POLARISのデザイン ―― アートディレクター・グラフィックデザイナー 岡本太玖斗
※この記事は、ゲームマーケット2021秋に発売した、「RED LINE OFFICIAL BOOK」内のコンテンツ「PORALISのデザイン」です。
記事単体でも購入できますが、マガジンでの購入がお買い得でおすすめです。
※記事内にはネタバレを含む部分がございます。
必ず、『POLARIS-01: RED LINE』をプレイしたうえでお読みください。
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POLARISのデザイン
ストーリーゲームレーベル POLARIS の記念すべき第一弾『RED LINE』。
アートディレクター・グラフィックデザイナー 岡本太玖斗によるクリエイティブの決定プロセスや意図をお届けします。
いままでにない「ストーリーゲーム」というジャンルを、どのように世の中にプレゼンテーションするか。
POLARIS=北極星と言うからには、イロモノではなく、彗星の如く現れたスターのようなメジャー感を持たせたい。また、作品ごとにがらりと変わる世界観を柔軟に受け入れることのできるニュートラルな枠組みをつくるべきだと思った。
制作物は、ロゴからパッケージ、ゲームに使用する冊子やカードなどのアイテムまで多岐に渡る。それらのトーンがぶれないように、POLARISとしてのデザイン方針を決めることにした。
設定したキーワードは、「大胆」「簡潔」「ミクロ」である。
「大胆」とは、エンターテインメントであること。
誰でも楽しめる王道でありながら、新鮮な驚きがなければならない。色やサイズ、配置、書体の選択など、あらゆる点を潔く大胆に。プレイヤーを飽きさせず物語に誘いこむ。
「簡潔」とは、想像の余地を残すこと。
簡素とは違う、意図を持った空白を用意することである。それは物理的な余白というよりも、たとえば箱の外からはどんな類のゲームなのかがよく分からないようになっていたり、色々なものに見えてくるロゴの形など、ヒントだけをちらつかせて明確な答えを提示しない、ということでもある。自分だったら?相手の立場だったら?現実の社会だったら?想像力をはたらかせて謎を解いていくストーリーゲームの性質を、適度な謎をはらんだデザインで体現する。
「ミクロ」とは、画面外にある広がりを意識すること。
デザインを画面内だけで構成するのではなく、マクロな視点で捉えた広大な
世界を、画面の大きさでミクロにトリミングするような感覚である。ストーリーゲームは、役に入り込んで考え決断を下すという性質上、ライトなボードゲームに比べてゲームと現実の境界が曖昧になる。POLARISの内側と外側はプレイヤー自身を介して地続きになっていて、映画を観た後のように、プレイ後も現実にゲーム内の視点を引きずっていくことになるのである。大胆とも近いが、断ち落としを多用したり、画面外に続いていく反復表現を用いたりすることで、ずっと続いていくこと、外側にも世界は広がっているということに少し意識が向くようにしたいと思った。
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