく眠れるからと毎晩お酒を飲む方がいますが、飲酒は睡眠の質を悪化させ、睡眠障害の重大な原因になることがわかっています。
1週間に休肝日を必ず設けるようにしましょう。

減酒にチャレンジ

何か行動を変えようとすることは、とても大変なことです。
しかし、チャレンジしたことができたとき、お酒で感じる快感よりも
より良質の達成感という快感が得られます
もちろん、自己効力感もあがります
これを機にお酒とのつき合い方を見直してみませんか?

参考文献
日本名門酒会 https://www.meimonshu.jp
ギフトマナー辞典 季節と暦、行事 
https://gift-manners.shaddy.jp/article/3425/
厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
減酒.jp https://gen-shu.jp/
依存症対策全国センター お酒との上手な付き合い方
https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document19.pdf 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?