見出し画像

星空保護区に関する大きな誤解

ここしばらく、星空保護区について、いろいろな方とお話しする機会がありました。
「素敵ですね!」言ってくれる方がたくさんいて元気をもらう一方で、「これはたいへんだな」と思ったことがいくつかあります。
それについて書いてみることにします。


星空を守ろうとすると、防犯上の問題がある

という誤解が、最も多く、最も大きく、最もやっかいであるように思います。
確かに、漠然としたイメージでは、真っ暗で何もない方が、星が見やすいし、実際その通りだと思います。
しかし、そんなことが、世界的に200カ所以上もの星空保護区で実践されていると考えるのは、あまりにも飛躍しすぎているのではないでしょうか?
その土地の人の生活は確保したまま、星空を守ろうというのが基本的な概念です。不便や不安なほどに真っ暗にしようという話ではありません。

「光害」という言葉の知名度の低さ

「光害」という言葉自体は、1990年代からあって、環境省の「光害対策ガイドライン」初版の発行は、1998年なので、もう四半世紀前からの言葉です。

でも、光が害になるっていうと、全部消さなきゃいけないのか!
と思う人もたくさんいるようです。
ガイドラインを読んでいただければ、わかりますが、真っ暗にしようとは、どこにも書いてありません。
必要な光は必要なものとして、確保するのが大前提の考え方です。

星空保護と光害

「星空保護区」という言葉の響きは、何かメルヘンチックな雰囲気があると思います。
星空が見られる環境を守ろうということなので、当たり前です。
実はもともとの英語では、ちょっと違ったニュアンスの言葉が使われています。

「ダークスカイプレイス」

です。
スターウォーズを連想すると書くと、世代がばれますが(笑)、「空が暗い場所」というのが一番基本となる発想なのです。

これを日本語版にするときに、「星空保護区」としたのは、素晴らしいセンスではありますが、ちょっと言葉足らずになったところもあるかもしれません。
基本の発想では、守りたいのは、星空だけではなく、地球の本来の夜の暗さなんだと思います。

これは、光害対策と志を同じくするものです。
光害対策ガイドラインでも、2021年の最新の改訂の中で、光害対策の取り組みとして、「ダークスカイプレイス」=「星空保護区」が取り上げられています。

何が問題なのか?

これまで書いてきた、「真っ暗にするわけではない」とは、どういうことでしょうか?

結論から言うと、

「必要な光を残して、必要ではない光を減らそう」

ということになります。

必要ではない光って何だろう

ここが、ちょっとわかりにくいところかもしれません。
暗いところに明かりをともしていれば、それは必要な光という風に思えますね。
でも、もうちょっと細かく考えてみましょう。

たとえて言うと、イヤホンやヘッドホン?

音楽を聴くのは、楽しいですし癒しにもなったり元気をもらったり、いろいろ生活に潤いを与えてくれます。
私も音楽を聴くのは好きで、クルマの中などで、いつも聞いています。
でも街中では、あまり聞きません。

聞いている人もいますね。
イヤホンやヘッドホンをして、音楽を聴く姿は、ウォークマン以来の文化ではないでしょうか?(また歳がばれます(笑))

これが、イヤホン・ヘッドホンがなかったらどうなるでしょう?
それぞれの人が楽しんでいる音楽ですが、多くの人が同じ場所で、イヤホン・ヘッドホンを使うことなく楽しんていたら、おそらく騒音にしかならないと思います。
それぞれ、自分が聞きたい音楽なので、その人にとっては必要な音楽です。
それが、他の人にとっては、不必要な音になるわけです。
イヤホン・ヘッドホンをしていても、大音量で聞いていると「音漏れ」をして、周りの迷惑になることもあります。

光だって同じこと

自分が使っている光が、自分に必要なところを照らしていることは、ちゃんと理解していても、自分とは関係ないところを照らしているというのは、あまり考えることがないと思います。

2021年 光害対策ガイドライン P35


特に、外で上に向かっている光は、ぱっと見、どこも照らさないので、無駄な光とは思っていたとしても、それが害を与えるとは、なかなか考え付かないと思います。

それが、実際にはいろいろな害があり、さらにLED化で省エネしつつも明るくできる時代になったせいで、その害が大きくなりつつあるのです。

星が見えない以外の害をまとめたページがこちらです。

星空保護区の目指すところ

音楽を聴くなと言っているわけではありません。
イヤホンやヘッドホンを使って、無駄な音が周りに迷惑をかけないようにしよう。
ということなのです。

イヤホン・ヘッドホンは、電気屋さんに行けば売っていますし、今では100円ショップでも手に入りますね。

無駄な光が漏れない照明は、そう簡単には手に入りません。
ましてや街灯は、自分で交換するわけにもいきません。
自宅の玄関灯に傘を付けるくらいはだれでもできるかもしれませんね。

イヤホン・ヘッドホンとは、そこが大きな違いだと思いますが、根本的な考え方は、まったく一緒だと思います。

けして、必要な光を消そうというわけではありません。
安全で文明的な生活と、星を眺めることは、両立するのです。
周囲に迷惑をかけずに音楽を聴けるのと一緒です。

照明器具の話は、また機会を作って書きたいと思います。

また、
これだけいろいろな誤解を乗り越えて、星空保護区を目指したい理由も、そのうちまとめなおしたいと思います。

今回はここまでで・・・
読んでいただいてありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?