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デイパック ”erupt 12” 開発ストーリ− ①「乗鞍岳骨折編」
こんにちは。
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今回はデイパックerupt12開発ストーリー。
なぜこのバックパックを使ったのか。
なぜこの仕様なのか。
思い返すと原点はこのことがキッカケ。
少し長い話になってしまうので何回かに分けて書いてみます。
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今から遡ること6年前の2019年の夏。
私と妻は連休を使って北アルプスの乗鞍岳へ1泊2日の山歩きへ。
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初日は都心からレンタカーで高速を走り、バスでエコーラインから畳平へと向かいました。
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到着早々ランチを食べて、一旦宿泊予定の白雲荘へチェックインしたのは13:30を過ぎた頃。
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もう14時になろうとしていたけど夏だし、一旦山頂の剣ヶ峰まで行くことにしました。
夫婦共に登山を始めて2年ほどで、私は友人や職場の同僚とそれなりに色んな山を歩いてきたけど妻は年に数回登った程度。
時間的に少し不安はあるが、とはいえ畳平から剣ヶ峰まで2時間弱。
往復で3時間程度かと甘くみていた。(今なら絶対行かない)
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当日の写真を見てみると、それまで見たこともない景色や高山植物だったりと楽しそうな妻の表情が写っている。
まだこの後に起こる悲劇を知らない妻の笑顔が今見るとなんだか切ない。
この時間に山頂へと向かう人は私達以外にはおらず、多くのハイカーは下ってきていた。
「俺たち一番最後だねぇ」なんて言いながら歩いていたのを覚えている。
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妻は乗鞍岳山頂直下の岩石ゾーンを手間取りながらも何とか上り、山頂の剣ヶ峰へはコースタイム通り16時前には到着。
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残念ながら山頂は真っ白で風も強かった。
それでも山頂に立って嬉しそうな妻。
一周見渡し写真を撮って、時間もないのですぐに下山することに。
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周りにはすでに誰もおらず少し急ぎ目で下山。
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やや危険な岩石ゾーンも過ぎて肩の小屋までの緩やかな下り。
特に危険でもなんでもない登山道を歩いているときに後ろから妻の声が。
「痛い!」
また何事かと登り返して近づくと、石でバランスを崩して足首を捻ったという。
「大丈夫?歩ける?」
と尋ねると痛くて吐きそうだと。
最初は大したことないと思ったが、この一言でまさか骨折してる?と思った。
とはいえ歩いて下山しなければならない。
「歩ける?」
と聞くと両手のストックを使いながらもほぼ歩けない。
この時すでに17時前だ。
後ろには1人のハイカーもいない。
これはマズイ自体になったと気づく。
肩の小屋まで下ればあとは車も走れる平坦な道だ。
なんとかそこまで時間をかけてでも下れないものかと考えた。
肩の小屋はすでに見えていて200mくらい距離か。
しかしこの距離を下るのも難しそうだ。
スマホを見ると幸いにも電波があった。
とりあえず宿泊予定の白雲荘の夕食には間に合いそうにもないので連絡しなければと、連絡して事情を伝える。
するとなんと電話口のご主人が救助に来てくれるという。
恐らく30分くらい待ったところで白雲荘のご主人が現場上がってくるのが見えた。
到着すると飲み物や食べ物までも持ってきてくれていて、気遣いに感謝の気持ちとこういう自体に対して慣れているのを感じた。
妻の足の様子を聞きながら副え木をしたりと手早く救急処置までして下さった。
それで少し歩いてみる様にと言いながら妻の様子を見るご主人。
数歩歩いたのを見てすぐに歩くのは無理と判断して背負うという。
情け無いことだが私には妻を背負って下山するのは無理そうだったが、それほど大男でもないご主人はなんなく妻を背負って不安定な登山道を下っていく。
肩の小屋まで下り、付近に止めた車に乗せて頂き無事白雲荘に到着することができた。
到着すると他の宿泊客と一緒に食事の時間となった。食卓には飛騨牛があったのを覚えている。
普段なら食いしん坊の妻は大喜びで飛びつくはずが、流石に足の痛みと周りの登山客の視線が痛いようでシュンとしていた。
白雲荘ではその後も部屋を個室にして頂いたりと色々とお気遣いを頂いて本当にありがたかった。
あの時はなんとかなるとか思ったけど、今思えばヘリでの救助レベルの遭難となるところだった。
当然のように救助していただいたご主人には感謝してもしきれないほど。
本当にこの宿を選んだことは幸運だったと思う。
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翌朝はこれではバスにも乗れないので畳平までタクシーを呼んでもらい下の駐車場までいくことに。
タクシーに乗り込むだけでも一苦労。
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宿の皆さんに手伝っていただきお見送りして頂いた。
駐車場からは高速で自宅の杉並区まで戻って近所の整形外科へ。
一緒に診察室まで行き先生の話を聞く。
予想通り妻の足は骨折していた。