【江戸川ボトルリウム物語〜プロローグ〜】
この物語は千葉県市川市の江戸川のほとりにある
とある賃貸アパートの一室から始まるのである。
静岡県東部にある自然に恵まれた田舎で生まれ育ったわたしは
幼少の頃から富士山の流水が流れる近所の川で
イモリやメダカやザリガニなどを捕まえては
家に持ち帰り飼育をしていた。
小学校に上がり3年生にもなるとクラスの飼育委員に立候補し
一台の水槽を立ち上げて維持管理をしていた記憶もある。
そんなわたしが本格的に「アクアリウム」にのめり込んでいった
大きなきっかけはとある「潮干狩り」。
休日、父と兄が地元の浜辺で定期的に行われていた潮干狩りに参加した時のことだ。
なぜだかは覚えていないがその日わたしは、母と家で留守番をしていた。
すると、夕方4時頃だろうか。
父と兄が何やら慌ただしく帰宅したのである。
「何があったのだろうか?」と幼心に思ったわたしではあったが
その時すぐに状況を判断できたのを覚えている。
父と兄は地引網に引っかかったベラがまだ息をしており
苦しそうにしていたのをみて「家で飼育」することを決め
そのベラを家に持ち帰って来たのだった。
父はすぐに自宅にあった空きの水槽を準備をし
そのベラを海水とともに入れた。
その後、兄と2人で水槽の前で
夜眠るまでベラの様子をみた。
最初こそ、弱々しく水槽の隅にいたベラも
ものの1、2時間後には我が物顔で水槽を右から左へ、左から右へと泳ぎ回っていた。
今思えば、若干のパニック状態であったのか?とも思える動きだった。
しかしながら一日たち落ち着きを取り戻し
落ち着いた泳ぎをし、餌も問題なく食べ
そのベラは晴れて我が家の
「飼い水魚」となった訳である。